夏鈴side
ひ「あれ?夏鈴が楽屋にいるなんて珍しいね!笑」
夏「うん。次の雑誌の打ち合わせまであんま時間なくて、空き部屋で編み物する暇もないから。」
ひ「そかそか。無理しちゃだめだよ?」
夏「うん。ありがと。4期ちゃんが入ったシングルのセンターだから、頑張らないと。」
ひ「にしても、今日も楽屋は賑やかだねぇ!私も行ってこよーっと!」
ありがたいことに14枚目のセンターを任された。
私も、きっと私のファンのみなさんもセンターになるなんて、思ってもなかったと思う。
けど、2回目の表題曲センター。
前とは違った気持ちで頑張れそう。
…なのに。
天「…ん、…んちゃん!夏鈴ちゃんってば!」
夏「…ぁ。天ちゃん。どした?」
天「さっきから、マネージャーさんが呼んでるよ!」
夏「あ、行かなきゃ、」
全く気付いていなかった。
ぼーっとしてたらダメだなぁ。
早く行かないとと思い、席を立ち、ドアの方へ行こうとすると、ガシッと天ちゃんに手首を掴まれる。
天「夏鈴ちゃん?大丈夫?」
夏「ん?大丈夫って?」
天「なんか、疲れてそう…」
夏「あぁ、ちょっとね。あとでぎゅってさせて。」
天「かわいいー!夏鈴ちゃん大好きっ!もちろんだよ!でも夏鈴ちゃん、約束して?無理はしない。しんどくなったらすぐ天ちゃんに言うこと。分かった?」
夏「ん。分かった。行ってくるね。」
そう言って取材を受けに行った。
午後からはレッスンとアニバーサリーライブのリハだった。
今日はイヤモニとヘッドセットも着けてみる。踊る時に落ちないかの確認をするためだ。
万が一合わなかったら本格的なリハまでにサイズを調整してくれるらしい。
夏「…」
天「ん?どした?サイズ合わない?」
夏「…なんか、サイズはいいんやけど、音があんま入って来ん。」
天「え?機械の不調かなぁ?貸して?」
休憩に入り、リハ中に感じた違和感の正体を考えていたら、天ちゃんが声をかけてくれた。
天「んー、今音出してもらってるけど、普通やない?このままつけてみ?」
夏「…んー。聞こえんことは無いんやけど、なんか膜が張った感じで聞こえづらい。」
玲「それ、大丈夫かな。」
天「ぞの?どういうこと?」
玲「いや、前にアーティストの人達、イヤモニとかのつけすぎで聴力が落ちちゃう、みたいな話を聞いたことがあったからさ。最近、夏鈴ちゃん働き詰めて疲れも溜まってるだろうし…病院行ってみるのもありかもよ?」
夏「えー…。」
天「確かに。何も無かったらそれでいいんだから!ね?行ってみよ?」
夏「…わかった。」
大園ちゃんに言われてドキッとした。
そう。実は最近、日常生活でも聞こえにくいなぁと思うことが増えた。
この前も一緒に住んでる天ちゃんに、「テレビの音、デカない!?」って笑われた。
今朝だって、マネージャーさんの声が聞こえなくて、呼ばれたことに気づけなかった。
今、大事な時だから、心配かけたくもないし、頑張らないとと思って自分の違和感に蓋をしていたけど、
大事な時だからこそ、行くべきかもしれないと、大園ちゃんのお陰で思えた。
今日の仕事は夕方までだった。
だから、天ちゃんと病院へ行くことにした。
天ちゃんは車の免許を取っていた。
だから車を運転して、病院へ連れていってくれた。
天「夏鈴ちゃん、ひとりで行ける?」
夏「ふふっ。行けるよ。大丈夫。」
天「天ちゃん、ここで待ってるな。困ったらいつでも言ってよ?」
夏「大丈夫。はじめてのおつかいじゃないんだから笑」
そう言ってひとりで病院へと足を進めた。
天side
天「遅いなぁ…」
夏鈴ちゃんが病院へ入って行ってから随分経つ。
あんまり病院が好きでない夏鈴ちゃんが、頑張って病院に行ったから、今夜は夏鈴ちゃんの好きなもの作ってあげようと思って、色々レシピを考えて、買う食材のメモも作って、明日のスケジュールを確認して、インスタに載せる写真も探して…って色々終わらしたのに帰ってこない。
天「まぁ、混んでるんかもしらんしな。」
そう思ってイヤホンをつけてレッスン動画を見始めた。
それかれしばらく経った頃、ガチャっと車のドアが開き、助手席に夏鈴ちゃんが座ってきた。
やっと戻ってきた、疲れただろうからぎゅってしてあげよう。
そう思い、イヤホンを外し夏鈴ちゃんの方を見た。
天「…夏鈴ちゃん?」
隣に座った夏鈴ちゃんは俯いていた。
天「夏鈴…?どした?」
夏「んーん。疲れただけだよ。」
天「病院の先生なんて?」
夏「んーと。なんだっけ。笑とりあえず疲れと耳の使いすぎでしょうって。」
天「...そっか。病院嫌いなのによく頑張ったねぇ!そんな頑張った夏鈴ちゃんにはご褒美!今日の夜、夏鈴ちゃんの好きな物たーくさん作ってあげるね!」
夏「やったっ。」
天「じゃ、出発しまーす!」
夏「...ねぇ、天ちゃん?」
天「ん?」
夏「んーん!何でもない!天ちゃん大好きだよ。」
天「天ちゃんも夏鈴ちゃんのこと大好きだよっ!」
車に乗ってきた時。暗い雰囲気だった。
金髪の綺麗に毛先が整えられた髪が表情を隠していたけど、もう一心同体の私には分かる。
さっきも、夏鈴ちゃんが何が言いかけたし、言いたいことがあるのはわかった。
だけど、もうこれ以上は聞かないでくれと言わんばかりの目をしていて。
いくら私でも、それ以上踏み込むことは出来なかった。