ひかるside
保「ひぃちゃん!あけおめ!!」
由「今年もよろしくね、ひかる。」
「あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」
由「ごめんね、突然押しかけて。」
保「帰省しちゃった子が多いから寂しくて来ちゃった!」
「ありがとう。私も暇してたから…。あ、夏鈴の写真ありがとう。元気そうで良かったよ…」
由「今日はその事もあって来たんだ。」
「え?」
保「ひぃちゃん。最近、夏鈴ちゃんのこと避けとるやろ。」
突然真剣な雰囲気になった。
2人の目もさっきと違って鋭くて…。
職質を受けてる気分ってこんななのかなぁ。
「い、いや…。そんなことは…」
由「いや、どう見ても避けてるから。すぐ楽屋から居なくなるし、居たとしてもだいたい夏鈴ちゃんと対角線上で誰かの物陰に隠れてる。」
保「2期生で集まってる時も、ひぃちゃんだいたい1期生さんの所に逃げるように話に行ったりとか、自動販売機のところ行ったりしとるやん。なんで?菅井さんがゆーてたやん。〝いつも通り〟の日常を作るのが記憶を戻すために…」
「2人になにがわかるん!!」
突然私が大声を出したもんだから、2人の目が大きく開かれる。
それでもお構い無しに私は続けた。
「2人に私の気持ちのなにが分かると?〝いつも通り〟の日常?私から突然いつも通りの日常が奪われて。ずーっと一緒に居た、隣に居た人が居なくなって。居なくなっただけならまだしも、私の事を全力で拒否されて!!」
「…由依さん…。あの日…夏鈴がいなくなった日。いつも通り…いつも通り握手をしたんです。〝また後で〟って言ってわかれたんです。」
「…なのに。その〝後で〟は、最悪の形で来たんです。夏鈴が見つかってほっとして、帰ってきたんだって思って〝いつも通り〟手を…夏鈴の手を握った。」
「けど目を開けた夏鈴に、その手を…思いっきり振り払われた。拒絶された。物を投げつけられた。化け物を見るような目でこっちを見るんです…。あの夏鈴が!!」
「2人はそんな状況になって耐えられますか?笑って〝いつも通り〟を作れますか…?それに、その後夏鈴が倒れた原因は私です。あの時私が目を合わせてしまったから。夏鈴のためにも私は近付かない方がいいんd…」
由「それは違うんじゃないかな。」
由依さんが本気の時の低音ボイスが響く。
由「たしかに私がもし、ひかると同じ状況になった時どう動くか、どうなるかは分からない。だけど、第三者からみると、ひかるは、自分が拒絶されることを1番に恐れているようにしか見えない。夏鈴ちゃんを苦しめないため、じゃなくて、〝自分が拒絶されて苦しみたくない〟って気持ちの方が勝ってるようにみえる。」
保「うん。保乃もそう思うよ。」
「ち、ちがっ…そんなこと…」
由「本当はひかるも分かってるんでしょ?」
保「あんな。ひぃちゃん。夏鈴ちゃんは前に進もうとしてるで。」
「夏鈴…が?」
保「夏鈴ちゃん、ひぃちゃんのこと考えたら頭が痛くなるって気づいてた。だけど、痛くなることもわかった上で、ほのにな、ひぃちゃんのこと教えてって言ってくるねん。どんな人で、どんなことが好きで、ダンスにかけてる思いとか、なんでもいいから教えてって。〝森田さんは、私にとってなにか大切な人な気がするから〟って。」
「…」
保「もちろん、何回も過呼吸になったり、頭おさえて苦しみ出したりもした。何回も〝もうやめとこ。〟って提案した。」
保「けどな、〝いやだ、教えて。私は大丈夫だから〟って。」
由「え、そうなの?初耳なんだけど。」
保「はい。夏鈴ちゃんに、誰にも言わないでって釘刺されてたんで。バレたらレッスンに行けなくなっちゃうからって。」
夏鈴が…
私の事を…
由「ひかる。この話聞いてもあんたは何も行動に移さない?何もしないのは傷つきたくないってことの現れだよ。」
保「ひぃちゃん。もっとさ、ジタバタしてもいいんやない?かっこ悪くたっていいんやない?それを補い合えるのが私達他のメンバーなんやから。」
由「夏鈴ちゃんも前に進もうとしてる。他のメンバーも前に進んでるよ。あとはひかる。あんただけだよ。」
「…分かりました。」
パンッ!
自分に気合いを入れるために両手で自分のほっぺたを叩いた。
「そうですね。確かに私は自分のことしか考えてなかったのかも知れません。今1番苦しいのは夏鈴自身だ。〝いつも通り〟を作れるよう、これからは気をつけます!」
保「はあ〜よかった〜!いつものひいちゃんに戻ってきた〜!心配しとったんやからね!」
「ごめんね、保乃ちゃん。ありがとう!」
由「うん。最近のひかるの目、死んでたもん(笑)いつでも頼って!苦しくなったらいつでも言うこと!いつでも支える。」
「はい!由依さん。ありがとうございます。」
保「じゃあ、アイス買ってきたからたべよ〜!ハーゲンダッツ!!由依さんのおごりです!」
「ありがとうございます!!」
由「いえいえ。今年もがんばろうね!」
由「あ、そう言えば、さっき1期生のグループラインに連絡来てたんだけど、年が明けて初めて集まる日、警察が事務所に来るって。夏鈴ちゃんに話が聞きたいって。」
保「そうなんですね!最近、夏鈴ちゃん落ち着いてきましたもんね。」
「思い出そうとしてしんどくならんかな…」
由「そうだね、そうならないとは言いきれない。みんなで支えよう。」
「「はい!」」