……それは、江戸時代に流行した怪談会である。
百本の蝋燭をともし、怪談を一つ語る毎に一本ずつ消していく。
そして、最後の一本、つまり百話を語り、
百本目の蝋燭を消した時、怪異現象が起こると伝えられている……。

制作集団 真美漢 : 代表 真美漢


僕の名前は、呪田凶介(のろいだ きょうすけ)。
華のセブンティーン!
怪談大好きの男の子だ。
さて凶、いや今日は、とある寺を借りて開催された
「百物語の会」に参加することになった。

もともと、こういった会に参加するのは大好きだが、
今回に限り抵抗があった。
なぜなら、僕は今まさに女の悪霊に憑依されているからだ。
しかし、友人に誘われて仕方なく参加している。

黄昏時から始まった会。
もう丑三つ時。
しかし、正直言ってこの会で語られる話はどれも退屈だった。
何処かで聞いたことのあるような……そんな話ばかりだからだ。
三度の飯より怪談が好きな僕の方にも、問題があるのかも知れないが……。
こんな生ぬるい会で、震えている女性参加者がうらやましい。
しかし、ハッキリ言って僕の語る怪談は、震えるだけではすまないかもしれない。

なぜって?
僕の語る怪談は、今僕が体験していることだからさ。
そしてそれは恐ろしいのだ。
現在進行形なのだ。
そんな僕が百話目を語り、最後の蝋燭を消す役目とは……。

こりゃ、何も起こらない方が奇跡だ。
何が起こっても……僕は責任をとれない。
しかし、時は待ってくれない。
今、九十八話目が終わった。
また、くだらない話だった。
もう、いい加減に止めてくれないかな。

ドイツもコイツも、“稲○淳○”氏の受け売りなのだ。
僕は“○川○二”氏の大ファンで、ライブにも足を運んで、
CDもVTRも本も全部持っているが、そのモノマネはノーサンキューだ。

おっと、グチっている内に九十九話目が始まった。
もうすぐだ。
もうすぐ、ここにいるみんなが震え上がる時が来るぞ!
しつこいようだが、それだけ僕の話は、お、恐ろしいのだ!
か、語るのも、お、恐ろしい……。

ひょっとしたら、みんなにも悪夢の毎日が訪れるかもしれない。
それぐらい恐ろしいのだ。
ホラッ、見ろ!
アソコにいる。
女の悪霊だ!!
毎晩僕の眠りを邪魔するんだ。
お陰で、何時も寝不足。
ここ数ヶ月、まともに眠ったことなんかない。
眠りにつくと、アイツが起こすんだ。
しかしそんなのは序の口だ。
恐ろしいことをする!
…………。
……。

そしてついに、その恐ろしいことを話す時がやってきた!
僕の番がやって来たのだ。
みんなの視線が僕にそそがれる。
ついでに女の浮遊霊の視線も……。

「そ、それじゃ、僕の話を聞いて下さい……」

気を取り直し、僕は語ろうとした。
しかし、ホントに恐怖の話というモノは語れないモノである。
口が重い。
ついでに肩も重い。
嗚呼、ついに語るのか!?
ホントの恐怖を!!
もう、どうなっても知らないぞ!
……しかし!

「あ、あのぉ、みんな、やめにしないか?
やっぱり僕の話は、まっこと怖いから、
き、聞かない方がいいと思うんだ……。」


……僕はこうしか言えなかった。
しかし、みんなは……、

「そんな前口上はいいから、早くしろよ!」

「早く、恐がらしてくれよ!」


と、これだけ僕が、みんなのことを思って話すのをためらっているのに、
みんなは急かす一方だ。
うっ、カンのいい奴が、何かを感じているようだ。
僕の周囲を嫌な顔で見ている。

(やはり話さない方が良い!)

僕はそう思った。
しかし、鈍感な奴はそれを許さない。
みんなのためなのに!
本当に怖いのに!
もう、悪霊が目前にいるのに!

 

 

 

「いい加減にしてくれ!
俺の語る怪談は、
君たちのくだらない、
しょうもないインチキ怪談と違って、
本当の恐怖の怪談なんだぞっ!」


一瞬、みんなの目が変わった……。
僕の今の言葉が、みんなの怒りを買ったらしい。
ホントのことを言っただけなのに……。
僕、一体……どうなる……?

ボカッ!ドスッ!ボカボカッ!

こうなるわなぁ……。