今月(2024年5月)時代劇専門チャンネル(CS)で久々に萬屋錦之介・主演のTVシリーズ「長崎犯科帳」を楽しみました。

<左から杉本美樹、田中邦衛、萬屋錦之介、火野正平>

異国長崎の奉行所に、新しい奉行がやってきた。

その名は平松忠四郎(萬屋錦之介)。

 

白日の法の下で裁くことが叶わぬものは、闇の法の下に裁く。

奉行の助っ人、オランダ外科医の良順(田中邦衛)、南蛮奇術の娘芸人・お文(杉本美樹)、遊女屋の客引き・出島の三次(火野正平)と共に、指をパチンと鳴らして悪人を容赦なく闇に葬る人呼んで闇奉行。

べらんめえ口調が冴えわたる大スター錦之介が絶妙。

個性豊かな布陣で、必殺シリーズとは一味違う痛快娯楽時代劇、実に面白い。

 

1975年(昭和50年)から日本テレビで放映されたテレビ時代劇、全26話。

第1話「すごい男がやって来た」から、その面白さの一部を紹介します。

 

ナレーターはFM東京の音楽番組「ジェットストリーム」やグレゴリー・ペックの吹替が有名な城達也

「長崎犯科帳」城達也のオープニングからスタートです。

 

ナレーション:「江戸末期の長崎は オランダ貿易に開かれた ただ一つの港である 巨大な利権と暴力の渦巻く 暗黒の街であった」

ナレーション:「この利権を操るものは 一握りの豪商たちであり 貧しい町民たちは 彼らの搾取に泣き この暴力におびえるしかなかった」

ナレーション:「ここに 白日の下に法で裁くことの叶わぬものは 闇の法の下に斬ると思い定めた 闇の裁き人たちが登場する 人 これを呼んで 闇奉行という」

オープニング・タイトルバック監督は、円谷プロのウルトラシリーズ、ATGの「無常」など、異色の作風で知られた実相寺昭雄。

歴代の長崎奉行は悪徳商人と結託、彼らが悪事で私腹を肥やすのを黙認する代わりに、賄賂を受け取っていた。

小沢栄太郎(福島六左衛門)>

六左衛門:「明日 新しい奉行が来る 平松忠四郎 僅か八百石の禄高で長崎奉行とは異例の抜擢だ 無能な奉行だという」

町年寄たち:「(笑い声)ははは・・・」

六左衛門:「笑っていられるかどうか まだ判らぬ 確かめるには 賄賂を贈ってみればよい」

六左衛門:「村田屋さん あんたこのごろ 堅気の娘を南蛮船に売って いい取引をしていなさるそうだが」 

嵯峨善兵(村田屋新兵衛)>

村田屋:「取引の道具に使うちょるだけで」

六左衛門:「しばらくは 止めた方がええ!」

 

第1話「すごい男がやって来た」(脚本・池田一朗、監督・渡邊祐介)

主人公・平松忠四郎(萬屋錦之介)が、新しい長崎奉行として着任する。

<萬屋錦之介(平松忠四郎)>

与力:「お奉行には 遠路ご苦労に 存じたてまつります」

忠四郎:「なげえ道中 くたびれちゃったよ」

与力:「・・・」

 

こちらは居酒屋「せいろむ」。

艶っぽい女将のおぎん(磯村みどり)が、お文(杉本美樹)、三次(火野正平)相手に、カード占いをしている。

<磯村みどり(おぎん)、杉本美樹(お文)、火野正平(三次)>

おぎん:「死の卦が出ちょる 縁起でもなかねぇ」

三次:「誰が・・・」

お文:「・・・」

おぎん:「誰ってことぁなか ばってん 誰かが死ぬ」

 

長崎会所頭取・福島六左衛門が町年寄り一同と、新任の長崎奉行に手土産のカステイラ(実は小判)を持って挨拶に来る。

長崎奉行・平松忠四郎と敵対する、町年寄の組織を束ねる頭取・福島六左衛門役のベテラン小沢栄太郎が巧い。

忠四郎:「六左衛門 そこの横にある包みはなんでぃ」

六左衛門:「当地名物の カステイラにございます」

忠四郎:「これがカステイラかぁ(指をパチンと鳴らして) はぁ これなら江戸にもあるよ」

六左衛門:「恐れ入ります」

忠四郎:「六左衛門 カステイラはこれだけかい」

六左衛門:「各人 一折づつ 持参しております」

忠四郎:「(指をパチンと鳴らして)えらい おれ カステイラが大好きなんでぇ」

 

オランダ外科医・良順(田中邦衛)は、悪徳医・山口道安の悪事が許せず弓で殺害した。

 

 

<杉本美樹(お文)、田中邦衛(良順)、火野正平(三次)>

お文:「大変じゃぁ 先生 捕り方が来るよ」

良順:「三次 俺の道具箱 隠してくれ」

三次:「よしや」

 

良順は医者殺しで投獄された。

 

賄賂を受け取る忠四郎にイヤな顔を見せる長崎奉行所同心・加田宇太郎(新克利)は、遊廓に御供をさせられたり凧を作らされたりするが、その真面目ゆえ、忠四郎からはウタさんと親しく呼ばれていた。

二人は医者殺しで投獄された良順(田中邦衛)の弓を検分する。

<新克利(同心・加田宇太郎)、萬屋錦之介(平松忠四郎)>

忠四郎:「良順が持っていた弓はこれかい」

宇太郎:「その弓では 小刀を飛ばすのは無理です」

 

自分と同業の悪徳医を許せず殺害し、投獄された良順(田中邦衛)

その手口を忠四郎に見破られ、殺しの腕を見込まれて手伝うはめになる。

物語の導入部、平松忠四郎と良順との出会いがテンポよく進行する。

田中邦衛(良順)、萬屋錦之介(平松忠四郎)>

忠四郎:「おめえ なぜやったんだ」

良順:「我慢ならねえんだょ 医者のくせしやがって」

忠四郎:「お前 シーボルトの弟子で 外科手術では長崎一だってな」

良順:「冗談言うねぇ 日本一でぇ 俺は」

忠四郎:「俺の言う通りしろ このままじゃお前 責め殺されちまうぞ」

忠四郎:「それが向うの狙いかもしれねえがな」

 

第1話「すごい男がやって来た」のワルは、人身売買事件の黒幕・村田屋新兵衛(嵯峨善兵)と村田屋に荷担する与力・長尾神吉(北村総一郎)。

村田屋は頭取・福島六左衛門(小沢栄太郎)の助言を聴かず、悪徳医を雇って人身売買を進める。

 

<北村総一郎(与力・長尾神吉)、嵯峨善兵(村田屋新兵衛)>

村田屋:「良順め 罪を認めたそうじゃな」

長尾:「喰えねえ野郎ですぜ 責め殺してやろうと思ったんだ こっちは」

 

出島の三次(火野正平)の調べで、人身売買事件の黒幕は村田屋新兵衛と村田屋に荷担する与力・長尾神吉と判明。

<嵯峨善兵(村田屋新兵衛)北村総一郎(長尾神吉)中村時之介(医師)>

北村総一郎演ずる長尾神吉は悪に荷担する与力役で「長崎犯科帳」(第1話)ゲスト出演時は40歳。

北村総一郎は多くの映画、テレビドラマで活躍している俳優、声優。

1997年からの刑事ドラマ「踊る大捜査線」シリーズ(フジテレビ) の神田署長役が懐かしい。

人情味があり、緊張感の無いとぼけた演技が絶品で、共演した小野武彦と斉藤暁の3人合わせて「スリーアミーゴス」。

<小野武彦、北村総一郎、斉藤暁「スリーアミーゴス」>

 

村田屋の床下に忍んだ出島の三次(火野正平)は、与力・長尾神吉(北村総一郎)に感づかれて危機一髪。

 

 

火野正平(三次)>

火野正平演ずるは丸山の客引き、出島の三次。「長崎犯科帳」中盤の回で忠四郎に命を救われて心酔した。

初めのうちは闇奉行の正体を知らない。

火野正平は「にっぽん縦断こころ旅」(NHK BSプレミアム)でお馴染みの俳優・歌手。

本名(二瓶 康一)で12歳のころから活躍している。1962年に「少年探偵団」(フジテレビ)でデビュー。

 

ラストは萬屋錦之介、田中邦衛、杉本美樹、火野正平の4人が、長崎の闇にダイナミックに悪を討つ。

<萬屋錦之介(平松忠四郎)>

忠四郎:「誰にやられたか判らなきゃ 地獄へ行って迷うだろう」

(指をパチンと鳴らして覆面を引き下ろす)

村田屋:「あっ お お奉行!」

 

大スター“萬屋錦之介(中村錦之助)”は内田吐夢監督の映画「宮本武蔵」(5部作)が好きです。

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★過去の投稿<「宮本武蔵 巌流島の決斗」>

ご訪問ください。

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田中邦衛(木暮良順)>

田中邦衛演ずるオランダ外科医の良順。

腕も確かでシーボルトの門下であるという。

同業である医者の悪事を許しておけず殺害したが、その手口を忠四郎に見破られ、忠四郎を手伝うはめになった。

田中邦衛を知ったのは1965年の「若者たち」(フジテレビ)で、森川時久監督により映画化もされ、毎日映画コンクール男優主演賞を受賞している。

映画「若大将シリーズ」やテレビドラマ「北の国から」で国民的俳優となった。

 

杉本美樹(お文)>

杉本美樹演ずるお文は、造花の花束を短剣に変える手品を敵に見せ、その剣で急所を刺す。

杉本美樹はモデルから東映にスカウトされ「温泉みみず芸者」(1971年)で池玲子と共に映画デビュー。スケバン、ポルノからコメディまで、女優魂と幅広い役柄で東映の看板女優として貢献した。「祭りの準備」「黒木太郎の愛と冒険」などのATG映画にも出演している。1973年に新鮮かつ優秀な演技でエランドール賞新人賞を受賞した。1978年に結婚後、芸能界を引退している魅力的な女優、ファンでした。

 

殺陣は東映京都撮影所で殺陣師と俳優業で活躍した尾型形伸之介

<尾型形伸之介「長崎犯科帳」での殺陣師>

 

お文:「ばってん 良順先生や三次さんが助けてくれんかったら あんたらも異人さんの慰み者になって ボロくずのように なっとったとよ」

 

<小沢栄太郎(福島六左衛門)>

六左衛門:「村田屋新兵衛が死んだ 非業の死だ あれは わしらの仲間だった」

六左衛門:「何としても下手人を突き止めねばならぬ わしらの威信と安全がかかっている いいな」

町年寄たち:「はい」

メインライター(脚本)は第1話「すごい男がやって来た」と最終第26話「さよなら長崎 また来るぜを」含め全26話中9話を執筆した池田一朗

第1、25、26話監督の渡邊祐介は新東宝出身で、以前私がアメブロ投稿した星輝美主演の「少女妻・恐るべき十六才」(1960年)で監督デビューしている。東映「二匹の牝犬」など緑魔子主演の"悪女"シリーズや、松竹でザ・ドリフターズの"全員集合!!"シリーズをヒットさせた。

「長崎犯科帳」の監督は、ほかに森崎東(第6、23、24話)、小沢啓一(第7話)、田中徳三(第9,10話)、丸山誠治(第11,21話)、内出好吉(第12,13話)などのベテランが演出にあたっている。

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★過去の投稿<“星輝美”・新東宝女優の魅力>

ご訪問ください。

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1976年に第十二回萬屋錦之介特別公演として歌舞伎座にて「長崎犯科帳 オランダ坂の決闘」が上演されています。

長崎奉行平松忠四郎 に 萬屋錦之介、良順に尾型伸之介(TV版の殺陣師)。

 

萬屋錦之助主演のTVシリーズ「長崎犯科帳」は、「子連れ狼」「破れ傘刀舟 悪人狩り」とは一味違ったハードで少しコミカルなヒーローで面白い。

従来の時代劇では見られない、カステイラ、オランダ凧、コーヒー、タロットカード、チェスなど、異国情緒・長崎ならではの道具や、長崎弁が登場する。

長崎郷土史家の森永種夫が資料提供者としてクレジットされている。

DVD化されています。全26話を本編でお楽しみください。お薦めです。

 

文中、敬称略としました。ご容赦ください。

【追記】

★「長崎犯科帳」再放送情報

「長崎犯科帳」が時代劇専門チャンネル(CS)で第1話から再放送されます。

放送予定は2024年7月23日(火)7:00から毎日(土日除く)。

スカパー!を契約していれば、「時代劇専門チャンネル」が月額770円(税込)で楽しめます。

時代劇三昧、如何でしょうか。

アメブロ「東映バカ」さんからの「長崎犯科帳」再放送情報でした。