「春画」とは、江戸時代に「性」をテーマに描かれた絵画である。
内容が内容だけに、表立った売買はされていなかったが、
裏では高値で売買されていたようである。
それゆえに、色使いが贅沢で、素晴らしい絵が揃っている。
しかし、一般的には、「春画」はただの「昔の裏本」という認識しかない。
ゴッホ、ドガなど日本でも有名な海外の芸術家も、
「春画」に少なからず影響を受けているのに、だ。
「春画」を知らずして、日本の芸術は語れない!
制作集団 真美漢は、このかけがえのない日本文化に挑戦してみようと思う。
制作集団 真美漢 代表:真美漢
その「春画」は、所持している者に不幸を招く「呪いの春画」と呼ばれている。
どんな呪いが降りかかるのか?
それは誰も知らない。
当事者全員が、みな口を閉ざしているのだ。
構図的には、男と女が激しく交わっているごくごくノーマルな作品。
一体、何があるというのだろう。
専門家は言う。
「多分、この作者は童貞で一生を終えたのでしょう。
そして、隣の夫婦を覗いてマス(自慰行為)をかきながら、
絵を描いていたのではないでしょうか……」
なるほど、その性交経験の無い名も知れぬ、無名の作者の、
「性交」に対する凝り固まった執念が、この「春画」を一級品にしているのだ。
その証拠に、男と女の秘部が、まるで脈打っているかの様に、
まるで糸を引いているかの様にナマナマしい。
だからこそ、見ている者の心を鷲掴みにするのだ。
そういう私も、勿論、鷲掴みされてしまった。
(一生、童貞だなんて……)
私は65歳。
今は盛んではないが、若い頃は盛ん過ぎて「息子」の乾く暇などなかった。
私がその「春画」にこだわるのはソコだ。
私とは全く違う境遇の者が、何を見て、何を感じたのかを、
その「春画」から感じてみたかったのだ!
所詮、「交わり過ぎた非童貞」には、「一生交えなかった童貞」の気持ちなど、
微塵もわからないのかもしれないが……。
とにかく、どうしてもその「春画」を手に入れたい!
何を隠そう、私は世界的に有名な美術品コレクターであり、資産家でもある。
手に入れられないモノは何もないのだ。
えっ!? 「呪い」???
……確かに、気にならないと言えば嘘になる。
だが、過去の持ち主たちが「呪い」で命をおとしたという事実は無い様だ。
命をとられるワケじゃないなら……多少のリスクは仕方あるまい。
間もなく、その「春画」が出展されるオークションが開催された。
勿論、私が落札した。
そして、「春画」が届けられたその日、私は早速寝室に飾った。
(なんて素晴らしい絵なんだ!
こんな絵に呪いをかけてもらえるなら、それも悪くない!)
私の偽らざる本音だ。
しかし、本当に「呪い」がかかる事など……この時の私は思いもしなかった。
それは夜から始まった。
なぜか寝苦しい夜だった。
例えるなら……そう、「息子」の乾く暇などなかったあの時代。
一度だけ足を骨折し、入院したことがあった。
その時、担当になった淫靡な看護婦さんと、
毎日毎日、妄想の中でまぐわり続けていたのにマスのひとつもかけなかった。
嗚呼、あの病院での過酷な夜に似ている。
そして、どれくらい時間が過ぎたのか……
なぜか半分勃ちながらも、ようやく眠りについたその時だった。
なんと、色とりどりの大小様々な男性と女性の秘部が、
「春画」の中から飛び出してきたではないかっ!!!
秘部たちは、布団で横になっている私の周囲をグルグル、グルグル漂っている。
しかも、それらは独特な臭いと、分泌物を撒き散らしながら交わり始めたっ!!!
「ああっ!!!」
私の秘部は、思春期の男の子の様に、たくましく、
はちきれんばかりに、そしてただただ無性に神々しくそそり立った!
私は他人の性交行為を覗いているかの様な、
いや、自分自身が性交行為に没頭している様な、妙な気持ちになってきた。
「クソ~、心の底から感じちゃってるよぉ~!」
夢とも現実とも判別のつかない、濃厚かつ、恍惚的な時間。
私の魂は……快楽の園へ旅立った。
翌朝。
私は「夢精」した。
(……こ、これが「呪い」だったのか。)
な、なんて屈辱的な。
名も知れぬ作者の気持ち……そんなモノ、もうクソ喰らえだ!
私がその「春画」を売り払ったのは言うまでもない。

