天side




中「玲さんっ!!!」



ゆーづの大声が後ろから聞こえてきて、ふと隣のぞのを見ると、ぞのの身体が前に倒れていっていた。


それはスローモーションのように見えたから、急いで身体を支えようと手を伸ばした。


けど、その手は虚しくも空をつかんだ。





ドンッ



天「ぞのっ!大丈夫!?」


前に倒れたぞのは思いっきり頭を打ってしまったようで、頭を押さえて顔を顰めている。



玲「はぁっ…はあっ…」


息の荒いぞのを抱き抱えるように起こす。


天「ぞの?大丈夫?頭打った?」

夏「天ちゃん、あまり動かさないように。鏡越しだったけど、多分、頭打った。

天「わかった。ぞの、ゆっくり息して。」

玲「はぁっ…っ、はっ、いやっ、あ…」

天「ぞの?」




ぞのの目は開いてはいるが、焦点が合わない。

それにやっぱり身体が熱い。

着込んでたとか、カイロとか、レッスン後だからとか、そういう熱さではなく。

熱があるほうの。

だからか、目の前にいるぞのはいつもの冷静沈着なぞのではない。



何かに恐れて怯えているような顔をして、パニックになっている。




ふと顔を上げた時、3期生や4期生の顔が目に入る。

普段のけらけら笑っているようなぞのしか見たことない3期生や4期生は固まってしまっていた。




このままだといけない。



天「まつ。」

松「うん。ちょっと、3期、4期のみんなは休憩しておいで。先生たちもすみません。数人にして貰えますか。」



さすがキャプテン。同じことを思い、感じ取っていた。



夏「天ちゃん、はい。氷嚢。」

ひ「タオルも持ってきた。」

天「ありがと。ぞの、息して。大丈夫、私たちいるから。ね?」



しばらく過呼吸の状態が続いた。

楽な姿勢にさせ、汗をふき、呼吸を落ち着かせるように声をかける。

残った2期生たちも、無理に声をかけたりはしない。

程よい距離で見守りながら、必要なものを用意したり、マネージャーさんに連絡したりと動いてくれた。


その間も、ぞのの目は焦点が合わず、頭を抑えたり耳を抑えたりしていた。

その手はずっと震えている。



大丈夫。ここにいるよ。


その思いを込めながら手をぎゅっと握り、優しく背中をさすり続けた。




その甲斐もあってか、呼吸が落ち着いてきたころ、ぞのの身体がぐっと重くなった。




天「…ぞの?ぞの?!」

松「大丈夫、眠ったみたい…。」

天「そっ、か…。ごめん、気付いてたのに…」

夏「…やっぱり、レッスン前に止めるべきだった…。」

ひ「お天や夏鈴のせいじゃないよ。私達ももっと気づくべきだった…。」

松「誰も悪くないよ。もちろんぞのも。無理してたのは後で怒るとして、とりあえず空き部屋に連れていこう。マネージャーさんがソファ倒して準備してくれてるから。」




私はぞのをおんぶして空き部屋に連れていった。

こんなにぞの軽かったかなぁ…と余計心配になった。




ソファに寝かしてブランケットをかける。

打ったおでこは赤くなって少し腫れているようで。

冷たいなぁ、ごめんよ。

そう心で言いながらおでこに当て続けた。





結局レッスンは今日は終わりになって、解散することになった。



やっぱり3期生や4期生の中にはショックを受けていたメンバーもいたらしい。

だけど、まつやほのが話をして、落ち着かせて帰らせたらしい。



2期生はというと、帰れという命令には従わず、楽屋で待っているとのこと。


あんまりお互いに干渉し合わない、さっぱりした2期生だけど、井上の卒業を機に、ことある事に集まったり写真を撮ったりするようになった。


あまり表には出さないけど、実はみんなメンバーのこと大好きだもんね。







ぞのが起きた時、何か飲み物を飲ませてあげようと思い、自販機に行くことにした。

ついでに氷枕も変えよう。

そう思い立ち上がってドアを開けた時。


夏「うわっ。」

天「おぉ…夏鈴ちゃん。びっくりした笑」

夏「どう?おーぞのちゃん。」

天「んー。まだ寝てる。飲み物買いに行くついでに氷枕変えようかなって思って…」

夏「はい。これ。」

天「飲み物と氷枕?夏鈴ちゃんすごーい!」

夏「そろそろかなって。ってあれ?」

ちょっと顔を横にずらして中を覗いた夏鈴ちゃんの目が何かを捉えたのが分かり、後ろを振り返ると、ぞのが起き上がっていた。



天「ぞの!目覚めた?もーびっくりしたんだよ〜!夏鈴ちゃんと一緒に気付いた時にやっぱり止めてあげたらよかった……ごめんね。」

夏「これ、飲み物買ってきた。おーぞのちゃん、熱ある。水分取らなきゃ。」


夏鈴ちゃんと一緒にぞのに話しかけながら近付く。

だけど、ぞのは俯いているまま。

ぞのの黒い綺麗な髪で顔が隠れて表情は見えない。


天「ぞの?」ポンッ


軽く肩を触っただけなのに、ぞのの肩がびくっと大きく跳ねる。


天「ぞの?大丈夫?」

玲「……」


目が合ったぞの。

だけど返事がない。


夏「…おーぞのちゃん?」

玲「…ぁ、えっ、あぁ、」


次の瞬間、ぞのの目からは大粒の涙が溢れ始めた。

そして呼吸がまた荒くなる。


天「ぞの、大丈夫。大丈夫だよ。ぞのはね、レッスン中に倒れちゃったの。熱があったんだよ。ちょっと頭打っちゃったみたいだけど、まだ頭痛い?」

夏「…天ちゃん。待って…。」








玲「…っあ、はっ、てん、ちゃん、かりんちゃ、」






玲「…き、きこえんっ…耳が聞こえんがよっ……」