ひ「夏鈴…!」
夏「…ひかるっ!」
ひ「天が居なくなったってどういうこと!?」
あの後すぐ、ひかるに電話した。
ひかるが来るまで、神社をくまなく探した。
ねこ達にも指示を出して、半径1km以内を捜索してもらった。
…それでも、天は見つからなかった。
ひ「じゃあ、ここに天の荷物が隠されてたんだね。」
夏「うん。」
ひ「靴まで隠すなんて…じゃあ相手は車かな。天のこと眠らせて連れてったのかな…。」
夏「それからもうひとつ。ねこ達に、下校の天のことを見守っててもらってたんだけど、学校からここまで天のことを見たねこがいない。」
ひ「…?どういうこと?」
夏「下校しはじめた時を見たねこちゃんはこの子。」
ニャー
夏「だけど、それ以降を見かけたねこちゃんが居ない。いつもここに集まってくるねこちゃんが数匹いない。多分一緒に連れていかれた。」
ひ「なんで猫まで?」
夏「ねこから天が連れ去られたという情報がバレないようにするためだろうね。もしかしたら天がねこちゃんに伝言してるかもしれないし。…つまり、天を連れ去った人物は、天がねこと話せることを知ってる。さらには、ねこと話せる人が天の近くにいるということも知ってる…人…物…。」
ん?
何か…ひっかかる…
ちょっとまって。
なんで連れ去った人物は天がこの時間にいるのを知ってるんだ…?
天の安全のために、天との待ち合わせの時間は毎日バラバラにしているのに…。
その時間を知ってるのは、私と、天と…
夏「ねぇ。ひかる。」
ひ「んー?やっぱり神社の下にもいなさそうだね…ちょっと近くを…」
夏「ひかるっ!!」
ひ「もうっ!何?捜索範囲を広げないと!」
夏「いいから。ちょっとまって。なんで天を連れ去った人物は、ねこ達も連れてったんだろうね。」
ひ「それは、さっき夏鈴が言ってたじゃん。猫が天が連れ去られたことをばらさないようにする為でしょ?」
夏「じゃあ、なんで天がねこと話せること、それから天の近くに、ねこと話せる夏鈴がいることを知ってるんだろうね。」
ひ「それは、天のことを監視してたから分かったんじゃない?ほら。天も“誰かに見られてる”って言ってた訳だし。」
夏「じゃあ…。なんで、天が“今日”この時間にここにいることを、知ってるんだろうね。」
ひ「それも、天のことを監視して…「いや。」」
夏「それはありえない。だって天とは毎日集合場所も時間もバラバラにしてたから。それを知ってるのは、夏鈴と、天と…
ひかる。この3人だけなんだよ。」
ひ「…は、ははっ。何ってんの夏鈴。さっきまで事務所に居た私がどうやって天を連れ去るんよ。」
夏「…。夏鈴が事務所を出た時は、確かにひかるはいた。でもその後、私はねこの喧嘩と人間の喧嘩を止めてる。ここに来るまでに時間はかかってる。その喧嘩もひかるが仕組んだんじゃないの?」
ひ「…」
夏「それに、ひかるが直接連れ去らなくても、誰かに指示を出して動かすこともできるよね。」
ひ「…」
夏「ねぇ。ひかる。違うよね?これは夏鈴の推理ミスだよね?」
ひ「…」
夏「ねぇ!ひかるが関わってるわけないよね?」
ひ「…」
夏「ねぇ!答えてよっ!!」
シャーッ!!
突然ねこ達が威嚇しはじめた。
びっくりしてねこ達の方を見て、ひかるの方へ目線を戻した時だった。
シュッ
夏「…っ!?なに、こ、れ、ひか、る…?」
顔になにかを吹きかけられた。
その瞬間、ぐにゃりとひかるの顔が歪む。
夏「…なん、で…」
意識が飛ぶ間際に見たのは、今までに見たことの無い表情のひかるの姿だった…。