『キタダレコード』中編
ハッキリ言って気乗りはしなかった。
それでも適当に身支度をして車に乗り込んだ。目的地はキタダレコード。
キタダは滋賀県内では珍しく古くからインディーズCDを扱ってる。バンドマンやそういうジャンルに興味のある連中がけっこう出入りするのでいつもライブ告知のポスターなんかを貼ってもらっている。のだが。
この前、2/10のワンマンのポスターを貼ってもらうために持って行った時だ。
「こんなんしたらCD屋でCD売れへんやんけ!!」
案の定怒られた。
持って行ったポスターに載っているワンマンの特典内容がマズかった。
”ライブに来たらNewアルバムをプレゼント”
このCDが売れないと言われる時代、CD屋殺しの企画を打ち立て、あろうことかそれをCD屋で貼り出して宣伝してくれと言ってるのだから無茶苦茶だ。
それでもおれは食いさがる。
「すいません!これから滋賀県盛り上げていくんでお願いします‼︎」
ワンマンに人をできるだけ呼ばなければならない。こっちも必死だ。
オヤジさんは顔をしかめながらも渋々と言った感じで承諾してくれた。
「佐々木によう言うとけ!」
この店は佐佐木の昔からの馴染みだ。
「はい、よろしくお願いします。」
頭を下げて帰ろうすると側にいたおばちゃんが「寒い中ご苦労様」と声をかけてくれた。
外に出ると確かに寒い。バイクに乗ると全身に力を入れて走り出した。
営業マンも楽じゃない。
先週の水曜日に発売になったアルバムは調子良く売れてるらしく各所での売り切れの報告がケータイのチャットでメンバー、スタッフのメッセージがやかましく飛び交っていた。
よかったよかったと思うも束の間、大阪のどのタワレコに行っても買えないと苦情が出てるとか。
アマゾンも売り切れとのこと。
それでも店側が思っていた売り上げを軽くこえたことは悪くない。
すぐにでも倍くらいの数が入荷されるのだろうと思っていた。
ところがどういうわけか追加分はなかなか入荷されないどころか再入荷の予定がないと言ってる店舗もあるらしい。
アマゾンは再入荷は一か月先と表示。
挨拶に行った滋賀県唯一のタワレコ大津店は入荷数はたったの一枚でその一枚も何処にあるのかわからないと対応した店員は曖昧な笑みを浮かべた。
滋賀発のバンドの発売したてのCDが滋賀県の何処にいっても買うことができない。
買えないという苦情は徐々に増えていく。
ディスクユニオンの通販が生きてるらしくそっちを紹介することで対応することができた。
キタダに向かう途中、FUCKIN' JUNKIESのヒロトくんに電話をかけて委託販売のノウハウを教えてもらう。(ファッキンはキタダで委託販売をしている)
一通り手順を聞いて最終的には「おっちゃんがうまいことやってくれはるわ」とのことで合意した。
おれはこの手の話にとんとうとい。
今回のことにしてもCD屋にCDがあるのは当たり前。
指先ひとつで欲しいものが家までやって来るなんて魔法のような出来事も慣れてしまえば当たり前。
なんの疑いもなくそう思っていた。
でも、表向きはどんなにスマートにデコレーションされていても蓋を開ければその裏側でたくさんの大人のやり取りが行われたくさんの人達が汗を流して働いている。
欲しいものはワープして手元にやっては来ないし店先にも並ばない。
もしこれが日本のヒットチャートを盛り上げてくれている 人前でジャンケンをして金を稼ぐアイドルグループや 一分の隙もないバチっとキメたビジュアルでダンスを踊るイケメン集団のCDだったら おれの知らない魔法で瞬時にそれぞれの場所へと飛んでいくのだろう。
だけど、俺たちは泥にまみれながらもがいている無名のインディーズバンドだ。
そんな魔法の唱え方なんて知らないし
その格差を呪ったところで何も起こらないし変わらない。
いくら指先を動かしてみても手の中のCDは飛んではいかない。
だったら答えはもう出てるよな。
自分の足で動くだけだ。
キタダには俺の家から車で20分くらいで行ける。その日は日曜で車の数が多くいつもより時間がかかっていた。
ケータイのチャットにはディスクユニオンの通販もパンクしたというメッセージが入ってきていた。
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ポンコツの頭ではうまくまとめられず思ってたよりも長くなってしまってどうやら今日も終われなさそう。
なので、三部構成に変更します!
別に劇的なフィナーレがあるわけでもないし引っ張るメリットなんてなんもないけど、時間の都合ということで申し訳ない。
明日は夜勤明けで単車の結婚式に行くから時間を取れそうもないので明後日の日曜日にサンデー担当の単車とカブってしまうけどできれば終結させたいと思います。
最後に私事ですが、
単車。結婚おめでとうございます‼︎
明日の晴れ舞台楽しみにしてるわ。