banditシリーズ
カチッカチッ
「ふぅ...」
「動くな。」
「くっ...」
パアンッッ
「「お誕生日おめでとう!!」」
「もう〜!びっくりさせんでよ〜!」
「お誕生日おめでとう!ひかるさん!」
ひ「ありがとう。天。」
「おめでと。ひかる。」
ひ「夏鈴もありがとう。」
「ひぃちゃん!!ケーキ買ってきたで!」
ひ「ほのちゃんも!ありがとう!...にしても、天はいつまでそのネタするの?」
天「“動くな”ってやつ?だって3年前のあの日病院で真実を知った時の衝撃は一生忘れられないもん!ね!夏鈴!」
夏「まあそうやなぁ。この傷見る度に思い出すわな。」
そう言って夏鈴は胸の当たりを撫でた。
ひ「この話毎年するじゃん(笑)」
保「だって、この4人が一緒に活動し始めた記念日が、ひぃちゃんの誕生日やもん!一生忘れんし、これからも忘れんよ!」
そう。
私たちは今、生きている。
夏鈴と天の死亡のニュースが流れてたじゃないかって?
犯人は警察関係者、私、森田ひかるじゃないかって?
ほのちゃんって誰かって?
全ての真実を話すには、3年前のあの日。
報道があった前日に遡る。
天「グスッ...グスッ...夏鈴...起きてよ...」
?「まだ起きてないんだってね。」
天「あっ...ひかる...さん...何しに来たん!!」
そう言った天は覆い被さるように夏鈴のことを守った。
ひ「そんなに警戒心丸出しにしないでよ(笑)」
天「夏鈴がこうなったんはひかるさんのせいじゃん!私らの事殺しに来たん!」
ひ「そんなこと言われたって、私のこれも夏鈴のせいだからね?」
そう言って私は病院着を捲った。
天「でも...」
ひ「まぁ、殺しに来たってのはあながち間違いではないかな?」
天「えっ。」
ひ「その件については、夏鈴にも聞いてもらいながら3人で話そうか。」
天「そう言ったって...夏鈴はまだ...」
ひ「夏鈴、起きてるでしょ?本当に意識がない人は目は動かない。だけど、さっき天が夏鈴に覆いかぶさった時から目が動いてるよ。あと心電図も若干さっきより振れ方が変わった。」
夏「...さすがやな。」
天「夏鈴...!!よかった...生きてた...」
夏「ごめんな、心配かけて。」
ひ「さぁ、感動の再会も終わったことだし、本題に入ろうか。夏鈴、約束通り、貴方には死んでもらう。もちろん、この話を聞くことになった天も。」
夏「はぁ...。まあ約束やしな。てかこの約束、ほぼ確定じゃない?」
ひ「いや、約束通りになるかは分かんなかったよ?だって夏鈴が撃った弾丸、身体の中に残ってたらしいから、下手すりゃ私死んでた。」
夏「それは、ごめん。初めて撃ったから...(笑)」
天「ちょ、ちょ、待って、置いてかないで、話が全く見えない。今、私たち殺されそうなのになんでそんな悠長に話してんの?」
夏「あ、ごめん。」
ひ「ごめんごめん。2人に死んでもらうのには違いないけど、“本当に”死んでもらう訳じゃない。“世間的に”死んでもらうの。」
天「“世間的に”...?」
ひ「そう。そして、“協力者”になってもらう。」
天「協力者...?」
?「そう。協力者。私たち“公安”のね。」
夏「...誰?」
ひ「この人は田村さん。公安にいる私の上司。」
保「いつもみたいにほのちゃんって呼んでよ〜ひぃちゃん!」
ひ「夏鈴たちの前です。やめてください。」
保「お堅いなぁ〜(笑)とにかく、2人には私たちの協力者になって汚い奴らの汚い金を奪って、私たちと一緒にこの国を護るのを手伝って欲しい。夏鈴ちゃんはひぃちゃんから聞いてんねんやろ?」
夏「そうですね。軽く。」
天「え、いつ!?」
夏「あの日。天が意識朦朧としてた時かな。」
天「あぁ...」
ひ「“私の協力者になって。ならないとこの子を殺すよ”って脅したら、“そんな事させない。それ以上、天を傷つけるなら撃つ”って銃を構えられて。」
夏「そこで、協力者になるって答えたとしても、天を助けられる確証は無かった。“この話を聞かれたから殺す”とか言われる可能性も残ってたからね。だから賭けを持ちかけた。」
ひ「“私は天を助ける為にひかるを撃つ。ひかるは自分が死なないように夏鈴のことを撃ちや。手抜いたら死ぬで。それでもし、お互い生き残ったら一旦投げたこの命や。ひかるに預けることにする。”ってね。」
夏「やけど、あの時は気が動転してたから気付けんかったけど、ひかるは夏鈴を死なさんようなところ狙えたよな。自分から持ち掛けた賭けやけど、なんの賭けにもなってなかったわ。」
ひ「本心では、私ともう一回組みたかったってことなんじゃない?(笑)」
夏「そうかもしらん(笑)」
ひ「だって、あの日、あの場所で天と私が鉢合わせるように仕向けたのは夏鈴でしょ?」
天「え?」
夏「ごめん、天。天を危険に晒さんとか言っときながら、やっぱりひかるにお礼がどうしても言いたくて。」
天「やっぱりそうだったんだね...」
夏「だから天が1人で仕事した時、天が撤収した後に、バレない程度にヒントを残してたんよ。ひかるなら気付くかなって程度の。」
天「あぁ、だから居なかったの...。」
夏「そしたらひかるが天を殺しそうになってたから、お礼を言う間もなくそんな話になってたわ。(笑)」
夏鈴はふぅと息を一つ吐き、初めて会った時のような力強い目をしながら言った。
夏「ひかる。改めて、あの日。屋上で私を助けてくれてありがとう。屋上で救ってもらったこの命、そしてあの日捨てたこの命...ひかるに預ける。」
ひ「夏鈴。ありがとう。私ももう一回夏鈴に会いたかった。もう一回夏鈴と組みたかった。」
保「よっしゃ。じゃあ夏鈴ちゃんは決定やな。ほんで、天ちゃんはどうする?」
夏「天、天が決めたらいい。これからも夏鈴と一緒に来たい?それとも、普通の生活に戻りたい?もし普通の生活に戻りたいならここで2人殺して...」
天「ちょっと、さっきまでの感動はどこに行ったのよ(笑)私は夏鈴に出会ってから変わらないよ。私は夏鈴の考えに共感した。夏鈴と一緒にひかるさんやほのさんの協力者になって、これからも子ども達の未来の為に働けるなら本望だよ。これからも夏鈴について行く。」
夏「...ありがとう、天。」
保「よっしゃ!決まりやな!じゃあ、夏鈴ちゃんと天ちゃん殺して撤収しよか!!」
ひ「ちょっと、言い方が物騒すぎますって...てか、本当に上手くいくんですか?」
保「大丈夫大丈夫!知らんけど!」
ひ夏天「「えぇ...」」
天「ほんとにあの時はびっくりしたなぁ...てか、ひかるさんはなんで公安に?私たちとは敵だったのにどうして一緒に組もうと思ったんだっけ?」
ひ「それは、天と同じだよ。」
天「私と?」
ひ「夏鈴と組んでた時に、夏鈴が盗みをする目的を聞いた。その時からずっとモヤモヤしてたんだ。“汚い奴らと夏鈴。どっちが本当の悪なんだろう。”って。」
天「そうなんだ。」
ひ「そんな時に、ほのちゃんから声が掛かった。」
保「ほのな、一緒に国の為に戦ってくれる人探しててん。で、ひぃちゃん見かけた時にピーンと来て!まぁ、バレんようにひぃちゃんの情報も色々仕入れててんけどな(笑)」
ひ「で、協力者になれそうな人いない?って聞かれた時に1番に頭に浮かんだのが夏鈴だった。そしたらなんの偶然か、夏鈴からのメッセージが現場に残ってるのを見つけた。これは運命だって思ったって訳。」
ひ「でも、私は警部っていう役職がある。そこから公安に...ってのは...。だからあのニュースを企てた。」
保「夏鈴ちゃんと天ちゃんは世間を騒がせてる有名やったから、世間的には“死んだ”ってことにさせてもらうほうが自由に動ける。で、犯人はひぃちゃんってことにした。」
夏「あの時は警察めっちゃ叩かれてたよな。匿ってもらってた部屋でテレビ見てたけど、酷かったもん。」
ひ「うん。だけど、それで私が本当に犯人になったら動けないから、誤認逮捕だった、夏鈴と天は自殺だったって報道に切り替わったでしょ?」
天「あれも、公安お得意の操作でしょ?(笑)」
保「そうやで!でもひぃちゃんは一旦疑われてしまった身分やから、元の地位には戻れない。ということで前までの立場を退いて、こっそりと公安に入ってもらったってこと!」
夏「やっぱりなかなか凄いことするよな、公安。」
保「まぁ、国を守るのが我々の仕事やからな。違法捜査もお手のもんや(笑)」
ひ「そこ、威張るとこじゃないけどね。あ、ほのちゃん、そろそろ明日の話。」
保「あ、そうやな。」
さっきまでのわいわいとした雰囲気が一変し、4人ともプロの目になる。
保「明日のターゲットは櫻組合。表向きは普通の会社やけど、裏で色々悪いことしてる。」
夏「施設の見取り図、金庫の位置、逃走経路などは調査済み。保乃から周辺の防犯カメラと施設内の防犯カメラの情報も貰ったから、ハッキングも出来てる。時間になったらダミー映像流しとくよ。」
ひ「じゃあ、いつも通り、私と天で侵入して獲物を取ってくる。夏鈴とほのちゃんは待機と周辺の警戒をよろしく。」
保「よし!じゃあ、明日もいつも通りよろしく!」
私たち4人はこれからも“真の悪”と戦う。
やっていることは違法かもしれない。
それでも戦うんだ。
この国のために。
未来ある子ども達の笑顔のために。
Fin.🌱