ぎゅうぎゅう詰めの快速電車に体を押し込まれ、どうにか座席を確保した。けれど海とは反対側の席だ。窓から斜めに差し込む陽射しと、観光客たちのまとった熱気が車内にこもり、発車を待つあいだに首元がじわりと湿っていく。
大きなスーツケースを抱えた若者たちで、車内は身動きもままならない。あとで知ったのだが、1995年に公開された映画のロケ地を巡るため、台湾や韓国からの若者たちがこの沿線を訪れているのだという。夏になれば海水浴客でそこそこ賑わう――その程度の場所だと思っていた無人駅にまで、異国の言葉と色とりどりの服があふれている。
そんな聖地巡礼の光景は、江ノ電の鎌倉あたりでテレビニュースが切り取る特別な混雑の映像の中にしかないと思っていた。でも今日は、普段は快速さえ通過していく小さな駅が、カラフルなダウンを着た観光客で明るく染まっている。
腕時計を忘れてきたことに気がついていた。でも、今日はカメラを首から下げ、あてもなく歩くだけで時間に追われる用事はない。それよりもポケットの中のスマートフォンとカメラのバッテリー残量が気掛かりだった。

















