次の日。
起きても状況は変わらなかった。
変わったことといえば、手足の拘束が解かれたくらい。
夏鈴は夏鈴であのまんま。
ひかるはひかるで冷たいまんま。
...こんなんだったら、お母さんにタバコ押し付けられてる方が楽だよ。
ひ「じゃ、今日もよろしく。」
...また始まった。
ひ「じゃあお昼ご飯でも食べててね。」
実験のあと、そう言ってひかるはコンビニおにぎりとインスタントの味噌汁を置いていった。
...そろそろお腹がすいてきたな。
仕方なく、それらを食べる。
ひかるはねこちゃんたちのご飯も置いて行ってくれたから、ねこちゃんにもご飯を用意する。
天「...食べよっか。」
ニャン
天「夏鈴、食べよ。食べないともたないよ。」
夏「...」
天「ここ、置いとくから。ねこちゃんたち、大丈夫?」
ニャッ、ニャッ
天「そっか。やっぱり気分悪いか。僕もだよ。」
ニャーン
天「そうだね...はやくみんなに会いたいよね...」
そうやって話していた時だった。
にゃあ〜
今までに聞き覚えのないねこの鳴き声がした。
天「ん?誰?」
ふと、声のした方をみると、キジトラ模様のねこちゃんがいた。
天「君...はじめましてだよね?」
にゃん
天「え。」
そのねこは、“僕はレオン”とはっきりと話した。
他のねこちゃんとは違う。
とてもはっきりと理解出来た。
天「レオン?なんで僕は君の言ってることがこんなにはっきり分かるんだろう?」
にゃ、にゃ
天「え、夏鈴?夏鈴のこと知ってるの?夏鈴はあそこだよ。」
にゃ〜
レオンと名乗るねこちゃんは、“君で2人目だよ、ここに来る子どもは。1人目はかりんって子だった。”と言っていた。
だから、夏鈴ならそこにいるよ、と教えてあげたら、ちょっと驚いた顔をしながら、体育座りで俯いている夏鈴の方へ駆け寄って行った。
夏鈴はレオンが擦り寄っても変わらなかった。
だけど、レオンがにゃっと一声鳴いた途端、ばっと顔を上げて、驚いた顔をした。
そして頭を押えて苦しみ出した。
そこから2人…1人と1匹は何か話をしていた。
遠かったし、はっきりと理解出来る訳では無いから何を言ってるか分からなかったけど。
でも、だんだん、夏鈴が穏やかな表情になっていくのは分かった。
最後に、夏鈴がギュッとレオンを抱きしめたあと、夏鈴はレオンを抱いたままこっちへやってきた。
夏「天。ごめん。」
天「ん?なにが?」
夏「冷たくした。」
天「いいよ。」
夏「それに、大人の私が天を励まさないといけなかったのに。放置した。守れなかった。」
天「んーん。大丈夫。夏鈴が元に戻ってくれてうれしい!ね!ねこちゃんたち!」
ニャーン!!
夏「ふふっ。ありがと。ねこちゃんたちもありがと。」
天「さっきさ、レオンにここに来たのが僕が2人目で1人目が夏鈴だったって言われた。夏鈴はここに来たことがあるの?ここって何なの?実験って何?」
にゃん
夏「うん。そうだよね、天には話さないとだよね、レオン。」
夏「確かに私はここに来たことがある。天と同じ歳くらいの時に。そして、ここは研究所。」
天「研究所?」
夏「そ。動物と人が話せるようになる機械を発明する実験をしてるところ。」
天「動物と人が話せる機械???」