20年ほど昔の話である。

大学入試を一週間後に控え、高校三年生・坂口悟は
最後の追い込みに余念がなかった。
目指すは、国公立の頂点である真美漢大学。

しかし、センター試験を、ほぼ満点の成績でクリアした悟には、
向かうところ敵なしといった感じであった。
このまま何も起こらず、無事に二次試験さえ受ければ、
難なくトップ合格出来るであろう。

無論、受験勉強は完璧だ。
この時点で、大学卒業後の出世街道まっしぐらの
輝ける未来も手中にした様なモノだった。
彼は、「人生の勝利者」目前だったのである!

思えば、その為とはいえ、色々のモノを犠牲にしてきた。
今、旬の歌手やアイドルの名前も顔もわからない。
フリーセックスに明け暮れる友人の誘惑も振り切ってきた。
告白してくる女の子もいたが、全て断った。
パソコンやゲームも封印した。

悟曰く、「そんなモノにうつつをぬかす暇があったら、
英単語の一つでも憶えた方が人生の糧になるよ!」である。
「人生の勝利者」になれば、そんなモノは
後から幾らでもついて来る事は百も承知だったのだ。

嗚呼、順風満帆に思える悟の人生……。
しかし、人生何が起きるかわからない!

試験一週間前。
悟はいつも通り、ラジオの「受験対策・英語」という番組を聞こうとした。
正直な所、悟のレベルからいえば、
その番組の内容はあまりにも簡単過ぎる。

しかし、完璧すぎてそれぐらいしかする事が無いのだ。
ところが、今日はちょっと体調がすぐれない感じがしていた。
一日ぐらい聞かなくても、問題はまったく無い。
いや、今の時点で、番組が一回聞けないからといって
焦っている様では、受験戦争に勝てないのだ。

悟はゆっくりと寝る事にした。
すると、とんでもない異変が悟を襲ったのだ!
なんと、ラジオの電源が勝手に入ったのである。
驚いた悟だったが、何食わぬ顔で布団から出た。

何かの誤動作だろうと思ったのだ。
そして、ラジオのスイッチを切った。
が、電源は切れない。
コンセントを向いても同じだ。

異変は更に続いた。
ラジオのチューニングをつかさどるダイアルが、勝手に回りだしたのだ。
あたかもラジオに何者かの魂が宿ったかの様だった。
悟は息を呑んだ。

間もなく、ダイヤルが止まった。
何処かの放送局を受信したのだ。
地獄で苦しむ亡者の叫び声が聞こえてきた。
そして、恐ろしい声がした。

「ヒッヒヒヒ……俺様は死神だぁ。
坂口悟、貴様の魂が欲しいっ!」

 

 

 

それを聞いた悟の心中やいかに! 
しかし、悟は表情を全く崩さずに窓からラジオを投げ捨てた。
そう、受験生には「恋」も「遊び」も、そして「オカルト現象」も不要なのだ。

20年後……そう、今現在。
坂口悟は勿論生きている。
そして、「人生の勝利者」となっている事をここに報告しておく!!!


全国の受験生諸君に告ぐ!
この物語の主人公の様に強くあれ。
受験とは、何事にも動じず、己を信じ、
平常心で取り組んだ者が勝利するのだから……。
制作集団真美漢  真美漢