それから、天はちょくちょく夜ご飯を一緒に食べるようになった。

ひかるのご飯を天も気に入ったようで、いつも喜んで食べる。

特に梅干しが好きらしく、ひかると好みが合った。だから、ひかるもおすすめの梅干しを買って食べさせることもあった。

そんな嬉しそうにご飯を食べる天を見ると、なんだか私も食べる気になる。以前にも増してちゃんと食事をとるようになったように思う。







また、天には言っていないが登下校も見守ることにした。

もちろん朝は早すぎて、ひかるに叩き起されて行くが、天のためだから苦じゃない。帰ってきたらお昼寝できるし。

放課後は毎日天といつもの神社で待ち合わせをする。




夏「…天。」

天「あ!夏鈴!遅いよ!」

ニャー!!

天「ほら、ねこちゃんも怒ってるよ!」

夏「ごめんごめん。寝てた。ねこちゃんも、遅くなってごめんね。」ナデナデ

にゃ~

夏「…そ。ありがとう。」




ねこと一緒にたわむれながら、学校であったことを天は一生懸命お話してくれる。

天のお母さんはいつも帰ったら寝てるし、起きたら直ぐに仕事に行くから、なかなか学校の出来事を聞いて貰えないらしい。

だからとても嬉しそうに話してくれる。




天「でね、今日のドッジボールでは隣のクラスと対決したんだ!僕だけ残っちゃったんだけど、最後相手チームのヤツら全員当てたんだ〜!」



天は学校では人気者のようだ。

運動神経抜群でドッチボールや鬼ごっこも得意。
図工も好きらしく、特に絵を上手に描いてほめられるらしい。

…勉強は苦手らしいが。(笑)




夏「テストは?この前テストあるって計画帳に書いてたよね?」

天「…見てたの?はぁ…。はい。」

夏「…ふはっ!」

天「笑うな!!!」

ニャーニャー

天「え?そうなの?夏鈴、人のこと言えないってねこちゃんが言ってるけど?」

夏「あ!こらっ!もう…。そうだよ、私も勉強は苦手。(笑)このテストはひかるには内緒にしとこうね。」

天「うん!」



あと、服装等で虐められることはないらしい。先生たちも家庭事情は把握しているらしく、一応は気にかけてくれているようだ。






そしてねこ達に、天が話せることも内緒にして欲しいと頼んでおいた。

ねこ達も、なんだかんだ天のことを心配していたらしい。

夏鈴に天の存在を言わなかったのは、やっぱり天が子どもだから。ねこ達的にも、天が本当にねこと話せるという確信が持てなかったかららしい。

それに、以前、夏鈴がねこと話せることは、今後話せる人間が来ても内緒だ、と言っていたから、逆も然りだと思ったとのこと。



賢いねこちゃん達だ。



だからねこ達にも天を守って欲しいとお願いしておいた。

天には聞こえないように、夏鈴が神社に来るまでの間や夏鈴が把握出来ない時のことを報告してくれる。さっきみたいにね。

一応夏鈴も探偵だから、依頼等で下校の見守りに行けない時もあるからね。







夏「じゃあ、そろそろ帰ろうか。夜ご飯はどうする?」

天「今日は冷蔵庫にあるものを食べるよ。この前ひかるに貰った梅干しもあるから。毎日毎日だったら流石にお母さんに怪しまれるし。」

夏「了解。じゃあ送るよ。」

天「じゃあね〜ねこちゃんたち!」

にゃあ~










こんな感じで過ごし始めてからは、天曰く、見られてる感じがしなくなったらしい。


…少し安心。油断しちゃいけないけど。







夏「ただいま〜」

ひ「おかえり!あれ?天は?」

夏「今日は家で食べるって。ひかるの梅干し食べるってさ。」

ひ「そっか!じゃあ、今日作ったおかずはまた明日渡してあげて!」

夏「ひかるも一緒に神社に行けばいいのに。」

ひ「…行かないよ。」

夏「なんで?」

ひ「だって、誰かさんがいない間に万が一、いや、億が一依頼が来たら困るからね!(笑)」

夏「なんだと〜!」

ひ「ひひっ。それに…」

夏「それに?」

ひ「私が行っても、私は猫とは話せない。どうせ2人と数匹の世界に入るじゃん?」

夏「あー。じゃあ、また天を晩ご飯に誘った時に、たくさん天のお話聞いてあげて?天、ひかるにもお話聞いて欲しいって言ってたから。

ひ「…うん。わかった!」









そんなこんなで数日間、調査をしつつ過ごしていた時。











事件は起きてしまった。








夏「…はぁ、はぁ…。まさかあのタイミングでねこの喧嘩に出くわすとは…。しかもその近くで人間も喧嘩してるし。天、待ってるだろうな…



天との待ち合わせの時間に間に合うように起きて、支度して出発したのに、まさかの遅刻。こりゃまた、天とねこ達に怒られるぞ。

そう思い、自分の時速最速じゃないかと言うくらいのはやさで神社へ向かった。





夏「はぁ、はぁ、て、天?てーん?お待たせ。ってあれ?」



とっくに待ち合わせの時刻は過ぎてるのに、天の姿が見当たらない。

天が待ち合わせの時間に居ないことなんかほぼないのに。

以前、一度だけ下校前に遊びに誘われて夢中でドッチボールをしていて時間に遅れたことがあった。

その時は心配で天を叱ったっけ。心配するからって。

でもその時に、ねこ伝いでいいから夏鈴に知らせてって約束した。



にゃあ〜

夏「あ。ねこちゃん。天から何か聞いてる?」

ニャッ

夏「そっか。ほかの子もそんな話してなかった?」

ニャ~

夏「そう…。」



しばらくすると、ほかのねこ達も集まってきた。

みんなに聞いたけど、知らないって。

下校し始めたところを確認したというねこちゃんはいた。

でもその後の様子を知るねこちゃんはいなかった。




夏「…。」

ニャー!!ニャニャ!!

夏「どうした…って、え、それ…」



林の中からねこ達が飛び出してきた。

そのねこがくわえていたのは紛れもなく、天の靴だった。



夏「それ!どこに!」



ねこ達の後に着いていくと、林の中に天のランドセル、手提げも一緒に置かれてあった。

…いや、“隠されて”あった。




夏「…!!天!!!」