突然だが、俺はセレブってやつが大嫌いだ。

「そうそう、あいつら何かうそ臭いよね」

なんて言ってる程度の奴等には俺の気持ちはわからないだろう。
勤続20年、周囲をダメ上司やクズ客に囲まれ年収200万で暮らす気持ちは。

こいつはもう妬みや僻みなんて生易しいもんじゃない。
何十年も生きてるとセレブと言われる連中が
確かに存在することも判って来る。
俺達からすればうそ臭いと思う程の格差が
確かに存在することも判って来る。
だからこそ腹が立つ
こいつは最早義憤だ、憤りだ。

テレビに映るドレス姿のセレブ達に
悪態をつきながら、缶ビールを胃に流し込む。

「レッドカーペットっていうのか?俺もそんなとこ歩いてみてえよ!」

悔し紛れに窓の外に向けてビールの空き缶を投げると
窓の外に怪しげな魔術師が現れた。
魔術師は黒いマントを翻し、

「そんなに言うならお前を
レッドカーペットにしてやる!サンダーッ!!」


と、叫んだ!
同時に、雷鳴が天空に轟いた。

「ちょっと待て!誰もそんなこと言ってないだろ!」

自分の叫び声に驚いた俺は、馴染んだセンベイ布団で目を覚ました。
と思ったら、見慣れない場所に居た。
やたらと高い天井で漫画で見たようなシャンデリアが輝いている。

「こ、これはさっきテレビで見た場所じゃねえか!
な、なんで?どうなってんだ?」


慌てて俺は体全体を見渡したみた。
そこにあるのは異様な光景だった。
全身が真っ赤なカーペットになっているのだ!

「あの野郎!何でカーペットなんだよ!馬鹿じゃねえのか!」

その時叫ぶ俺の口を塞ぐようにドレス姿の女優が俺の体の上を歩いていった。

 

 

 

 

 

「ま、まあ、これはこれで良いかもしれん…」