banditシリーズ





天「ふぅ...疲れたぁ〜!」



今は学校からの帰り道。


今日も無事終了した。




勉強が??


いや。違う。


楽しい楽しいJKライフが??


それも違う。






私のお仕事が。





今日のターゲットはたまたまある高校の校長室だった。


子どもに教育をする機関の長がねぇ...悪い人と繋がってちゃダメでしょ。



私のお仕事は悪い人からものを盗むこと。


ある人から受け継いだんだ...




勝手に




全ての始まりはそう...


だいぶ寒くなり始めた冬のある日の夜だった。


天「だから!いいって!!別に高校なんか行かなくっても働くからいいの!!」


先「でもねぇ...


天「もう!ほっといて!!」バタンッ



反抗期真っ只中の私はよく先生と喧嘩をしていた。


最近は高校受験についての喧嘩が絶えない。


先生は私のことを思って言ってくれてるのは分かってる。


だけど、私も知ってるんだ。


ここにはお金が無いことを。




私には親はいない。


親に捨てられ、親戚の家を転々とした結果、ここに連れてこられたのが中学校に上がる時。


中学校生活の中でもたくさんのお金がかかっていた。


ましてや、私が今の施設には、小学校、中学校に進学予定の子どもが他にも数人いる。


だから私が高校を受験し、高校に進学してしまうともっとお金がかかり、もっと先生に負担を掛けてしまうことになる。




もちろん、行きたい気持ちはある。


SNSでよく見るキラキラした女子高生...


お洒落をしたり、寄り道をしたり...


憧れないわけが無い。



でも、ここにいる時点で、そんな憧れなんか抱いちゃいけないんだ。





天「はぁ...


ため息をつきながら教科書を広げる。


幸い、私は勉強が好きだった。


中学校でも学年の上位にいる。


だからきっと受験せずに働きます、なーんて学校の先生に言ったらびっくりするんだろうな()


受験はしなくても、勉強したことは無駄にはならない。きっといつか役に立つ。


そう思い、毎晩遅くまで勉強をしてる。





カチッコチッ


天「んんっ。あ、寝ちゃってた...。」


今日は何だか疲れてたようで、机に突っ伏してうたた寝をしてしまった。


バサッと肩から何かが落ちる。


天「あ...タオルケット...


きっと、先生がかけてくれたんだろう...


天「げ。もう2時じゃん。そろそろちゃんと布団で寝ないと...



そう思って立ち上がった瞬間。


施設の入口の門をさっと乗り越える影が見えた。


天「え。何!?泥棒!?」



私は廊下に置いてある箒を握りしめながら、玄関まで音を立てずに向かった。




すると玄関ではフードを被った人がゴソゴソと何かをしていた。


暗くてよく見えないが、あの華奢さは男の人ではなさそうだ。


?「ふぅ...


スっと立ち上がったその人は、ひとつ息を吐きながらフードを取った。


天「わぁ...きれい...


月明かりに照らされたその女の人の横顔はとても美しく、思わず声が出てしまった。


?「誰?誰かいるの?」


さっと身を隠し、どうかバレていませんように、と祈る。


バクバクと心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかってくらい大きくなる。


?「猫やろか?まぁええか。そろそろ戻るか。」


そう言うとその女の人は、まるで猫のように物音を立てずに去って行った。


天「はぁ...助かった...


極度の緊張から解放されたせいか、どっと眠気が襲ってきてしまった。




ペチペチ

?「.....さん!!」


天「わっ。何!?」


綺「天さん、なんでここで寝てるんですか?」


天「え、なんでだっけ?」


綺「寝相が悪いにも程がありますよ!!」


松「夜中に寝ぼけて冷蔵庫漁ってたのはどこのどいつだっけー?」


綺「さ、さぁ?なんの事ですかね?あ、先生!!天さん起きたよ!」


先「おはよう。天ちゃん。」


天「...おはよ。」


松「ねぇねぇ、その箱なんだったの?」


天「箱...?」


綺「はい!玄関に昨日までは無かったダンボールが置かれていたんです!!」


天「...ダンボール...はっ!!」


一瞬にして昨日の夜中のことを思い出した。


先「わぁ...これは...


綺「なになにー?わぁ!!服だぁ!!」


松「見てー!天ちゃん!!バックとかランドセルもあるよ!!」



なんと、ダンボールの中には沢山の服やおもちゃ、通学カバンやランドセルまで入っていた。


私も覗き込むと、茶色い分厚い封筒を見つけた。


中にはお金。


そして



みんなのために使ってください。子どもたちの未来が笑顔で溢れる明るいものでありますように。



という手紙が入っていた。



先「誰かしらねぇ...こんなに沢山...。貰っていいのかしら...。でも、本当に助かるわ。ありがたくいただきましょうかねぇ...。」



この場には、きらちゃんや松田ちゃんたちの、そして先生の、心からの笑顔があふれていた。


そしてこの日から、こんなに沢山の人を一気に笑顔にした、昨夜の女の人の顔が忘れられなくなっていた。




そうこう思い出しているうちに目的地に着いた。



天「...と。今日の寄付先はうちか()間取りとかは分かってるし、サクッと置いて帰ろっと。」




その油断が命取りとなった。




天「...グッ!?」



門を飛び越え着地した瞬間、突然背中に衝撃が走り、地面に押さえつけられる。



?「動くな。」



クソっ!警察につけられてたのか!?


いや、そんなはずは無い。痕跡は残してないはず...


半ば強引にフードを取られ、咄嗟に顔を背ける。


ここまでか...




しかし上から聞こえてきたのは、聞きなれた声だった。




?「はぁ...やっぱり天か...。」




天「え?夏鈴?」