「ナショナルキッド」当時、夢中で観ていました。

知る人も少なくなったでしょうね、東映初の本格SF特撮テレビ映画です。

<本編はモノクロ映像です>

ナショナルキッドは記録によると昭和35年8月4日から昭和36年4月27日まで日本教育テレビ(NET)で放送されています。

現在のテレビ朝日(首都圏)です。

 

ナショナルキッドは原版が存在しており、東映チャンネルで全話放送、DVDも発売されています。

第1部「インカ族の来襲」(全13回)

第2部「海底魔王ネルコン」(全9話)

第3部「地底魔城」(全8話)

第4部「謎の宇宙少年」(全9話)

の全4部作(39話)。

 

今回は<第1部>「インカ族の来襲」をご紹介します。

投稿の内容はほんの一部です。

機会がありましたら是非本編をご覧ください。結構楽しめます。

【オープニング】

ナレーション:

「四次元の世界を克服し 不可能を可能ならしめ あらゆる科学兵器より強く 正義と平和のために斗う ナショナルキッド

「ナショナル」こと松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)が、子供たちに科学に対する興味を持たせたいとの方針で、破格の予算を投じた単独スポンサーでした。

オープニング映像では、ナショナルの電飾広告塔をバックに空を飛ぶナショナルキッドの姿が使われ、タイトルロゴも当時のナショナルロゴと同じ書体でした。

第1部「インカ族の来襲」

地球に総攻撃をかける宇宙人・インカ族と、これに立ち向かうナショナルキッドの活躍。

特殊撮影を駆使して描くスケールの大きな物語です。

【サブタイトル(全13回)】

    第一回 謎の円盤耒襲

    第二回 ダブルZの恐怖

    第三回 大都会の戦慄

    第四回 恐怖の頭脳改造

    第五回 アヴィカの復讐

    第六回 危うしナショナルキッド

    第七回 ウラトン石の怪火

    第八回 スカウの恐るべき来襲

    第九回 一日だけの休日

    第十回 ペタルニヤSを探がせ

    第十一回 火焔銃α

    第十二回 円盤総攻撃

    第十三回 宇宙大戦争

【原作・脚本】

貴瀬川実(原作)と谷井敬(脚本)は、新東宝で活躍した大貫正義のペンネームで同一人物。特撮監督は新東宝で助監督をしていた小池淳

【特撮スタッフ】

下記の画像が特撮スタッフのメンバーです。

特撮監督は新東宝から東映に移籍した小池淳。ナショナルキッドが東映で最初の仕事です。第1部は特撮監督でしたが、第2部(海底魔王ネルコン)以降は本編監督も務めました。

特殊美術の成田亨(なりたとおる)は、昭和41年~42年「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の怪獣デザインで有名、「マイティジャック」(昭和43年)のメカデザインも手がけています。

 

【出演者】

【小嶋一郎】

主人公・旗竜作(小嶋一郎)は世界的権威の科学者の孫で、旗竜作研究所長。

ピンチになると遊星人「ナショナルキッド」に変身する空飛ぶスーパーヒーロー。

旗竜作役の小嶋一郎は昭和33年の東映ニューフェイスの第5期で、同期に梅宮辰夫、八代万智子、滝川潤などがいます。ナショナルキッド主演のほか、長寿TVドラマ「特別機動捜査隊」に村上刑事役で準レギュラー出演、東映の名物シリーズ「警視庁物語」に4回出演、うち1回は犯人役でした。

<小嶋一郎(旗竜作=ナショナルキッド)>

 

【志村妙子】

小畑尚子(志村妙子=太地喜和子)は旗竜作研究所の助手で愛称は「チャコ」。小畑尚子役の志村妙子は昭和34年の東映ニューフェイスの第6期で、同期に千葉真一、亀石征一郎、新井茂子などがいます。「ナショナルキッド」出演時は高校生でした。セリフや演技が上手く、さすが後の大女優です。昭和38年に東映を離れ、本名の太地喜和子で活躍。「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」ではキネマ旬報ベストテン2位で助演女優賞を、報知映画賞でも助演女優賞を受賞しています。昭和35年の「新・七色仮面 毒蜘蛛に手を出すな」(千葉真一主演)では太地喜和子の名で出演しているので使い分けていたのでしょう。平成4年に自動車事故により死去、48歳没。

<志村妙子=太地喜和子(小畑尚子)>

【野川美子】野川美子はインカ金星人隊長アウラ役。

【片山滉】片山滉はインカ金星人幹部のヴィマナ役。

【斎藤紫香】斎藤紫香は様々な発明でキッドを救う老化学者・水野博士役。

 

【少年探偵グループ】

少年探偵グループは旗竜作研究所で暮らしている戦災孤児で、子供ながらに事件に関わっていく。福島卓(小畑尚子の弟・幸男)、木村英世(武部友宏)岡田みどり(山口京子)、清水徹(大谷蔵三)・原一夫(吾郎)兄弟の5人。

子役時代の本間千代子も出演しています。

 

【監督】

「ナショナルキッド(第1部)」の監督は赤坂長義

昭和34年に新東宝で「続スーパー・ジャイアンツ悪魔の化身」「続スーパー・ジャイアンツ毒蛾王国」の2本を監督した経験が買われ招聘されました。

 

【助監督】

助監督は関川秀雄に師事した永野靖忠で、昭和38年にテレビ「特別機動捜査隊」(第80話・帰らざる海)で監督デビュー。「特別機動捜査隊」をはじめ「鉄道公安36号」「七つの顔の男」「非情のライセンス」など懐かしい東映のテレビ映画で手腕を振るいました。

 

【ストーリー・特撮】

日本の上空に突然現れた空飛ぶ円盤。それこそ原子力実験反対を口実に、地球征服を企てるインカ金星人の地球攻撃の前触れであった。

地球攻撃の円盤は、怪光線でジェット機も破壊する。

円盤と国会議事堂とを合成した特撮シーン。

地球に来襲するインカ金星人の大型宇宙船・スカウは宇宙空間に浮遊し、数機の小型円盤が地球へ向かう。

<インカ金星人の大型宇宙船・スカウ>

宇宙船と円盤は、特撮美術の成田亨デザインによるものであろう。

SFの雰囲気満点だ。

インカ金星人によって、次々と怪事件が起こった。

<小嶋一郎(旗竜作)、志村妙子(小畑尚子)>

旗竜作:「水野博士 インカ金星人の攻撃が始まっています 異常ありませんか」

 

斎藤紫香水野博士)>

水野博士:「ありがとう それより国際原子力研究所の山田博士が心配だね」

旗竜作:「わかりました 山田博士に連絡をとります」

【斎藤紫香】

水野博士(斎藤紫香)は様々な発明でキッドを救う老化学者。

斎藤紫香は博士や科学者役などが記憶にある俳優、温厚で知られたそうです。

無声活動大写真からの人で、戦後は大映から東映に移籍、映画・テレビ番組も併せ135本の作品に出演、昭和37年の「南太平洋波高し」(渡辺邦男監督)を最後に引退しています。

 

【ナショナルキッド初登場シーン】

旗竜作研究所を覗く怪しい人物の後をつける少年探偵グループの4人が、金星人に捕まります。

<清水徹(蔵三)、岡田みどり(京子)、木村英世(友宏)、福島卓(幸男)>

特撮監督の小池淳によると、インカ金星人のコスチュームは、歯磨きCMによくある虫歯菌のイメージだったそうです。

金星人:「私の後を つけてきたな」

幸男:「僕たち ここに遊びに来ただけだ」

子供たちの帰りが遅いのを心配した旗竜作は、吾郎(原一夫)と様子を見に行きます。

子供たちの危機を察知したナショナルキッドが登場。

キッドの飛行シーンなどで、当時としては高度な特撮技術が使われており「スーパー・ジャイアンツ」(新東宝)より精度が向上している。

キッド:「子供たちをどうする?」

金星人:「貴様は誰だ!」

キッド:「正義と平和の騎士 ナショナルキッド

子供たち:「ナショナルキッドだ!」

インカ金星人は八名信夫などが演じています。

擬斗は俳優でも活躍する東映現代劇の擬斗師、日尾孝司

金星人はキッドに敵わず退散します。

キッド:「このマジックラジオを 君たちに渡しておこう」

キッド:「ダイヤルを合わせれば 必ず助けにきてあげるよ」

幸男:「ありがとう」

ナショナルキッドが少年たちにプレゼントした「マジックラジオ」。

これを操作するとキッドが大空から現れる。

 

国際原子力研究所の山田博士(山口勇)の娘・つね子役で子役時代の本間千代子が登場。

山田博士は、つね子(本間千代子)の眼前で、インカ金星人に拉致されてしまう。

<本間千代子(山田博士の娘)>

つね子:「お出かけ パパ」

山田博士:「ああ 水野博士の所ヘな」

マスクをかけた運転手を不審に思うつね子。

父、山田博士を乗せた自動車が眼前で忽然と消えてしまう。

<阿久津克子(水野博士の娘)と本間千代子(山田博士の娘)>

【本間千代子】

本間千代子は1960年代、日活の吉永小百合と人気を二分した東映のアイドル女優で、吉永よりブロマイドの売れ行きが良かったそうです。

<本間千代子>

【過去の投稿】

<「夢のハワイで盆踊り」舟木一夫×本間千代子を語る>で本間千代子の記事を投稿しました。ご訪問ください。

 

河合絃司(高倉警部)

高倉警部:「白マスクの男は 君が取り次いだのかね」

職員:「はい 水野博士の使いだと言って」

【河合絃司】

山田博士誘拐事件の捜査をする高倉警部(河合絃司)は、旗竜作(小嶋一郎)に全幅の信頼を置いている。

河合絃司は、今井正監督「真昼の暗黒」(昭和31年)に映画初出演し、翌年東映東京撮影所の専属となっている。刑事役の印象が強い。脇役として「飢餓海峡」「網走番外地シリーズ」など220本の映画に出演。テレビも「ジャイアントロボ」「Gメン'75」など多数出演。「ナショナルキッド」のナレーターも務めている。

<小嶋一郎、斎藤紫香、河合絃司、岩上瑛>

旗竜作:「高倉さん 大変なことになりましたね」

高倉警部:「山田博士は なぜインカ金星人に狙われたんだろうな」

特別機動捜査隊でお馴染みだった岩上瑛も刑事役で出演。

同じく、橘部長刑事役の南川直も空港の航空司令役で出演していました。

 

こちらはインカ金星人の宇宙艇内

アヴィカという神を信仰し、宇宙からやって来たインカ金星人隊長アウラ(野川美子)と幹部のヴィマナ(片山滉)、カビア(久保一)

この時代、女性の首領は革新的でした。

<野川美子(インカ金星人女隊長アウラ)>

 

<片山滉(ヴィマナ)、久保一(カビア)>

【片山滉】

片山滉は東映の「警視庁物語」シリーズに鑑識職員役で15回出演した常連。

「ナショナルキッド」には不気味な悪役で全4部に違う役で出演した。

潮健児の自伝「星を喰った男」によると、片山は女子高校の先生もやっていた知識人で本当のインテリ役者だったそうです。昭和53年に自動車事故で、惜しくも急逝されました。

<片山滉(「警視庁物語」シリーズより)>

 

潮健二(潮健児)が平和を愛する火星人役で登場。

インカ金星人の火焔銃αに苦戦するキッドを、平和を愛する火星人・ドン・アトリシム(潮健二)が助ける。

<潮健二(潮健児)>

ドン:「あなたに宇宙人の弱点を教えよう」

キッド:「どういうことですか?」

ドン:「宇宙人は地球上の細菌のために 48時間空気に触れると死滅します」

火星の平和特使、ドン・アトリシムの衣装は七色仮面のものを流用していた。

<「七色仮面」より>

潮健二潮健児)】

潮健児は出演数百本を軽く超える東映の個性的な名脇役で、「七色仮面」さそりの万吉役、「仮面ライダー」地獄大使役が懐かしい。

今井正監督とは「ひめゆりの塔」からの付き合いだそうで、今井監督「純愛物語」のラストシーン、恋人(中原ひとみ)の最期を看取った主人公(江原真二郎)が通行人(潮健児)に突き当たる、その時の顔が欲しいと今井正監督に頼まれたエピソードや、東映の警視庁物語シリーズには第1話から10回出演し「警視庁物語 顔のない女」(犯人役)は自分の代表作と自伝「星を喰った男」に書いています。

千葉真一が結成したプロバンド「千葉真一ザ・サタンズ」ではドラマーだったことも有名。バンド名は潮健児がTV映画「悪魔くん」に出演していることから、千葉自身がザ・サタンズと命名している。同じ東映の安藤三男は従兄弟。

ナショナルキッドでのタイトルでは潮健二となっていた。自伝「星を喰った男」の出版記念パーティーの会場にて車椅子姿で出席したのが最後の活動となった。平成5年・68歳没。

<潮健児「警視庁物語 顔のない女」より>

 

<千葉真一とザ・サタンズ>

 

地球に迫り来るインカ金星人の円盤総攻撃に、人類は、ナショナルキッドは、如何に戦うのか!

ワンカットで宙に浮き、地を駆けるように空中を飛ぶインカ金星人とキッドの飛行シーンをからめ、空中戦が展開する。

 

ナショナルキッドの武器はエロルヤ光線銃。

エロルヤ光線銃がナショナルの懐中電灯と同じ形であるなど、かなり徹底したスポンサーとのタイアップ。

空に浮かぶインカ金星人の円盤と地上の建物の合成は、リアル感最高。

ナショナルキッド、大団円は是非、本編でご覧ください。

 

【オフショット・スナップ】

<キッド、チャコ(尚子)ちゃん、少年達が全員集合>

 

<こちらは珍しい第1部のメインキャスト集合写真>

 

【「ナショナルキッド」主題歌】

作詞:大貫正義 作曲:佐野雅美

合唱:ビクター児童合唱団

🎵雲か嵐か稲妻か

平和を愛する人のため

両手(もろて)を高く さしのべて

宇宙にはばたく快男児

オー その名はキッド 

エイ ナショナルキッド

僕らのキッド (キッド)

ナショナルキッド

 

日本教育テレビ(NET)は昭和34年2月1日放送スタート、民放初の教育テレビ局として教育番組だけでなく、「ローハイド」(最高視聴率43.4%)、「ララミー牧場」(最高視聴率43.7%)などの外国ドラマも放送していました。

 

次回は第2部「海底魔王ネルコン」(全9話)を投稿します。

文中、敬称略としました。ご容赦ください。

 

 

 
 
 
 

 

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