天side
え?
今平手さんなんて言った??
もうステージには立たない??
え?どういうこと?
「ひ、平手さん?冗談ですよね?もう…ステージに立たないなんて…」
て「ううん。本当だよ。この目が冗談言ってるように見える?」
「で、でも…あ!分かりましたよ!犯人に脅されてるんですね!銃とかスタンガンとか突き付けられて!そうですよね?」
て「ううん。それも違う。これは私の口から出てる私のことb…」
「いや!!絶対何かある!!おい!犯人!脅すのはやめろ!!脅されてる、そう言ってください!平手さん!!!」
て「天ちゃん!!!」
平手さんの大きな声でハッと我に返る。
画面越しに平手さんの三白眼で見つめられ、言葉が出なくなる。
て「天ちゃん。聞いて。さっき、一緒に大阪公演一緒出ましょうって言ってくれたのは、本当に心から嬉しかった。ありがとう。だってLIVE楽しいもんね!お客さんも私達も楽しい。」
平手さん…だったら…なんで…
て「ふふっ。今天ちゃん〝だったらなんで?〟って思ったでしょ。だからだよ。ライブって楽しいものだから。」
私の頭の中にはハテナしか浮かばない。
て「私は…私は皆とチームで1つになってパフォーマンスをするのが好き。音楽番組でパフォーマンスした後とかライブ終わりに〝やりきったぁ!〟っていう達成感を味わうと、欅坂で良かったなぁと思うの。でも…」
て「お客さんはそうとは限らない。」
平手さんの顔が曇る。
て「最近見たくないけど目に入ってきてた。私へのコメント。無気力なら辞めろとか、平手、全力でやれよとか。平手がいない方が欅坂は有名になれるとか…」
確かに、平手さんへの風当たりは強い。だってずっと0番に立ち続けてるから…
て「今回のこの一件でゆっくり考えたんだ。私がいない方が大好きな欅坂が有名になるなら私はもうステージの上から身を引こうって。」
「平手さん…それは本心ですか…?」
て「うん。本心だよ。」
そう言って平手さんは私を見つめる。
だったら…
「だったら…だったらなんで…そんな…悲しい顔をしてるんですか?」
て「え?」
本人も気づいていなかったみたいだが、平手さんの目からは涙が溢れていた。
て「…あれ?おかしいなぁ?きっと天ちゃんの無事が分かった安心の涙だよハハ…」
これは平手さんの本心ではない。なんとかこっち側に引き戻さないととギュッと胸が締め付けられた。
て「…だからね、天ちゃん。助けになんか来なくていいから。犯人たちの目的は私がライブに出ないことでしょ?ということはいつか解放してくれると思うし。だから天ちゃんは大阪公演に集中して。私のことはもういいから。」
そんな…
そんなこと言わないでよ…平手さん…
私は平手さんに夢中で私のそばでワナワナと怒りを溜めている人達の変化に気づかなかった。