会社帰りの事だった。
バスに乗り込むと、最初の異変があった。
私以外に、乗客がいないのだ。
残業のせいもあり、いつもより遅い時間だった事は確かだがあまりに不自然だ。

とりあえず、一番後ろの席に座った。
ふと外を見ると、今にも雨が降り出しそうな空模様だ。
そう言えば、今夜遅くから翌朝にかけて大雨という予報。
家に着くまで降らない事を祈った。

間もなく、運転手が乗り込んだ。
静かにドアが閉まり、バスは走り出した。
当然だが、いつもと同じ道を走る。
特に変わった様子は無い。

と更なる異変に気付いた。
車内放送が無いのだ。
私は不安になり、運転手に話しかけてみた。

「あのぉ……」

運転手は何も喋らない。
私の声が聞こえなかったのだろうか?

「ねぇ、運転手さん!」

私は大きな声で話しかけた。
と、運転手がチラッと振り返った。
一瞬しか見えなかったが、その顔は殺気立っていた!!!

そして、バスを停止させた。
運転手は、ユルリと立ち上がり私の方に身体を向けた。
身の危険を感じた。
小学生の頃、空手を習っていたが……もう恐怖で腰が砕けそうだった。
運転手はそんな私を見て、徐々に間を詰めてきた。
そして、その口を開こうとした。
何を語るんだ!?
 聞かない方が、私自身のためなんじゃないのかっ!!!

「や、やめてくれーっ!!!!!」

 

 

 

 

「お客さん……

このバス、回送なんですよっ!!!
ここで降りて下さい!!!!!」