会社の近所に、よく当たるという女性占い師がいるらしい。
なんでも黒魔術を操り、水晶で未来を見る事が出来るという。
俺の勤める会社のOL連中も、何人かが占って貰い、
的確なアドバイスを授かって幸福を掴んだという。
噂では先月、寿退社した庶務課の高橋女史も、
その女性占い師のお陰だとか……。

俺は別に不幸ではなかったが、
幸福というモノもあまり感じたことがない。
もうすぐ四十路の仲間入り。
そろそろ結婚でもしたいものだ。

そんなある日の夜。
残業で遅くなった俺は、
遅くなったついでというわけではないが、
寄り道をする事にした。

行きつけの飲み屋ではない。
女性占い師の所であった。
女性占い師は、薄暗い私鉄の高架線路下で商売をしているという。
ところが、良く当たるという評判なのに俺以外に客はいない。

「ええ、貴方が来る事を事前に察知していたので、
他のお客様はご遠慮して貰ったのです。」 


俺の心を読み取ったのか、女性占い師はそう言った。

「そ、そうなんですか。」

俺は、この女性占い師なら「信じる事が出来る」と確信した。

「貴方の占って欲しい事柄は、結婚の事ですね。
いいでしょう。
この水晶に、貴方の結婚相手を映し出して見ましょう。」


ここで、女性占い師が顔を上げた。
なんと、年の頃23、4歳の若い女だ。
すこぶるいい女だった。
その吸い込まれそうな、瞳はどこかミステリアスだ。

(うーん、寝てみたい……)

しかしなんだろう、あの目の下にある星型のアザは……?
悪魔との契約の印だとでもいうのだろうか?
欲望を刺激された俺であったが、相手は得体の知れぬ占い師だ。
ここは、自制心を働かせておこう。

「では、占います!」

女性占い師は、静かに水晶を見つめた。
一体、あの水晶にどんな女が映るのだろうか?
俺の大好きな「香○奈」似の女の子だったら、もう何も望まないぞ!!!
いやいや、もし本人だったらどうするよっ、俺っ!
ちょっと待てよ、ここは全然タイプの違う、
まだまだピッチピチの「剛○彩○」でも俺はいいぞ!!!
嗚呼、「AK○48」のメンバーだったら、「秋○康」はきっとビックリ仰天だぞ!!!
それとも……etc,etc,etc。

気になった俺は、その水晶を覗き込んでみた。
すると、ハッキリしないが誰かの顔が映っている。
と、言う事は、最悪でも俺は結婚出来るということだ。
ひとまずは安心だ。
俺は食い入るように、更に水晶を覗いた。
その顔は……な、なんと、この女性占い師だ。

(なるほど、だから他の客を断っていたのか……?)

まぁ、芸能人相手では何かと大変だ!
この女で十分だ YO。
自制心は、おサラバだ!

 

 

 

「今直ぐに、ココで結ばれようぞ!」

欲望の赴くまま、俺は女性占い師に飛び掛った。
(フッフフフ……悪魔と契約してるとはいっても、普通の女性じゃないか!)
燃えた!
先月の風俗より燃えた!!

そして、俺は刑務所にいる。
もしかしたら……俺が水晶で見た女性占い師の顔は、
反対側から水晶を覗く女性占い師のそれが
映っていただけだったのかもしれない……。