タクシーにまつわる怪談。

誰でも一度ぐらいは耳にしたことがある怪談の定番中の定番。
しかしこの怪談が、実はずっと昔から進化を繰り返し、
今もって体験者が多発している「事実」である事を知っている方は少ない。

自動車が無かった時代、この怪談はタクシーの代わりに馬であったという。
つまり、ある旅の男が、一人でポツンと立っている女を

気の毒に思い馬に乗せてやる。
と、その道中で女が消えてしうのだ。
しかも、ご丁寧に鞍(くら)を濡らして……。

また、現在語られているタクシーにまつわる怪談は、

運転手の方が幽霊であったというものである。

さて、今から紹介するのは、新しいタクシー怪談になる可能性を秘めた報告である。
心して読んでいただきたい。
(制作集団 真美漢 代表:真美漢)
俺は硬派だ。
硬派なタクシードライバーだ。
佐久川拓哉、35歳、独身貴族。
一部の隙も無い京都一の硬派なタクシードライバーと自負している。
え!? どれくらい硬派かって???
そうだな、A○B○8……いや、それを含めの

類似グループ全員が裸体で唄い、踊っても、
赤信号を見逃さない、それぐらいの硬派さ!

ただ、それだけ硬派な俺にも苦手なモノがひとつある。
タクシードライバーとして、少しリスクを

背負ってしまっているのかもしれないが、どうしても苦手だ。
いや、苦手というよりは怖い。
そう、幽霊が怖いんだよ。

小さい頃にテレビの特番で京都の深泥池で

タクシーを拾う女幽霊の再現VTRを観て、
それがトラウマになったんだな。
みんなも知ってるだろう?
深泥池で拾った女性客が目的地近くまで来ると消えてしまい、
後部座席がグッショリと濡れていた……って話。

実は京都のタクシー業界では、夜に深泥池で女性客を拾うな、
って暗黙のルールみたいなのがあるとか無いとか……
ま、俺は業界にいるのに、実際には聞いたことが無い。


しかし、何かがあってからでは遅いので、

俺は深泥池方面にはあまり近付きたくはない。
フッ……何の因果か、深泥池の幽霊を恐れる硬派な俺が

京都でタクシードライバーをやってるだなんて……
人生、わからないもんだ。

いや、ホントに人生わからない。
ずっと、避けてきたのに……これからもずっと避けるつもりだったのに……。
まさか、深夜の深泥池にさしかかるだなんて。
こんな時は、何も考えず池を素通りするしかない!!!

ところが、ところがどっこい大作なんです!

池の側に女が立って、俺に手を上げている。
深夜に、しかも20代そこそこの女がひとりでこんな郊外にいるなんて……
これはもう幽霊じゃなかったら、キャッチガールぅ!?

停まろうか、それとも無視するか……
しかし、無視して、その女が幽霊でもなんでもなく普通の女で、
会社に「無視された」なんてクレームの電話でもされたら、

俺の、硬派な俺の、キャリアに傷がつく。

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」

唱えてみたが女は消えない。
唱えたからといって消えてくれる保障は最初から無い。

俺はタクシーを停めた。
同時に後部座席のドアも開けた。
女が乗り込んで来る。

「○×△□までお願いします。」

女は小さく蚊が鳴くような声で囁いた。
ゆ、幽霊かもしれない。

「わかりました。」

硬派な俺は車を走らせた。
硬派だから安全運転だ。
硬派な俺はもう開き直った。
考えようによっては、幽霊を乗せるだなんてこんな奇跡そうそうない。
そうだ。
どうせ目的地周辺で消えて、タダ乗りなんだし、
意味無く座席を濡らしていくくらいなら、い、いい機会じゃないか、
幽霊とやらを、硬派な俺の硬派的な視点で観察させてもらおう。

まず「顔」だ……どうだい、まるで昭和の挿絵師・石○豪人の描く女性のように、
美しく、エロく、艶っぽく、その瞳はどんな男も性の奴隷にしてしまいそうだ。
それに、ピンクの唇なんて、もぉプリン!プリン!としていて、す、吸い付きたくなる!
ほ、欲しくなってきたよっ!!!

それから「胸」。
ほほぉ~かなりの巨乳だ。
いや、しかし、待ってくれ!!!
焦るな!!!
巨乳といっても、悪戯にデカイだけじゃないんだぞ!!!デカイだけじゃないんだぞ!!!
バランス、形、それがすこぶるSEXYなんだ。
いや、あえて英語で表記したんだから、硬派な俺の気持ちも汲んで欲しい。
きっと、バストトップも綺麗で美しく香しいに違いない。


嗚呼、か○うれ○こ、細○ふ○え、雛○明○、佐○江○子、小○栄○、
○EGUMI、磯○さ○か、根○は○み、原○恵、井○和○……etc etc etc
硬派な俺も色々な意味でお世話になったけど、

その誰よりも今日の女はエキサイティングな巨乳だ。
わかってくれたかい?

それに「腰」!
括れてるよ。
佐○寛○や結婚前の熊○曜○もビックリてなもんだい。
もう想像しただけで、淫猥な世界がひろがるってもんですよ、ええ。
あんなに括れちゃって……キュッ、キュッ、キュッ!

「どれどれ、触診してあげましょうか?」

なんて、本気とも冗談とも取れる事を口にしてしまいそうだよ。

次は「尻」だ。
座席に座っているので少しわかりにくいが……
硬派な俺の眼力から察すると……

もう、ボクちゃん、たえりましぇ~~~~~~~~~ん!!!

キキーーーーーッ!!!

「す、すいません、お客さん。つい硬派な私が取り乱してしまって!!!」

硬派な俺はおもわず赤信号を無視してしまい、

交差点の真ん中で車を停めてしまった。
他に車がいたら危ないところだった。
女は無言だった。
硬派な俺もさすがに冷や汗をかいてしまったが、

気持ちを切り替えて再びアクセルを踏み込んだ。

で、話を戻すが、尻はほどよい大きさでキュッと引き締まっている感じがする。
例えば、ビーチバレーの浅○美○、浦○聖○、菅○か○る、

西○健○みたいに健康的な尻に違いない。
いや、この女はそれにプラスして俺のナニを熱くさせる何か……
きっと卑猥な、お下品な何かを兼ね備えているに違いない!!!
ヤバイぜ、ヤバイ、かなりヤバイ!
このままでは、女に主導権を握られるぅ。

さ、クライマックスだ。
沈着冷静に……。
ここで判断を誤ると、これまでの努力が無駄になる。
いくぜ、「ムフフ地帯」!
ココに関しては……もしや……いや、そんな……ええっ!!……
それはちょっと聞いてないよ!……でも少しだけ……そ、そんな風になってるの???
……見ちゃっていいの??? ……えっ!? タッチミープリーズだって???

 

 

 

ああっ、あああっ、

あああああああああっっっ!!!!!

「はぁ、はぁ、はぁ……3,290円です……はぁ、はぁ……。」

硬派な俺は、無事故で仕事を全うした。
硬派な、一部の隙も無い京都一の硬派なタクシードライバーの俺だからこそ成しえたのだ。
一瞬、心を乱されそうになったり、リアルな妄想に我を忘れそうになったが、やはり硬派だった。
硬派だからこそ、女の淫靡で淫乱な色気に惑わされずに目的地に到着したのだ。
しかし、いつの間にか女は消えていた。

キャッチガールじゃなかった。
後部座席も濡れていた。
つまりは幽霊だったのだ。
が、硬派な俺はそれ以上の恐怖を体感した。
それは、硬派な俺が欲情しかけた女の「淫」……まるで「魔物」だ。
ならば、赤信号を無視してしまうのも、仕方が無いってもんだ! 
(無論、開き直っても司法は許しません 制作集団真美漢:談)
硬派な俺が言うンだから間違いない!
太鼓判!!!