第5話


記憶が消える脳で生きるということ


視線を変えると、

記憶が消える。


これは本当に大変なことです。


普通の人には、

なかなか想像できないと思います。


なぜならそれは、


当たり前にできていたことが

突然できなくなるということだからです。



跡形もなく消える記憶


少しでも記憶が残っていれば、

想像することもできます。


でも僕の場合は違いました。


本当に、

跡形もなく消える。


さっきまでやっていたことが、

完全に消えてしまう。


だからこそ、


不安がマグマのように湧いてくる。



会話の恐怖


日常の会話でも、


記憶できないことで

答えがずれることがあります。


すると、


「どうしたの?」


「頭大丈夫?」


そう思われる可能性もある。


だから僕は、


障害があることを見せないように

必死でした。


なんとなく正常なふりをする。


ただそれだけでした。



誰にも分からない世界


もしこの話をしたとしても、


きっとこう言われると思います。


「そんなの聞いたことない」


「どういう世界なの?」


想像がつかない。


だから僕は、


誰にも話せませんでした。


話したところで

問題が解決するわけではない。


そう思ったからです。



残っていた唯一のもの


17歳までの記憶は

残っていました。


だから、


それまでに経験したことと

似た場面では

なんとか対応できました。


でも、


人生というのは

新しいことの連続です。


だから僕は、


イメージトレーニング

予習

準備


とにかく対策をしました。


本当に必死でした。



真剣勝負の人生


会話の中でも、


分からなくても

答えないと不自然になる。


だから僕は、


直感で生きていました。


ものすごい集中力で。


気を抜いたら

崩れてしまう。


毎日が

真剣勝負でした。



ジェットコースターの人生


感覚としては、


ジェットコースターに乗っているような感じ。


だから、


風景を楽しむ余裕なんて

ありませんでした。


感情に浸る時間もない。


ただ、


生き抜くことだけ。



苦しみの中で得たもの


記憶ができない。


その代わりに得たものが

あるのかもしれません。


正直、


それが何なのかは

よく分かりません。


でも一つ思うのは、


強く思ったことを引き寄せる力。


思考が現実化する力。


それは

普通の人より強くなった気がします。


実際、


いろんなことを

引き寄せてきました。



宇宙飛行士のような生き方


今振り返ると、


僕の生き方は


宇宙飛行士がやっていることと

同じだったのかもしれません。


極限の集中。


常に緊張状態。


一瞬一瞬を

真剣に判断する。


そんな人生でした。



比べる人生の終わり


能力も

アイデンティティも

崩れました。


人と比べていたら

心は安定しません。


だから僕は、


自分とつながる生き方


を選びました。


自分軸で生きる。


周りの雑音を

気にしない。


自分と向き合う。



生きているだけで100点


冷静に考えると、


この能力で

よくここまで生きてきたと思います。


だから今は思います。


僕は

生きているだけで100点満点。



諦めない心


僕は、


足をたくさん出しました。


失敗しても

またやる。


成功するまで

やり続ける。


それが、


僕の特性だったのかもしれません。


諦めない心。



辛さを発信して出会えた人


SNSで

この辛さを発信した時、


身近ではなかったけれど、


理解してくれる人にも

出会えました。


それは

とても大きなことでした。



これからの人生


過去の自分とは

比べない。


僕の人生は

こういう形になった。


でも、


これからは


生きていてよかったと思える人生


を生きたい。


そう思っています。



最後に


正直に言えば、


記憶が消える脳で生きることは

地獄でした。


でも、


40年間、


瞬間瞬間を

生き抜いてきました。


そこで得たものが

何なのかは、


まだよく分かりません。


でも、


これからきっと

気づく時が来る。


そんな気がしています。


それを、


少し楽しみにしています。