タカシが店に来て、俺の隣で大花火を打ち始めてから数分後。
「あら?新年早々、出玉勝負なの?」
声をかけて来たのは美樹、例の「元ミス」の彼女だ。
馴れ合う感じで打つ事はなかったものの、毎日同じ店で凌いでいる者同士。
多少の会話はするようにはなっていた。
だが、美樹の方から声がかかる事は珍しい。
ふと見ると、いつもはラフな格好が多い美樹が、薄紅色の花をあしらった着物姿だった。
「へぇ・・・『馬子にも衣装』って感じだねぇ」
と俺がけしかけ、横でタカシも同意すると
「失礼ねぇ~。こう見えても一応、モデルもコンパニオンもお仕事にしてるんですけど?」
と美樹が言う。
なるほど。
元ミスって肩書きは伊達じゃないんだなぁ。
などと思っていると、いかにも動きにくそうな和装姿の美樹がタカシとは反対側の俺の隣に座ってきた。
「・・・って、お前その格好で打つつもりかよ?」
「悪い??」
「だって打ちにくいだろうし、その着物も結構高そうだし・・・汚れたらどうすんだよ?」
「あぁ・・・だってこれ、スポンサーが出してくれた借り物だから、別にどうでもいいのよ」
そう言うと美樹はさっさとコインサンドからコインを拾い、着物の袖をゴムバンドで留め、ホントにレバーを叩き始めた。
普段はラフな姿が多い美樹が和装で打ってる、と言う話は、あっという間に広がったらしい。
ものの1時間も待たずに、店内には結構な数の常連がやって来た。
さすがは元ミス。
ものすごい集客力だ(苦笑)
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そうこうしている内に、俺の台で予告音が鳴った。
左下段長男停止で、鉢巻逆回転「青ドン」。
狙ってみると・・・
(※1)
「正月ボケで目押しミスってなければいいわね」
隣で美樹が独り言の様に言った。
「この出目なら、多少目押しが曖昧な方がアツいだろ」
と言い返してみたものの、これで大文字こぼしなら新年早々、格好悪いなぁ・・・
内心、やや緊張しつつ、新年に相応しい出目が見たかった俺は、迷わず七を枠上にビタ押した。
(※2)
乱れ飛ぶフラッシュが描き出すしだれ柳V、そして告知点灯。
「ありゃあ・・・新年一発目にしては、随分レアなトコ出しましたね~」
とタカシが言う。(※3)
確かに・・・年明け一発目としては申し分ない出目だ。
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俺がそのBIGを消化中に、タカシに予告音が鳴る。
鉢巻が回ったまま、出た出目は・・・
(※4)
「お~?これまた見事な2確目でw」
「でも、新年一発目にしては弱っちい出目っすねw」(※5)
しかし、これがBIGで、形として美樹が一人取り残される形となった。
見ると、美樹はいかにも不機嫌そうな顔になっていた。
「そんな顔して打ってたら、台が怖がって出るものも出ね~よw」
軽く茶化すと
「うっさい!」
と美樹がレバーを叩いたと同時に、予告音が鳴る。
左を叩きつけるように押して出たのは、単独七上段。(※6)
しかし鉢巻は動かない。
「チェリーだったら残念賞のパターンだけどな・・・」
「どうですかねぇ?」
俺とタカシが横からからかい気味に話すと
「いいから黙って見てて!」
と、意を決したように美樹が中リールを押す。
(※7)
「・・・どう?」
得意げに美樹がこちらを見てニコリと笑った。
・・・この2確目の勝負は、どう見ても美樹の勝ちだろう(苦笑)
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その後は、まさに「まったりと」した時間だけが過ぎていった。
特に大きなハマリにも遭遇せず、かと言って3人とも誰が抜け出るでもなく・・・
そんな中、美樹にリーチ目が入る。
(※8)
「お?入ったじゃん」
と俺が言うと
「うん・・・そうなんだけど・・・」
と、あまりテンションの上がらない美樹。
そしてそのまま右リールの枠上を覗き込んだ。
「花火じゃないんだから、枠上確認しても仕方ないだろ?」
と俺が話しかけると、少し考え込んだ後、美樹が
「うん・・・でもね、これ・・・右ビタ止まりなんだよ」
はぁ?なんだ?それ?
俺とタカシが顔を見合わせて、不思議そうに聞いているのに気付いた美樹が話を続けた。
「実はね、前々からこの出目が好きで、狙って出してたりしてたんだけど・・・」
「でも、形としては共通目だし、しかもかなりREGよりの出目だろ?」
「うん・・・でも、この形からBIGが出る時って、右はスベって止まる事が多かったからさ」
これは意外・・・と言うより、かなり驚いた。
普通に打ってても相当に打ち慣れた感がある美樹だが、出目にそこまでこだわっていたとは。
「それ・・・間違いないのか?『多分・・・』とかじゃないのか?」
「うん・・・この出目に関しては、怪しい演出のときは毎回狙った事もあったから」
「そうか・・・」
俺とタカシは顔を見合わせ、どちらともなく頷くと、互いの台を打ち始めた。
「お前のモヤモヤ、今日で解消してやるよ」
えっ?と言いたげな顔でこちらを見る美樹に、タカシが続ける。
「ここんトコ、出目追って真剣に打つ事なくなってたしね」
「そうそう・・・それに今年の秋にはもう、コイツは打てなくなるんだ。その前に、出目ひとつにこだわって打つのも悪くないだろ?」
「でも・・・」
と、戸惑うように美樹が言う。
「いいよ。どうやら3人とも低設定ではなさそうだし、かと言って真剣にブン回せる設定でもなさそうだし(苦笑)。だったら、3人いれば出目のサンプルは結構集まるだろ?」
俺が言うと、ようやく美樹が自分の台に向き直った。
「お礼はしないわよ」
「・・・はなっから期待してね~よw」
さて・・・久しぶりに目押しするか。
改めて気合を入れなおした俺とタカシ。
しかし・・・
この思い付きの出目追求により、大花火と言う台の奥深さを改めて思い知らされる事になろうとは、この時はまだ3人とも気付いてはいなかった。
(続く)
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【今日のおさらい】
(※1)条件付2リール確定目
予告音ありで、ハズレを否定した時、かつ左リールがビタ停止であれば問答無用の2リール確定目で、実戦上ビタ停止が間違いなければ「ほぼBIG確定目」となります。左に1コマ以上のスベリがあれば、当然大文字こぼしもありますが、逆にスベリがあっての大文字否定ならREG濃厚になったり・・・本文中で「多少目押しが曖昧な方がアツい」と書いたのは、そんな理由もあります(笑)
(※2)中段「リプレイ・リプレイ・三尺玉」(「リリサ」)
左下段長男から出るリーチ目の中では、もっとも「出にくい」リール選択率を誇る美麗目で、花火の鉄板法則「中段リプレイ・リプレイ・氷」からの派生・継承出目。中リールは「バチェバ」を早めに狙うと、大文字こぼしのガセ出目を嫌う制御で比較的出易いのですが、しかし・・・やっぱり中リールはココを狙って止めたいところ。リール制御に蹴られて七が中段、または枠下に消える事も多々ありますが、ココで止まってくれた時の感動に比べたら屁みたいなモンです(笑)
(※3)どのへんがレア?
まぁ・・・上で書いちゃったからネタバレですが(笑)ホント、狙ってこの出目出すのって結構「運が」必要だったんですよ。特にハサミ打ちでは、既にドンちゃんが対角でテンパイしているので、ボーナス直線形のリーチ目の方が出しやすいのか、七を中段に引き込む制御が格段に強くなりましたからね。
(※4)枠上ドンのあれこれ①
既に何度か紹介している、大花火ではもっとも有名な2リール確定目のひとつ「右リール枠上ドン」です。本文中では、レバーON回りっぱで出ていますが、ナゼかこの演出と絡むと相当に強い出目だった印象があります(笑)まぁ、元々鉢巻回りっぱがややBIG成立G時での選択率が高かっただけなんですけどねぇ。個人的な感想ですが、スベリの有無に関係なく、比較的演出のBR期待度に比例したアツさの出目、って感じです。なので予告音→第二停止鉢巻動かずでハサミ2確なら、先に下皿のコイン片付けちゃってもOKな感じだった記憶がありますよ(笑)
(※5)枠上ドンのあれこれ②
だから、逆に言うと「どっちも半々」的な演出の時は、本当にREGに偏った出目でした。例外なく比較的期待出来たのはサイレントで出た時くらいでしょうか?七枠上とかのズレ目とは、根本的に出目の強さが違っている事からも、このポイントがリール制御上で特例的に考えられている事がわかると思います。とはいえ・・・出ると嬉しい出目ではありましたけどね(笑)
(※6)単独七上段停止
出目としてはチェリーを完全にこぼすポイントで、スベリを伴って出現した場合、演出でハズレを否定した瞬間にチェリーだった可能性がかなり高くなったポイントです。なので、当時は俺もタカシも美樹もココはほとんど狙った事はなかったんですけど・・・この時は、まずココを狙って押してた事に驚きましたね。頭に血が上った美人がやる事は理解不能です(笑)
(※7)上段七テンパイ「大花火版青テン」
4号機屈指の名機「クランキーコンドル」で一躍アルゼ系スロットのリーチ目の代表格となった「上段青7テンパイ」、略して「青テン」。大花火においてもその法則は鉄板中の鉄板、しかも成立Gで出ればほぼBIG確定のおまけまで付く、超強性のリーチ目です。当時「好きな7絵柄アンケート」などをやると必ず上位に名を連ねていた大花火の青七によるこの上段テンパイは、一度出すと病み付きになるくらいに美しい出目でした。ちなみに成立後なら割と簡単に出ますが、ありがたみは半減って感じでしょうか?(苦笑)
(※8)大文字小V字(中リール「リプレイ・大文字・リプレイ」版)
中リールの下段に七停止でも鉄板になる、言わば大花火での「純粋な緑絵柄ハズレ目」と言えるかな?ただし、中リールがこの形だと、実戦上は右リールがズレ目にならないと相当に弱い共通目になりました。サイレントでも出る出目でしたが、個人的にはほとんどBIGを引いた覚えがありません。まぁ、この後3人揃ってこの出目を追っていく訳ですが・・・この続きは次回で(笑)