日本にもUFO多発地帯なるものが存在する。
場所を詳しく紹介することは出来ないが、
今、UFO研究科の矢追純二(仮名)がそこに訪れている。
目的は、ハッキリとUFOの存在を
知らしめる写真、及び映像を撮影すること。
そうでもしないと研究家としての立場が無くなってしまう。
毎年、大晦日のテレビ特番で否定派とのトークバトル。
何を言っても、結局はハッキリとした
証拠を持って来いと言われて負けてしまう。
「ハッキリとした証拠があれば、
それはもう未確認飛行物体じゃないじゃないか!」
そんなグチをこぼしながらも、
彼は確固たる証拠を得る為に、
誰も居ない山奥で三回目の夜をむかえていた。
「今日は静かだな……」
今夜は何かが違った。
動物たちの鳴き声はおろか、昆虫の鳴き声もしない。
何かが起きるかもしれない。
彼は、ビデオカメラのバッテリーチェックをして、その時を静かに待っていた。
「プラズマかぁ……そうかもなぁ」
昔、UFOといえば宇宙人の乗り物というのが、絶対的な説であった。
彼も小学生時代に、そんな本を読んで育ったのだ。
今もその説を唱えている。
ところが現在、某大学のO教授が世に出て来てからはプラズマ説が有力だ。
そのせいもあって、負けず嫌いのUFO研究家は、それを逆手にとり
「UFOの飛行原理はプラズマを利用している某国の秘密兵器だ」と訴えている。
だからそんな弱音が出てしまうのだ。
が……正直、彼にはそんな事はどうでもよかった。
「研究家としての立場」がどうのこうのなんて嘘、嘘、嘘。
そんなのたてまえだ。
テレビで否定派に馬鹿にされたって、
出演料さえいただければ全然構わない。
とにかく、確固たる証拠、すなわち絶対的なUFO映像。
それが欲しい。
結果的に、O教授の言うようにUFOが全てプラズマだったとしても、
他の研究者の言うように飛行原理に
プラズマを使用している某国の秘密兵器だったとしても……
そのUFOと呼ばれる飛行物体の撮影に成功すれば、
それまでの研究は台無しになるかもしれないが、
「誰も否定出来ない完璧な証拠を撮影した人物」として賞賛されるだろう。
それよりも、映像や写真の使用料や、
当然執筆するであろう関連書籍の売上で、
子供や孫にまで財産を残す事ができる。
いや、実際に撮影に成功すれば、そんなレベルでは済まないだろう。
今年で67歳。
そりゃ、宇宙人の有無なんてどうでもいいに決まっている。
いつしか、金の亡者に変貌してしまっていた。
が、UFOの存在を切望している彼の心の迷いはないし、努力も惜しんでいない。
そして、神はそんな一途な人に一世一代のチャンスを与えてくれるものなのだ。
なんと、彼の目の前にUFOが現われた。
距離にして100mほどだろうか。
オレンジ色の光を四方に激しく放ちながら、高速回転しているようだ。
無音だ。
彼はビデオカメラを回そうとした。
が、EM効果(UFO専門用語 : 電磁波障害)のせいだろうか、電源が入らない。
しかし、彼は研究家だ。
そんなのは想定内だ。
彼はそんなこともあろうと、昔ながらの16m/mフィルムカメラを回し始めた。
デジカメでなく、フィルム使用の一眼レフカメラのシャッターを切りまくった。
「す、凄い……こんなにハッキリ撮影されたUFOなんて……
もう未確認じゃない。
確認飛行物体I・F・Oだよ!!!」
70近い男性が、嫁も子供も孫もいる男性が、
そんな馬鹿なことを大声で叫びながら撮影する価値は間違いなくあるだろう。
彼の頭にはもう勘定出来ないほどの福沢諭吉が舞っていた。
UFOはドンドン彼に近付いてくる。
なにやら意志でも持っているかのように近付いて来た!!!
そして彼は決定的な何かを見た!
「そ、そうか! UFOって実は……ジュッ!!!
彼はカメラもろとも一瞬にして蒸発した。
UFOの正体はプラズマだったのか、
それとも、プラズマを飛行原理に利用した某国の秘密兵器だったのか……
彼が蒸発してしまった今、何もわからない。
ただ、プラズマが使用されていた可能性は高そうだ。
なぜなら、プラズマは時として、超高温(1億度とも言われる)に達するからだ。
しかし、それも可能性が高いというだけで、確固たる証拠は無い。
UFOは、未確認のまま、現在も何処かの空を飛んでいる。

