私、純といいます。
26歳のOLで、都内で独り暮らしをしています。
スリーサイズとかは秘密です。
ですから、「巨乳ですか?」とか「貧乳ですか?」
等の質問も一切ノーコメントです。

たまに「巨尻ですか?」なんて問い合わせも頂きますが、
私のバストやヒップの大きさ、色、形、艶が、
今から語る出来事になんの関係がありましょうか……。

真面目に聞いて下さい。

みなさん、「小さなおじさん」って知ってますか???
よく、的場浩司さん、渡辺徹さん等の
芸能人の方が目撃したとか言ってますよね。
噂では、妖怪、幽霊、宇宙人がその正体ではないかと言われています。
また、妖怪研究家・山口敏太郎さんは
「レビー小体型認知症」による幻覚と指摘しています。

でもハッキリ断言します。
「小さなおじさん」は実在します!!!
私、冒頭で「都内で独り暮らし」って言ったけど、
厳密には「小さなおじさん」と同居しているんです、半年ほど前から。
あ、勘違いしないで。
「同居」よ。
「同棲」じゃないからね。

「小さなおじさん」はね、噂どおり身長10cmぐらい。
頭は禿げてて、やっぱり緑のジャージを着ている。
口がいつも半開きで、なんかフニャフニャしてて左右に揺れている。
でも、特に何をするワケじゃない。
私の生活を覗いている様でもない。

考えてみたら、私みたいなOLの独り暮らしなんて、
中年のおじさんなんか興味津々だと思うんだけど、
ホントにお互い干渉せずにそれぞれの生活をしている。
ってか、いつも何をしてどんな生活をしているんだろ???

時々、散らかしたままの机が綺麗になっている時がある。
小さいおじさんだから、小さいモノしか片付いていないけど(笑)。
そんな時は、小さく切った果物やお菓子を皿にのせてから眠りに付く。
朝起きると、皿の上の食べ物は綺麗に無くなっている。
二人が接するのは、そんな風に間接的でしかない。

ただ、ひとつ困っている事がある。
おじさん……腋臭がキツイの。
かなりキツイの。
実はその臭いがキツイから、覗かれていない、って言えるのよ。
もしお風呂やトイレを覗きに来たら、その臭いで直ぐにわかっちゃう筈。

それぐらい、わかりやすいぐらいキツイの。
おじさんの体調も左右するんだろうけど、部屋にいるのが苦痛な時もあるわ。
だから消臭スプレーは欠かせない。
会社から帰宅して、下駄箱の上にある
消臭スプレーを部屋に散布するのが日課だ。

ある朝のことだった。
あまりの腋臭に私は目を覚ました。
そしてトイレに駆け込み嘔吐した。
過去最高大の腋臭だ。
朝から臭う事は珍しい。
おじさん、体調が優れないのかしら???

私は眠気眼のまま玄関に行って、消臭スプレーを手にした。
そして、部屋中にくまなく散布した。
やりすぎたのだろうか、昨日あけたばかりのスプレーを空にしてしまった。
空になった缶をゴミ箱に捨てて、私は朝食を抜いて逃げる様に部屋を出た。

そして夕方。
いつもの様に帰宅した。
鍵を開け、玄関を少し開いた瞬間、部屋から臭いがもれて来た。

(うわっ、まだキツイみたい)

と、同時に思い出した。

(しまった!今朝、使い切ったんだっけ???)

私は大きく息を吸った。
そして息を止めてからドアを開いた。
消臭スプレーのストックは洗面所だ。
私は急いでハイヒールを脱いだ、と、不思議な光景を目にした。
使い切った筈の消臭スプレーが下駄箱の上に置いてある。

「??? ……おじさんが用意してくれたの???」

でも、缶はおじさんよりも大きく、当然重い。
運べる筈が無い。
私は思わず呼吸を止めるのをやめた……
キツイ腋臭が鼻腔をくすぐる……いや、違う。
腋臭じゃない!?

「これ死臭よっ!!!」

私は大声で叫んだ。
そしてすべてを悟った、その事の重大さを!!!
私はゴミ箱に駆け寄った。
今朝ゴミ箱に捨てた消臭スプレーの缶を拾い出した。
……うなだれてしまった。

 

 

 

「さ、殺虫剤……。」

おじさんは、この部屋のどこかで殺虫剤にやられて息絶えたのだ。
きっと、おじさんは病気で寝込んでいたのだろう。
だから腋臭が酷く、部屋に充満していたんだ。
そこへ私が殺虫剤を散布した。
おじさんは、逃げたくても逃げれなかったんだ……。
私は、私は……なんて取り返しの付かない事をしでかしてしまったのだろう。
私の頬を涙がつたった。
涙が、涙が止め処なく流れて来た。
ただ、死臭もとてつもなく酷かった。
だから、消臭スプレーを散布してから泣き続けました。

おじさん、さよなら。