仕事から帰ると、玄関先に虫かごが。
中を覗くとカブトムシのオスが1匹。
「どうしたの?」って尋ねると、義母さんがもらってきたって。
職場に飛んできたんだとか。
長女はもう中学生で虫にはさして興味も無いし、次女はちょっとカブトムシに惹かれてたけど、何だかこのまま閉じ込めておくのはかわいそうでならなかった。
たかが虫1匹なんだけどね。
それでもさ、思っちゃうんだよね。
このまま狭い虫かごの中で孤独に死んで行く様が容易に想像出来てしまうんだよね。
奥さんは虫かごのフタを空けて解き放とうとしていたんだけど、この住宅地で放っても上手く生きていける可能性は低い。
それが分かっていながら、そのまま放置する事は僕には出来なかった。
たかが虫1匹だって分かってる。
それで何がどう変わるかなんて思ってもいない。
ただ、どうせ放すなら森の中に放してやりたいって。
本来虫が居るべき場所に。
風呂入って、ご飯食べて、「ちょっと山に放してくる」って出かけた。
既に夜の9時を回ってたけど、子供たちも一緒に行くって言う。
カブトムシに惹かれてた次女はともかく、中学生の長女まで来るとは思わなかった。
真っ暗な夜道を走らせ、車で行けるなるべく雑木林っぽい所を目指す。
本当なら車では行けない様な場所の方が良かったんだけど、鈴鹿の雲母峰の様にクヌギの木が沢山有る雑木林の中に放してやりたかったんだけど、平日の夜ではこれが精一杯だった。
子供と一緒にカブトムシを放してきた。
所詮は自己満足なんだよ。
それでも、そんな行為に付き合ってくれる僕の娘達は、きっと優しく育ってくれているんだと思った。