月の闇夜に秘められし
亡者の姿を暴かんと
因果なものよと嘆きつつ
己の選んだ道をただ往く
僕(山田)は就職活動中の高校三年生だ。
と言っても手当たり次第に面接を受けたりしているわけじゃない。
ジャンルというか業種は一つに絞っている。
『オカルト、心霊の雑誌書籍の編集者』だ。
最初は進路指導の先生に止められたんだけど、
今じゃ納得してくれている。
それも当然の話でこれ以上僕にピッタリな職場は無いだろうからだ。
小さい頃から霊感の強かった僕は様々な超常現象に出会ったきた。
だからと言う訳ではないかもしれないけど、
オカルト関係全般への関心も強く小中高どの学校でも
『超常現象なら、山田に聞け!』
等と言われてきた。
あ、言っておくけどバカにされてた訳じゃないからね。
確かに日々を当たり障り無く無難に生きようとする
大多数の人間にとっては僕のように
一つの道を究めた人間は格好の標的だろうからね。
でもそうはならなかった。
きっと話術や文章の構成力、人としての魅力もあったということだろう。
『面白く、興味深い話をする』
クラスや周辺ではそんな風に認識されていたと思うよ。
この評価は無知な学校の連中からだけじゃない。
所属している幾つかの怪談やオカルト系サークルのメンバーからもだ。
言ってしまうのは気が引けるけど、
サークルの人達は知識は有るんだけど独り善がりな傾向が強いんだ。
だから僕のように人に聞かせる事を考えて
文章を組み立てる人間が目立つんだろうね。
そんな感じで早くから自分の才能に(もちろん努力の賜物だけども)
気付かされていた僕は、この道でこの業界で生きていこうと決意していた。
この決意を聞いた進路指導の先生は今では応援してくれている。
編集の仕事で修行を積んで、作家になったら作品を買ってくれるらしい。
とは言え高卒の就活は甘くは無かった。
出版不況は思ったより深刻らしく、
新たに超常現象関連の編集者なんて
雇ってられないという会社ばかりだった。
「もう、後戻りはできないな…」
面接会場の扉の前で呟く。
ここはオカルト雑誌『モー』を出版する会社だ。
めぼしい所は面接に行き尽くした。
これがラストチャンスだ…
ここが最後になったのは偶然じゃない。
面接の優先順位が一番低かったからだ。
理由は…まあ、解るよね。
でも努力次第だ、ここからでも這い上がってみせる!
心を強く持って扉をノックした。
「そのサークルではどのような活動を?」
「そこでは怪談の発表を中心に…」
こんな感じで淡々と面接は進行していった。
面接官も僕の知識と受け答えの的確さに舌を巻いているようだ。
手応えを十分に感じていると、面接官はとんでもない事を言い出した!
「コッチ系の知識が凄いのはわかったけど、
何て言うか、一般的な知識とか常識も欲しいんだよね。
ほら、そういうのも無いと広い視野で
イイ記事を書くってできないと思うんだ。」
た、確かに就活のハウツー本でそんな内容書いてたけど…
その通りなんだろうけど…
それをお前らにだけは
言われたくねえんだよ!

