長い一日③ | いつもどこかへ

長い一日③

クライマーの一人が持っていたスケッチブックの絵。黄色はたんぽぽの花を使ったそう。

clibmer's skecth

前日とは打って変わり、強い風で土埃が舞う町歩きもくたびれ宿のロビーに戻った。暖かいコーヒーを飲みながらさっき買ったノートに絵を描く。この特技だけは我ながら便利だとつくづく思う。どの国に行ってもカメラを向けるよりペンと紙の方が相手に警戒心を抱かせないし、何気なく暇つぶしに描いた物が、しばらくたって見た時に鮮やかに記憶を呼び起こしてくれる。



ロビーには同じくバスを待つ人たちが集まり、それぞれ午後のひと時をゆったりとすごしている。その中の若いクライマー風の兄ちゃんが声をかけてきた。いかにも「山から戻ってきました」の格好と、鼻水でガビガビの鼻毛。私のノートに興味を持ったようで、そばにいる2人の仲間のうち、一人が同じくスケッチブックになにやら描いているのを教えてくれた。


見せてもらうと小さな厚いスケッチブックには、鉛筆と絵の具で描かれた山や、サイケデリックな色彩の抽象画があり、かなりの枚数である。とここまではいいのだけど、なんせ彼らはスペイン語で、私はいくつかの単語とインチキ英語。持っていた会話帳を見せると、「これは何と読む?」「これは?」と人懐っこく聞いてくる。


そう、彼らに限らずアルゼンチンの人たちはとても人懐こく、気軽に話しかけてきては横で話し込む。


鼻毛くんの気に入ったのは「オレタチハ ナマケモノ」のフレーズで、ローマ字で書いて渡すととても喜んでいた。いつの間にか増えたクライマーたちは、パイを一人で5つも平らげ、バスが発車するまでの残りの時間を楽しく過ごすことができた。