天「動物と人が話せる機械って、よく売られてるよね?」

夏「うん。ねこちゃんと話せる身からしたら、興味なかったから気にしてなかったけど、多分あれ…」





ひ「あ。思い出したんだ。」





夏「ひかる…」

ひ「そうだよ。今世の中に出回ってる“動物と話せる機械”。あれのオリジナルは、夏鈴が子どもの頃に受けた実験の成果だよ。」

天「え、そうなの?」

夏「そうだろうなと思った。あの頃の記憶がなかったから繋がらなかったけど、前にひかるが言ってたよね。」

ひ「あ!やっと気づいた!?“(株)Forestfield”。そこの社長兼、研究所の博士が私のお父さん!」

夏「やっぱり…。」

ひ「あのオリジナルを元にして、どんどん新しい機械が流通し始めた。安いまがいものも。」

夏「だから、私と天がねこと話せることを知ったひかるは、私たちのことを伝えて拉致し、実験に付き合わせようとしたんだね。より精度の高い、新しい商品を作るために。」

ひ「そ。まあ、半分正解かな。」

天「半分?」

ひ「天が猫と話せることを博士に言ったのは私じゃないよ。」

夏「誰…、ってまさか!」

ひ「そ。天のお母さん。お金になると思ったんだろうねぇ。どうやって知ったのか分からないけど、博士に直接電話しできたんだってさ。」

天「…お母さんが…」

夏「…っ!」

ひ「それに、夏鈴が猫と話せるって知った時は驚いたよ!だって昔、研究所にいた女の子の名前も“かりん”だったから、まさかと思って近付いてみたけど、本当にあの時の夏鈴だったなんて!」

夏「…そう…だったんだ。」

ひ「ま、夏鈴は私の事なんか覚えてなかったみたいだし、幼少期のこと聞いても夏鈴の反応は薄かったから、きっと覚えてないんだろうなとは思ったけど。」

天「…私たちは帰れるの?」

ひ「うん。実験が終わったらね。大人になった夏鈴のデータも取れたし、新しい子どものデータも取れたし…まだ、」

?「おい!」

ひ「…っ!…お父さん…」

博「ここでは博士と呼べと言っただろう。何をぺちゃくちゃ喋っとるんだ!余計なこと吹き込んで実験に支障が出たらどうするんだ!!」

ひ「はい…すみません…」

夏「…?」

博「早く部屋にもどれ。」バンッ

ひ「…!(ビクッ)……はぁ。じゃ、このあともよろしく〜」




天「…」

夏「…天。さっきの…」

天「ん?あ、お母さんのこと?」

夏「…うん。」

天「大丈夫。気にしてない…か…ら、ってあれ?なんで涙が出るのかな。」

夏「…っ、おいで。」




天を抱きしめると、天は私の胸の中でわんわんと泣き出した。

ねこちゃん達も心配してそっと寄り添ってくれた。




…わかるよ。

…私もそうだったから。









天「…ありがと。」

しばらく泣いたあと、天はすこしすっきりした顔をしていた。

夏「んーん。どういたしまして。じゃあ、ここから逃げよう。

天「え!逃げるの?」

夏「私が記憶を無くしていたのは、色んなショックが重なっただけじゃない。確か…最後に受けた実験がっ…苦しく、て…」

天「夏鈴!深呼吸!!」

夏「…ふー。ありがとう。あんなの、天に受けさせる訳にはいかない。私も二度とごめんだ。」

天「わかった。」







『じゃ、ひかるも救ってやってよ。』






天「え?ひかる?ひかるを救うってどういう意味?」

夏「ひかるも、この環境から逃げたいんじゃない?」

天「夏鈴?レオン?どういうこと?」

夏「きっとひかるもお父さんのことが嫌いなんだよ。」

『そ。かりんの言う通り。ここで実験を受けてるのは、君たちや猫たちだけじゃない。ひかるも被験者なんだよ。』

天「え…。」

『かりんが昔ここにいた時もだけど、かりんたちはデータを取られる側の被験者。ひかるはデータを移される側の被験者なんだよ。言わば試作品を試される人。僕は昔も今も両者の様子を見ている。どっちも苦しそう。』

天「そんな…。なんで夏鈴は分かったの?」

夏「だって、さっきお父さんが来た時のひかるの目。様子。雰囲気。親だから嫌いじゃない。嫌いになれない。けど身体は正直に反応しちゃう。」

天「…そっか。何となくわかる気がする。」

夏「それに、私たちの拘束を解いてくれてる。ひかるは本気で私たちを苦しめようとは思ってない。それに…」

天「それに…?」

夏「今思えば、ひかるはずっと私に警告してた。私が気付いていなかっただけで。」

天「??」

夏「とりあえず!計画を立てよう!レオン、この施設の間取りを教えて!」

『もちろん!』