人間関係に「境界線」を引くということ


― 言葉が出なかった私が、自分を守れるようになるまで ―

私は 高次脳機能障害 があります。
その中に 失語症 という症状があります。

失語症というのは、
頭ではわかっているのに、
その場で言葉が出てこない 障害です。

これが、人間関係の中で
どれほど苦しいものか――
今日は、そのことも含めて書いてみようと思います。


嫌なことを言われた、その瞬間

人から、ちょっと嫌味なことを言われた時。

心の中では、はっきり感じているんです。

「え、なんでそんなひどいこと言うの?」
「この人、信じられない」
「失礼すぎる」

本当は
「は?何言ってるんですか?」
「ひどい言い方ですね」
「そんなこと言うなんて、性格悪いですよ」

……そう言いたい。

でも、言葉が出ない。

失語症の私には、
その“瞬間の言語化”ができない。

結果どうなるかというと、
ただ心が シュン となって、
何も言えないまま終わってしまう。

これが、
何年も、何十年も、
繰り返されてきました。


時間が経ってから、言葉が出る

皮肉なことに、

次の日や、
数日経ってから、

「あの時、ああ言えばよかった」
「こう返せばよかった」

言葉は、ちゃんと出てくるんです。

でも――
もう遅い。

人間関係は、
その場で言わないと意味がないことも多い。

後から一人で考えても、
悔しさだけが残る。

私はずっと、

「なんで自分は何も言えないんだろう」
「自分が弱いからだ」

そうやって、
自分を責めていました。


でも、それは「性格」じゃなかった

今なら、はっきりわかります。

それは
私の性格でも、
気が弱いからでもありません。

高次脳機能障害の症状、失語症
――それが原因でした。

言葉が出ないのに、
心はちゃんと傷ついている。

だから余計につらい。

そして、何も言い返さない私を見て、
一部の人はこう思います。

「この人は何を言っても大丈夫」
「反撃してこない」

そうやって、
境界線のない相手として扱われ、
エネルギーを奪われてきました。


境界線とは、怒ることじゃない

ここで私が気づいたのが、
境界線の引き方です。

境界線は、
言い返すこと
言い負かすこと
強くなること

ではありません。

境界線とは、

「これは嫌です」
「それは望んでいません」
「ここから先には入らないでください」

と、静かに示す線。

言葉が多くなくてもいい。
完璧に言えなくてもいい。

たとえば、
•話題を変える
•その場を離れる
•短く「それは結構です」と言う

それも、立派な境界線です。


境界線を引くと、見えてくるもの

境界線を引き始めると、
不思議なことが起きます。
•尊重してくれる人は、ちゃんと残る
•不機嫌になる人は、距離ができる

でもそれは、
悪いことではありません。

境界線を嫌がる人は、
あなたを大切にしていたのではなく、
あなたの我慢に甘えていただけだから。


私は、弱くなかった

言葉が出なかった私は、
弱かったわけじゃない。

脳の障害の中で、
必死に人と関わってきただけ。

そして今、私は思います。

言葉が出なくても、
私には私を守る権利がある。

境界線を引くことは、
自分を大切にすること。


最後に

もし、あなたが
「その場で言い返せない自分」を
責めているなら、
どうか知ってほしい。

それは、あなたの価値とは無関係です。

境界線は、
怒らなくても引ける。
完璧な言葉がなくても引ける。

あなたの心がシュンとした瞬間こそ、
境界線が必要だったサインです。

今日から少しずつ、
自分の時間と心を
取り戻していきましょう。