- ICO -霧の城-/宮部 みゆき
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★★★★★
何十年かに一人生まれる、小さな角の生えた子。頭の角は、生贄であることの、まがうことなき「しるし」。十三歳のある日、角は一夜にして伸び、水牛のように姿を現す。それこそが「生贄の刻」。なぜ霧の城は、角の生えた子を求めるのか。構想三年。同名コンピュータゲームに触発されて、宮部みゆきがすべての情熱を注ぎ込んだ、渾身のエンタテインメント。
レビュー
ゲームソフトのノベライズ。
僕はこのゲームをプレイした事はないし、最近はゲームにとんと疎いんだけど、ICOはその独特な世界観で少しだけ印象に残ってる。
そのゲームを、宮部みゆきが渾身で書き上げたというのだから、ちょっと気になった。
実はゲームソフトを小説化した作品は以前も読んだ事が有る。
それも実際にゲームをプレイした訳ではなかったんだけど、実につまらなかった。
RPGっていうのは広大な世界と奥深いストーリーで構成されている様で、実は単純な一本道な場合が多い。
例えば、街の長老に尋ねると、砂漠の○○を目指せって言われる様な。
そこまで単純ではないにしろ、ストーリーを進めるには、それを望もうが望ままいが結局予め仕組まれたフラグを踏んで行くしか術が無い。事が多い。
マルチシナリオとかマルチエンディングとか言った所で結局道筋は決められていて、そこに必然性が無い。
つまり、それは主人公が生きていくうえで必要な事ではなく、ゲームをクリヤする為に必要な項目でしかないっていうこと。
だから小説にしたところで、ゲームに忠実であろうとするとすればするほど単純な展開をなぞるだけでしかなく、読まされている感でいっぱいになってしまってとても世界に入り込めない。
で、ICO。
ゲームの小説化という点では同じだし、しかもRPGよりも遥かに単純な設定でしかない。
主人公イコは生贄にされる為に謎の城に連れて行かれる。
そこで謎の少女に出会い、共に脱出を試みる。
ただそれだけの話だし、ゲームをプレイしていなくてもおおよその結末も読めてしまう。
だけど、飽きさせない。
500ページ以上というかなりのボリュームが有るにも関わらず、途中で飽きる事が無い。
単純な設定なのに、先がどうなるのか気になって仕方が無い。
何故?何故?何故?
読み進めているはずなのに、謎が深まっていく。
はじめに、イコの生い立ち。生贄にされるまで。
次に、少女と出会い、少女の生い立ち。
だけど、その回想で過去の出来事が全て明かされる訳じゃない。
脱出を試みる現在と、時折過去の回想を交えながら物語が進んでいく。
そして、明かされる真実。
よくもまあこの単純な設定をここまで膨らませられるものだって関心させられるし、小説で描かれる設定も、展開も絶妙。
有りもしないいかにも非現実的な物語なのに、つい引き込まれる。
ゲームの設定資料とは関係なく、宮部みゆきに好きに書いてもらったのが良かったのかも。
だからゲームに縛られる事なく自由に書けたのかもしれないし、だけど、そこに描かれる世界観は確かにICOを見事に表現していて、活字だけなのにイメージが湧いてくる。
これはとても面白かった。
しいて言えば、面白過ぎて別にゲームで遊ばなくても満足してしまうのが難点?
宮部みゆきは初めて読んだけど、他の作品も読んでみようかと思う。