ネッシーやオボコボもいいけれど、
やっぱり日本人にとって、
古くから慣れ親しんでいる幻の生物って、
実は近所の池や沼の主じゃろ?
ワシは、この池の主じゃ。
人間からは鯉と呼ばれとる。
100年以上も生きているから、全長は2m程かのぉ。
何度も何度も、釣り人に勝負を挑まれたもんじゃよ。
若い頃は、よく奴らの釣りバリをワザと喰らって、
引っ張りあいをしたもんじゃ。
糸を切ったり、ハリを伸ばしたり、
調子のいい時は竿を折ったりもしたのぉ。
一番面白いのは、ワザと釣り上げられそうになって、
釣り人が網ですくおうとした瞬間に糸を切ってやるんじゃ。
その時の、釣り人の悔しそうな顔は、たまらなく面白い。
しかし、今はもう……誰もがワシを忘れてしまったようじゃ。
最近は、この池も外来魚が増えておる。
釣り人も、年齢層が低下して、マナーも酷くなってきとる。
ルアーは池の中のいたるところに漂っているし、
池の周辺には糸や空き缶などのゴミが散乱している。
と、ワシは閃いた!
(ワシの存在を、再び世にアピールすれば、
この池にも注目が集まり、
池の美化も考えてくれるのではないじゃろうか?)
……と。
ワシは、ワシを育ててくれたこの池に、少しでも恩返しがしたかった。
そして、老体にムチを打って、数十年ぶりに釣り人とファイトする事にした。
狙いは……そうじゃな、珍しく鮒を釣りにきているあの少年の仕掛けじゃ。
ワシは、すーっと少年の仕掛けに近づいた。
まだ素人のようじゃった。
餌が鮒たちのいる層に達していない。
ま、こんな素人の餌を喰らうのはどうかと思うが、
これもこの池を蘇えらせる為じゃ。
バクッ!
ワシは餌を喰らうと、直ぐに姿を見せ付ける為にジャンプした。
来ていた釣り人全員の目に、焼きつく程にっ!
「すげーっ、デカイよ!」
「2mぐらいあるんじゃないか?」
「池の主じゃないのか?」
子供達の驚きと喜びの交じった声が聞こえる。
(よ~し! もう少しサービスしてやろう!!)
ワシは、もう一度大きくジャンプしようと勢いよく泳いだ。
そして、見事なジャンプ!!!
少年の釣り糸も、これで同時に切る!!!
……が、釣り糸が切れたと同時に、大変な事態が起きてしまったんじゃ!
ゴキッ!
ワシの背骨が折れてしまったんじゃ。
そして、身動きのとれなくなったワシは池の底へと沈んでいく……。
この先、池がどうなるのか、もう、ワシにはわからん。
ただただ、この池が、今以上の自然環境になることを祈るばかりじゃ……
ゴボゴボゴボ

