ガラガラガラッ

澤「〜となるから、っておーい。藤吉。無言で入るな!遅刻だぞ!」

夏「……」

澤「無視かっ!」





口うるさい担任が何か言っているが、私は気にせず窓際の自分の席まで歩いていく。


保「おはよ、夏鈴ちゃん!」

席に着くやいなや、隣の席の保乃が話しかけてきた。

夏「…はよ。」

保「また昨日バイト遅くまでやってたん?」

夏「…ん。」

保「またどうせ朝ごはん食べてへんのやろ?あとでパンあげるな?」

夏「……ありがと。」

保「ってか、びしょびしょやん!ちゃんと傘さしてきたの?!」

夏「…さした。さしたけど、濡れた。笑」





私は藤吉夏鈴。
高校2年生。

保乃とは高校の入学式の時に出会って、いつの間にか仲良くなっていた。

……そして、保乃は私のある事情を知っている唯一の友達でもある。

ただ、そんな保乃にすら黙っている秘密もあるけど。






今日は天気が悪く外は雨風が酷い。

歩いてきている時に、雷のゴロゴロと言う音も聞こえてきた気がする。



……なんだか心がざわざわするな…。





キーンコーンカーンコーン

澤「お、じゃあこの時間はここまでな。」


そう言って担任が居なくなると、教室の中では本を読む者、騒ぐ者、寝始める者など、各々の時間を過ごし始める。


保「はい!夏鈴ちゃん!パンな!あとタオル!」

夏「ありがと〜」



保乃に貰ったパンを頬張っていると、「も〜ほんまに高校生かいな〜」といいながら、タオルでわしゃわしゃと私の頭を拭いてくれる。



保「てか、びっくりしたよなぁ〜。初めて会った時のこと!」

夏「まだそれ言うの?」

保「だって、金髪の人が居たんだもん!金髪とか不良で、テレビの中の話やと思てたからびっくりして!」

夏「でも、不良だったら怖がって普通話しかけなくない?」

保「だって(笑)ずーっと自販機の前でペットボトルの蓋開けられずに格闘してるんだもん(笑)怖さより心配が勝るやん(笑)」

夏「……だって、固かったんやもん。」

保「保乃の中にあった、金髪=怖い人って概念、壊された瞬間やったわ〜(笑)」

夏「もう、いいって…(笑)」





こんな感じで保乃は私と仲良くしてくれている。

今まであまり人と上手く付き合うことが出来ず、友達の作り方も、人とのうまい付き合い方も分からなかった私にとっては、とても有難い存在だ。



保「あ、そういやな、朝みんなが騒いでてんけど、転校生?来るらしいで?このクラスに!」

夏「え、そうなん。知らない。」

保「そら、夏鈴ちゃん、朝おらんかったんやから知らんやろ(笑)」

夏「あ…(笑)」

保「どんな子かなぁ〜!なかよなれるかなぁ〜!」




目の前でキラキラした顔をしている保乃に、心の中で「保乃なら大丈夫でしょ。」とつぶやいた。


……私とは違うんだから。












夏「…次って何?」

保「次は……澤部先生の国語やな」

夏「ん。じゃあ、もし当てられそうとか、テストするとかってなったら起こして。」

保「え、寝るの!?もー。ってもう寝てるし……昨日も遅くまでバイト頑張った言ってたもんなー。」




保乃と会話をしているうちにどんどん眠気が襲ってきて机に突っ伏す。

「頑張りすぎたらあかんで〜」というゆるふわな関西弁と、私の頭をわしゃわしゃと撫でてくれる暖かい手によって、私が夢の中に行くのはあっという間だった……。