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共感できる言葉がたくさんあった。

いや、言葉だけでなく、この話のテーマそのものに自分にも重なるものがある、と感じられた。

この本を読んだ人は、誰もが同じように感じる部分があるのではないだろうか。

それは、書き方が上手いのかな、文章もとても読み易いし。


LGBTやジェンダーなどが話題になるときの、時代の流れ、認めないのは時代錯誤・非常識というような表面的な"正論"に大きな違和感を感じていたが、その問題意識に見事に"嵌まる"作品だった。

これがハッピーエンドだったら最後に興醒めしていただろうが、そうではなかった点からも、作者はイイセンスをしているなぁ。


・私は少しずつ気付いていきました。… 世の中に溢れている情報はほぼすべて、小さな河川が合流を繰り返しながら大きな海を成すように、この世界全体がいつの間にか設定している大きなゴールへと収斂されていくことに。
 その"大きなゴール"というものを、端的に表現すると、「明日死なないこと」です。

・多様性、という言葉が生んだものの一つに、おめでたさ、があると感じています。 … 想像を絶するほど理解しがたい、直視できないほど嫌悪感を抱き距離を置きたいと感じるものには、しっかり蓋をする。そんな人たちがよく使う言葉です。

・「繋がり」… どんな人でも同じ悩みを持つ誰かと繋がれたら、きっとずっと生きやすくなるはず

・多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。時に吐き気を催し、時には目を瞑りたくなるほど、自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。

・幸せの形は人それぞれ。多様性の時代。自分に正直に生きよう。
 そう言えるのは、本当の自分を明かしたところで、排除されない人たちだけだ。

・どんなものを持ち合わせて生まれてきたとしても、この星で生きていていいんだと思いたい。… この世界がそういう場所になれば、たとえ人生の途中でどんな変化が訪れたとしても、生きていくこと自体には絶望せずにいられるかもしれない。

・もう、卑屈にすっかり飽きたのだ。
 生きていたいのだ。
 この世界で生きていくしかないのだから。
 …
 それならば、今からでも、生き抜くために手を組む仲間をひとりでも増やしておきたい。
 自分のために。

・ずっと、自分を覗き込まれないよう、他者を登場させない人生を選んできた。その結果、生きることを推し進めていく力を自分自身で生成するしかなくなった。その状態が限界に到達したあの大晦日の日、初めて、自ら他者を求めた。

・あなたの言う現実で、誰に説明したってわかってもらえない者同士、どうにか繋がり合って生きているんです。