彼はある重大な決意のもとに岬へと向かっている。
学校からの距離は約十キロメートル。
自転車でも少々遠い距離と言える。

しかし今の彼にはそんなことは全く気にならなかった。
移動にかかる時間も彼の決意を弱めるどころかますます強い物にしていった。

「自殺してやる」

そう、復讐してやるのだ。
貴重な睡眠時間を邪魔したばかりか、
授業中に廊下に監禁したあの教師を許すわけにはいかない。
あの屈辱を奴にも喰らわせてやるのだ。
自らの指導のせいで生徒を死に追いやった教師という烙印を押してやるのだ。

遺書は用意している。
あとは実行あるのみ……。
 
たどり着いた岬は晴れ渡り、波の音は穏やかに鳴り渡っていた。
彼の決断を祝福しているかの様だった。

意を決すると岸壁へと歩き始めた。
さあ、甘美な復讐の始まりだ!
まずは投身自殺の作法通り、靴を脱ぎ、きれいに並べる。
しかし、ここで彼は気付いた!

 

 

「あちゃー、

上履き履いたまんまだったよ!」