コムラーの歴代レンズ。50年代の135mm(ライカL)とコムラノン二世代。手前のはMINOLTAマウントだが、真ん中のニコンマウントのものより現代的なデザインになっている。しかし光学系や重量の変化はない。
50年代から70年代まで一大レンズメーカーとして名を馳せた三協光機、通称コムラー。
極め付けに大判にも手を出していたそうで、業界でも有名だったらしいこの企業。売れ行きは良かったというのに1980年頃の労働争議で突然の廃業。特に他の企業が吸収したり救済してくれた訳でもなく、最後はアベノンというブランドが蛍の命の如く短期間売り出されたのみに終わってしまった。
基本的にコムラーレンズの中古は探せばすぐに見つかるし、元の値段の影響もあるのか他より安いものが多い。しかしその話が通じるのは望遠域のみであり、広角や標準となれば段々と玉数は減り、相場だけは上がっていく傾向にある。よく見かけるのは今回紹介するコムラノン925(90-250mm)とLマウントの135mm。時代が時代なだけにプラスチック部品は少なく、無骨で重厚なデザインは現代のカメラに付けても引けを取らない存在感を示してくれる。流石にカビは生えていたが、描写に大きな影響を与えてはいない…と思いたい。パープルフリンジは少ないように感じるし、流石SLブームに貧乏写真家達を支えただけはある。
今のレンズは大きければ大きい程高級でいい写りをする。しかし40年も遡るとレンズは大きければ良いという訳でもなく、今回のコムラノンといった廉価レンズやローライ35のような超高級小型カメラが生まれていたのである。カメラ沼に浸かるとは、知らず知らずにこういったことに面白みを感じるようになったことでもあるのだ。
日光浴でカビよ消えろ!…と叶いもしないおまじない。でも少しマシにはなるのかも。室内放置よりは100倍マシかな。90-250mmというのは、当時の人(特に撮り鉄)が撮りたいと感じる画角の殆どをカバーしていた。実際、今の白レン(70-200mm)のような感覚で、基本的な写真においてはこのレンズが一本あれば済んでしまうというケースも多い。あとはせいぜい標準域があれば完璧である。
70年代のズームなのにインナーズーム(鏡筒がズームに合わせて伸縮しない)という利点を持ちあわせていながら、その重量はシグマ150-500mmやバケペン300mmに匹敵するのではないかというほど重い。更に折角のインナーズームだが、インナーフォーカスではない。あとめっちゃ細長くてカメラバッグに入るかどうか疑問である。
試写結果。画質こそD7000でも負けていないが、カビのせいなのかレンズそのものの問題か判断しかねるが描写はあまり良くない。でもこれはあくまで1640万画素のデジタルカメラでの話で、当時の実用には耐え得る設計だったと思う。道理で売れたわけだ。ボケは案外良いのかな?撮り方によってはニッコールより良い写りになるのかも。
触ってみるにいかにも頑丈そうでよく写りそうだが、実際はそうでもないことを市場価格が物語っている。ただ、その分撮影地における偉そう感だけは一人前で、今の撮影地にこのレンズを出せば、何も知らない人はどんな高性能レンズなのかと目を輝かせるに違いない。実際は普通のレンズなんだけど(笑)