ひかるside





無我夢中で夏鈴のことを助けた。



だから、私が触れるとパニックになってしまうことも忘れ、すごく久しぶりに夏鈴に触れてしまった。



パニックになるのを恐れ、急いで離れようとしたのに、私の大好きな、懐かしい匂いが離してくれなかった。



しかも頭の上から聞こえてきたのは










夏「〝ひかる〟」









いつぶりだろうか



もうずっと呼ばれてなかった



大好きな声で呼ばれる私の名前だった。







「え夏鈴なんて



夏「ひかる。私の愛する人の名前だよ。」



「か、りん



夏「ひかる。今までごめうおっ!!」



「わぁぁぁぁん、夏鈴、夏鈴、夏鈴!!」









保「ちょっと!!さっきおっきい音したけど大丈夫な



武「ひかる!落ちたん、っぶっ。ちょっほの、急に止まらんでや!って、え、ほのなんで泣いてるん?」



保「だってだってあれ!」



武「ひかると夏鈴が抱き合ってるだけや

ん!?抱き合ってる!?」



保「夏鈴ちゃん!もしかして!」



夏「あ、ほの。今までたくさん支えてくれてありがとう。思い出したで。」



武「私は!?私の事は!?」



夏「もちろん、ゆいちゃんのことも分かるよ。」










夏「そしてこの子は夏鈴の大切な人。夏鈴の恋人。〝ひかる〟や!」

















BACKS LIVE 2日目



夏「ふぅ。」



「夏鈴。」



夏「ひかる。」



「どうしたの?」



夏「ん。このVTR終わったらあと4曲。夏鈴のDead endやなぁって。」



「緊張してるの?()



夏「してないって言ったら嘘になるかなぁ。」



「大丈夫。夏鈴なら。ファンの皆さんもびっくりして喜んでくれると思うよ!」



夏「うん。」



「それに昨日の夜もライブの後、一緒に踊ったじゃん!すごく楽しかったし、夏鈴なりの解釈のDead endでよかったよ!」



夏「まあ、ひかるが色々考えて大事にしとる表現の仕方に近づけすぎるのも、ひかるに失礼やと思ったからでも、昨日も一昨日も一緒に寝てない。」



「それは、急に環境が変わるのもよくないかなぁって話したんじゃん。今日は一緒にお家に帰るんだから、安心して思う存分踊っておいで!」



夏「ひかるにそう言われたら安心した。がんばる。




     あ、ひかる。いつもの。」




「うん。もちろん!」





そう言って私たちは握手をする。





夏「よし!行ってくる!」



「行ってらっしゃい!!」








握手した手を握りしめながら、日に日に可憐に逞しくなっていく最愛の彼女の背中を見つめる。







あの日。



夏鈴がいなくなった日。



目の前が真っ暗になった。



初めて夏鈴に拒絶された日。



絶望を味わった。



何度も何度も夏鈴が記憶を無くす前に戻りたいと思った。



この手を離さなければよかったと後悔した。



もう自分たちには夜明けなんか来ないと思った。



でも



過去になんか戻れないし



過去にすがったってしょうがない。



未来に向けて〝今〟をどう生きるかが大事だ。



そう教えてくれたメンバーの支えもあって過去と未来が繋がった。





もう決して離すもんか。










〝この手を〟









Fin