平手side
愛「…っとっとっと。ひら、まってまって。疲れてるのは分かるけどまだ寝ないで!ここから逃げなきゃ。一応あいつのこと縛ってはいるけど、いつ起きて何されるか分からないから…とりあえずここから出よう。」
「…ん。そうだね。」
愛「ひら、立てる?」
「うん。一応…った!!!」
立ったはいいものの、歩こうと1歩踏み出した瞬間足を初めとして全身に激痛が走る。
愛「んーやっぱり無理か…よし。ひら、とりあえずこれ飲んで!」
そう言って愛佳はバックからゼリーを差し出してくれた。
愛「ずっと何も食べてないでしょ?いきなり固形はきついと思うからとりあえずこれ吸ってて!で、吸いながら私の背中にしがみついてて!」
「…ごめんね」
愛「こら!またそうやってすぐ謝る!謝らないの!こういう時は?あ…?」
「あ、ありがと」
愛「ふふっ…よし、よくできました!おいで!」
愛佳の背中はあったかかった。
久々に感じる人の温もり…
しかも信頼出来る人の温もり…。
愛佳の背中で揺られながら私はゼリーを吸っていた。久しぶりに口にものを入れたから気持ち悪くなりそうだったが、愛佳の優しい声を聞きながらだったからか、ゆっくりとではあるが全て飲み込むことが出来た。
途中、縛られている男の顔を見たがやはり面識は無く、「こんなやつだったんだ」としか思わなかった。
自分でも驚くほど怒りは湧かなかった。
それほど安堵のほうが勝ってたのだろう…
「うわっ眩しい…外だ…」
何日もの間外の空気を吸ってない。
暑いなぁ…
眩しいなぁ…
こんなにセミがうるさかったのかぁ…
でも…
うれしいなぁ。
愛佳は私が痛くないようゆっくりゆっくり山道を降りてくれた。
「ぴっぴ?」
愛「ん?どした?しんどい?」
「んーん大丈夫。あのさ、今の私の状況のことって、メンバーみんな知ってるの?その…リハとか…今日の本番どうするのかとか…」
愛「いや、詳しく知ってるのは電話してたメンバーだけだよ。犯人たちが天ちゃんを脅してたから。〝誰にも言うなよ〟って。」
「そっか。」
愛「あとここに来る前に聞いたけど、ひらは心身の不調で休みってことになってるらしい。なんか犯人が連絡したんだって。メール見てみて。」
「あ、本当だ。こんなの送った覚えないのに…そっか…。ん?じゃあ、なんで理佐や愛佳は知ってるの?」
愛「それはひらのおかげだよ。」
「わたしの?」
愛「そう。ひら、天ちゃんに〝お姉さんたちを頼れ〟って言ったんでしょ?」
「…あ。」
愛「その言葉が天ちゃんのことも、ひらのことも救ってくれたんだよ。その言葉がなかったらきっと天ちゃんは不安に押しつぶされてだと思う。ひらのおかげだよ。ひら、よくやった!お姉さんになったね!!」
「そっか。ふふっ…よかった…」
愛「ひらも私達からしたらまだまだ末っ子だからね!お姉さんたちをいつでも頼りなさい!」
「ぴっぴ…ありがとう…じゃあさっそくなんだけどお願いがある。」
愛「お!なんなりと!って言いたいところなんだけど、着いたからちょっと待ってね。ほい。ゆっくり降りて!」
「ん。ありがと…ってえ?ぴっぴ、これ!!バイクの免許取ったの?!」
愛「そうだよ!前にラジオでひらを後ろに乗せてPARCOするって話した時に興味持っちゃって(笑)現実にはならなかったけどね…」
「すごいね!かっこいい!」
愛「照れるじゃん(笑)本当はPARCOの登場みたいに後ろに乗っけてあげたいけど、しがみつくのキツイだろうからサイドカーへどうぞ。あ、これは被ってね!」カポッ
そういいながらヘルメットを被せてきた。
愛佳…あの時のラジオのこと覚えてたんだなぁ…
「…ふふっありがとう。」
愛「よし、そしたら病院行こっか!あ、その前に警察に…」
「待って!お願い…聞いて…」
愛「あ、そうだった。どした?」
「あのね、2つお願いしたいんだけど…」
「1つ目はこのまま大阪城ホールまで連れて行って欲しい。」
愛「え…?」