高次脳機能障害の回復で、僕に一番効果があったこと
先日、ブログに高次脳機能障害の当事者の方からコメントをいただきました。
「どんなリハビリが効果的ですか?」
「良くなるのでしょうか?」
きっと当事者の方が本当に知りたいのは、
「何が一番効果があったのか」
だと思います。
今日は、そのことを正直に書いてみようと思います。
私自身、高校2年生の時の事故で高次脳機能障害になり、41年間この障害と付き合ってきました。
記憶は次々と消えていく。
人には理解されない。
なぜこんなに苦しいのかも分からない。
そんな日々を長く生きてきました。
もちろん、たくさんの工夫もしました。
メモを書く。
繰り返し確認する。
リハビリも試す。
自己啓発も学ぶ。
ポジティブ思考もやってみる。
でも、振り返ると私にとって一番大きな変化を起こしたのは、意外なことでした。
それは、
「人に愛情を注ぐこと」
でした。
大きな変化が起きたのは、障害から24年ほど経った頃です。
妻が切迫流産となり、自宅で安静生活を送ることになりました。
私は半年間、家事のほとんどを担当しました。
料理。
洗濯。
掃除。
買い物。
そして、お腹の赤ちゃんが元気に育つよう願いながら、毎日を過ごしました。
特に料理には力を入れていました。
栄養のあるものを食べてもらいたい。
体に良いものを作りたい。
喜んで食べてもらいたい。
そんな気持ちで、一食一食を丁寧に作っていました。
不思議なことに、その時間は全く苦しくありませんでした。
むしろ幸せだったのです。
相手が喜んでくれる。
笑顔になってくれる。
元気になってくれる。
その姿を見るだけで、自分の心も満たされていました。
今振り返ると、
私はその半年間、
「愛情を注ぎ続けていた」
のだと思います。
そして、その頃から少しずつ脳に変化が起き始めました。
メモを見なければ維持できなかった記憶が残るようになった。
視線を動かしても記憶が消えにくくなった。
私にとっては驚くような変化でした。
もちろん、医学的に証明できる話ではありません。
これは私自身の体験です。
でも今の私は強く感じています。
人に愛情を注いでいる時、
脳はとても良い状態になるのではないか。
心は安心し、
喜びに満たされ、
感謝が生まれる。
不安や恐れではなく、
愛や喜びのエネルギーで動いている。
その状態が、新しい脳神経回路を育てるきっかけになったのではないか。
そんな気がしています。
実際、私は料理をしている時、
「大変だ」
ではなく、
「嬉しい」
を感じていました。
誰かのために生きる。
誰かを喜ばせる。
誰かの役に立つ。
その時間は、自分自身も幸せでした。
だから私は今、
高次脳機能障害の回復において大切なことの一つは、
脳を追い込むことではなく、
心が喜ぶことを増やすことなのではないかと思っています。
好きなことをする。
人とつながる。
感謝する。
誰かを応援する。
誰かの役に立つ。
小さな愛情を注ぐ。
その積み重ねが、
脳にも心にも良い影響を与えるのかもしれません。
私は41年経った今でも改善を感じています。
だから、
「5年経ったから無理」
「もう良くならない」
とは思っていません。
脳には可能性があります。
そして人には愛する力があります。
私にとって一番効果があったのは、
リハビリの技術ではなく、
人に愛情を注ぎながら生きた時間でした。
もし今苦しんでいる当事者の方がいたら、
焦らなくて大丈夫です。
まずは今日、
自分自身にも優しくしてあげてください。
そして誰かに小さな愛情を向けてみてください。
その愛情は、相手だけでなく、
自分自身の脳と心も癒してくれるのかもしれません。

