最近できたと噂のBARがある。

小さいお店だけど、雰囲気がよくて、カクテルが美味しい。

そして何よりも…


麗「ねぇ!ほのちゃん!最近できたBAR行かない?」


とびっきりの笑顔でそう言ってきたのは同僚の麗奈ちゃん。


保「BARって、最近駅の裏の通りにできたって言う?」

麗「そう!そこ!なんかさ、店員さんがすっごくステキなんだって!れな、気になっちゃって!」

保「ええけど、れなちゃん、お酒そんなに強くないやろ?」

麗「そうだけど…きっとそのステキな店員さんに相談すれば、大丈夫な気がするの!」


こんなにキラキラした目で言われたら断れる訳もなく、今日は華金ということもあり、仕事終わりに立ち寄ってみることになった。







カランカラン

?「いらっしゃいませ。」

麗「あの…こういうお店初めてで…」

?「あら。それは勇気を出して来てくれてありがとうございます。ここのバーテンをしてます、大園玲です。何でもお教えしますので、お気軽にお声掛けくださいね。」

麗「ありがとうございます!」

玲「では、こちらのカウンターにどうぞ。」

麗「ステキな店員さんだね!噂通り!」

保「まだ案内されただけやん笑」



それから、玲さんにオススメされるカクテルを頂いたり、カクテルには花言葉同様、カクテル言葉があることなどを教えて頂いたりと、噂通りステキな店員さんがいるBARだった。


麗「れな、このお店とても気に入りました!」

玲「それはありがとうございます。私も、こんなにステキな女性おふたりに、色々なことをお伝えできて幸せでした。また来てくださいね。お待ちしております。」






そんなことをさらっとかっこよく言われてしまったら、れなちゃんはハマってしまったようで。

麗「ほのちゃん!今日も行こう!玲ちゃんに会いに!」

なんて、毎週末通うようになってしまった。

まあ、私もお店の雰囲気は好きだし、お酒も好きだしいいんやけど。


麗「玲ちゃん聞いてよ〜今日さ〜」

玲「それは大変だったねぇ。れなちゃんよく頑張ったね。よしよし。」

通う間にいつの間にか玲ちゃん、麗奈ちゃん呼びにもなっていて。

このバーテンの玲さんは視野が広くて気遣いもできる人なので、頃合いを見計らって保乃にもちゃんと話題を振ってくれるが、気付いたら2人の空間になっていることもしばしば。

そんな時はお店の内装やカクテルボトルを見渡したりする。



今日はふと、もう1人のバーテンさんに目がいった。

もちろん保乃たち以外にもお客さんは居るし、バーテンさんももう1人いらっしゃるけど、割と保乃たちは玲さんが担当してくれる。

だからもう1人の方とはまだお話したことはない。

玲さんから貰ったカクテルを口に運びながら、ちらっとその方の方を見ると、丁寧にカクテルグラスを磨いていたり、手際よくカクテルを作って提供したりしていた。

玲さんのように沢山お客さんと会話をするタイプでは無さそうだが、お客さんの目を見てゆっくりとお話されている様子で…


保「…っ!」


気付いたら目を奪われてしまっていたようで、ふと顔を上げたその方と目が合ってしまった。

気まずくてすぐ目を逸らしてしまったけど、失礼だったかな…と反省し、もう一度そちらの方を向く。

すると既にバックヤードの方に下がってしまったようで、姿はなかった。








それからしばらくしてからも、麗奈ちゃんに誘われてBARに通う日々が続いていた。

今日も誘われたけど、今日は仕事で上手くいかないことがあり、誰かと楽しく飲みに行くような気分では無かった。

だけど、単にお酒を飲みたい気分ではあったので、結局BARに向かった。



今日も玲ちゃんと麗奈ちゃんは2人の世界。

今日は珍しく保乃たち以外にお客さんがおらず、2人が楽しく話している間、保乃は孤独を感じていた。

ひとりで飲んでいると、そりゃ今日の仕事のことが思い出される訳で。

あの時こうしてたら良かったのかな、とか。

でもあれは部長の指示が悪かったせいじゃないか、とか。

いやそもそもそんな人のせいにするのはあかんよな、とか。

脳内ひとり反省会が始まってしまい、余計気分が落ちていった。


…はあ、もう帰ろう。

きっとれなちゃんは、保乃がいなくても玲さんと楽しくお話してるから大丈夫だろうし。


そう考えていた時だった。



?「…あの、」

声に反応して顔をあげると、そこにはもう1人のバーテンさんがいた。

保「あ、どうも…」

?「あの、今日、元気ないですか?」

保「…へ?」

?「あー、っと、ごめんなさいごめんなさい。こんなこと突然言われたらキモイですよね。えっと、なんか、いつもと雰囲気違うなと思って、…ってこれもなんかキモいか。えーっと、どう言えば…」

保「…っふふ、なんそれ笑」

?「あ、やっと笑ってくれた。」

保「ありがとうございます。ちょっと、仕事が上手くいかなくて、考えちゃってました。」

?「そう、だったんですね…そしたら、かりんっ、あ。私、夏鈴と言います。苦手なもの等なければ、私おすすめのカクテルをサービスさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

保「夏鈴、さん…。苦手なものはな特にないです。ぜひ、お願いします。」

夏「かしこまりました。」


初めて話したもう1人のバーテンさんは、夏鈴さんというお名前だった。

今まで話したことなんかないのに、私が今日元気がないことを見抜かれた。

そんなに分かりやすかったかなぁ…なんてまた気持ちが落ち込む。

目の前では美しい姿勢で夏鈴さんが手際よくカクテルを作ってくれる。

その姿に私はまた目を奪われてしまっていた。


夏「お待たせしました。こちら、ダイキリになります。」


目の前には真っ白のカクテル。

そっとグラスから手を離した夏鈴さんはそのまま続けて言った。


夏「キューバのダイキリ鉱山で働く労働者たちが、厳しい暑さや過酷な労働に耐えながらも、明日への活力や未来に希望を持って飲んでいたことに由来するといわれています。真っ白な見た目と爽やかな酸味からも“希望”というカクテル言葉がついていたりもします。」

夏「普段からお連れ様へ優しい眼差しを向け、ステキな笑顔を絶やさない貴方はきっと優しすぎる方なのでしょう。だからきっと仕事も色々気を使ってしまったのでは、と思い、頑張りすぎず、明日からも希望に満ちた生活になりますようにという願いを込めさせて頂きました。」


この方は玲さんのように言葉が多いわけでも、笑顔が多いわけでもない。

だか、客の表情や様子を観察するのに長けているのだと思った。



保「いただきます。…ん。スッキリして飲みやすいです。」

夏「よかった。」



そう呟いた夏鈴さんはとても優しい笑顔だった。



麗「ほのちゃ〜ん!そろそろ帰ろ〜」

玲「保乃ちゃん、ごめんね、今日もれなちゃんに飲ませすぎちゃった…。気をつけようと思ったんだけど、おねだりが可愛くて…」

保「大丈夫です!送り届けますね笑」


お金を払って麗奈ちゃんを支えて店を出る。



夏「あのっ!」


店から出て数歩歩いたあと、後ろから夏鈴さんの声がした。


保「あ、ほの、何か忘れ物しましたか…?」

夏「いや、あの、その…。今日、保乃さんとお話出来て、幸せでした。…ずっと、お話してみたかったので…。今度来たときは、また、私にカクテルを作らせていただけませんか?もっと知りたいです。保乃さんのこと。そして、知って欲しいです。カクテルのことも…私のことも。」



不安そうに眉尻を下げて、子犬のような顔で言われたら断れるわけがない。



保「はい!もちろん!」





辺りはBARに来た時よりもすっかり暗くなっていた。

でも、夏鈴さんのおかげで。

夏鈴さんがくれた言葉のおかげで、

「明日からもきっと大丈夫。」

そう思えるようになった。



同じ夜なのに、不思議とさっきまでよりずっと明るかった。








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愛 must be

のMVの中で夏鈴ちゃんと玲ちゃんがバーテンしてましたね!!

それを参考に!



まつりちゃんとほのすの卒業発表…。

辛い。

悲しい。


でもふたりのおかげでここまで来れたと思うので、ふたりが笑顔で卒業できるように、最後の日まで応援し続けます。

まつ、ほのす、ありがとう。




SiN🌱