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焦った様子で保乃が来た。


その場で事情や手紙のことを簡単に話すと

「後は任せて!天ちゃんは病室戻り!」と言いながら、他の看護師さんと捜索に向かった。





戻れと言われても...





夏鈴のことが心配だから保乃に後から怒られること覚悟で、保乃の言いつけを無視して探し回ることにした。





夏鈴の病室の近くのトイレも


院内学級も


給湯室も


プレイルームも


探せるところは探した。


でもいなかった。


その時、ふとある場所が思いついた。


天「あそこかも...










ガチャッ

天「はあっ、はあっ。」


祈る思いで重いドアを開ける。


天「...いた。」


夏鈴がいた場所。






それは病院の屋上だった。





ここは理佐さんがまだ動ける時、「学生は屋上でサボるんだよ〜」と、学校経験の薄い私のために連れてきてくれた場所だった。


天「...夏鈴。」

夏「...





今日は雲が多くて月明かりがない。


そのため、無言で振り向いた夏鈴の表情は読めないが、今にも消えてしまいそうな雰囲気だった。





天「夏鈴。何してるん?戻ろ?病室。」


フェンスの近くにいる夏鈴。


嫌な予感が的中しないようにフェンスから離そうと近づいた。


夏「来ないで。」


初めて聞くくらい冷たい声に私の身体も凍りついたように動かなくなった。


夏「なんで天はそんなに明るくおれるん。夏鈴には無理や。理佐さんがおらんくなったこの世の中なんかもう嫌や!」



そう叫ぶと夏鈴はフェンスを登ろうとした。


天「夏鈴!!」


もう少しで登りきってしまいそうな時に何とか夏鈴の服を掴むことができ、2人で地面に転がり込む。



夏「なんすんねん!あほ!じゃませんでやっ!!」



パンッ

突然私に頬を叩かれ、目をまん丸に開いた夏鈴と目が合う。



天「あほはこっちのセリフや!夏鈴は理佐先生から何も学ばんかったんか!」




私の叱責を機に、夏鈴は私の胸の中で泣き続けた。





こんな夏鈴を見るのは初めてだった。