夏「…ひまだ。」

ひ「暇なら外に出て事件探して来れば?」

夏「えー。」

ひ「じゃあ、夏鈴の隠れ場所が無くなるように大掃除でもする?」

夏「散歩がてら、地域の安全確認してきまーす」スッ…

ひ「はぁ。ったく。さて、ご飯でも作るか。」






〜散歩中〜

夏「も〜。ひかるに追い出された…。まあ、散歩は好きだからいいけど。」

そう独り言を呟きながら散歩をした。




私の散歩コースにはお決まりのコースはない。

その日の気分、その日の空気、その日の匂いでコースや行き先が変わる。

…あとはねこちゃんがいるかも大事。

ニャー

夏「あ、ねこちゃんの声だ〜」






そんなねこの声に誘われてやって来たのは、偶然にもよく来る神社だった。

夏「あ!いたいた〜。君は…そうか、初めましてだね。まだ子どもから大人になってる途中かなぁ〜。」

ニャーニャニャー

ねこをなでようと、屈んだ時だった。

視界にいつもは見かけない物を捉えた。

夏「…?」

おそるおそる、本殿の下を覗き込むとそれは小さい子どもだった。

夏「君…大丈夫?」

?「…。」

夏「怖くないよ。出ておいでよ。」

?「…。」

ニャー

夏「ほら。ねこちゃんもいるよ?」

すると、そのねこの声に反応してか、その子は顔をあげ、もぞもぞと出てきた。






夏「…。」
?「…。」

ひかるみたいに積極的にお話をするのが得意じゃない私。

無言でねこを撫でている少年?をじっと見つめ、頭の中で考えをまとめる。


この子は誰?
あんな所で何してた?
小学生…だよな?
この肌寒い季節に、長そでTシャツに短パンって…。
しかも裸足だし。
親御さんは?
どうしたらいい……?


夏「あ。」

そんなことを考えていると、雨が降り始めてしまった。

夏「こっちおいで。」

ねこを抱き上げ、少年の手を握り、ひとまず雨宿りできるところに避難する。





夏「本降りになっちゃった…。今日雨予報だったっけ?ひかる、迎えに来てくれるかなぁ…。あ、君はおうち近い?誰か迎えに来てくれる?」

?「…誰も迎えになんか来てくれないよ。」

夏「ほら、おうちの人とか、心配して…」

?「誰も僕のことなんか心配しないよ。」

…なんだかこれ以上踏み入っちゃいけない気がした。

夏「そっか。じゃあ君は…」

?「君って嫌だ。天。天って名前がある。」

夏「天…くん?」

天「天でいい。呼び捨てがいい。」

夏「わかった。天。寒くない?ねこちゃん好き?」

天「寒くない。慣れてるから。ねこは好き。みんな僕を受け入れてくれる。」

夏「…そっか。一緒だね。」

ニャー

夏「天は…「かりーん」」

天に歳を聞こうとした時だった。遠くから雨の音に混じって、ひかるの声がした。

夏「おーい。こっち。なんで分かったの?」

ひ「なんとなく?ここにいそうだなぁって思って。

夏「ありがとう。そうだ、この子どうしたらいい?」

ひ「この子?野良でしょ?無理に連れて帰っちゃダメだよ。」

夏「へ?野良?」

そう言うひかるの視線の先に目を向けると、そこには天の姿はなく、寝そべってくつろぐねこの姿しか無かった。

夏「あれ?子どもいなかった?」

ひ「何?(笑)寝ぼけてるの?」

夏「…。」

ひ「さ。帰ろ?冷えたでしょ?またお味噌汁作ってるから!」

夏「…うん。じゃあ、君も雨がやんだらお家に帰るんだよ?」

ニャー

天はどこに行ったんだろう?

夢…?そんな訳ない。この手で天の手を握ったんだから。

でもこれ以上言うと、またひかるに馬鹿にされると思い、今日のところは黙っておくことにした。





あれから数日。

散歩の度に神社に寄ったりもして、天の姿を探すけど、あれ以来、天に会うことはなかった。

夏「夢だったのかなぁ…。」

ひ「なに?どうしたの?」

夏「んーん。なんでもない。」



コンコン
ひ「あ、依頼かなぁ〜。はーい!」


天は何か困ってた。でもなかなか人の事情に踏み込むのには勇気がいる。それが例え子どもでも。

ひ「夏鈴!」

夏「ん?依頼?またねこ探し…?」

ひ「この子、知り合い?夏鈴に用があるって。」

そう言いながらひかるが連れてきた子は、まさしくあの日から探していた天だった。

夏「え。どうしてここが。」

天「夏鈴は探偵さんなんでしょ?」

夏「私、天に名乗ったっけ?」

天「ううん。ねこ達が教えてくれた。」

ひ「ねこが教えてくれたって、どういうこと?」

天「僕、ねこと話せるもん。」

ひ「え!」

天「それで夏鈴に相談があるの。というか助けて欲しいの。」

夏「いいけど、なんで夏鈴に?」

天「ねこ達が言ってた。夏鈴は優しいよ。いつも助けてくれるねこに優しい探偵さんだよって。それに…








夏鈴もねこと話せるんでしょ?」







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新年度、頑張りすぎず頑張りましょう。
まだ1日目なのにもう病みそう。


SiN🌱