【心の声を聞いてほしい】僕の中の“がんばり屋さん”へ


僕の職場での姿は、きっと周りから見ると――
「気さくで明るくて、話しかけやすい人」
「そこそこ仕事をこなせる人」
「まあ、普通の人と同じくらいできる人」
そんなふうに思われているかもしれない。

でもね、実際の僕はまったく違う。
僕は高次脳機能障害という“目に見えない障害”を持っていて、
本当は一つひとつのことをこなすのに、ものすごくエネルギーを使ってる。

たとえば、同時にいくつものことを頼まれると、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
考える力も、記憶する力も、以前のようには働いてくれない。
だから今の僕は、「簡単な作業だけ」に絞ってもらっているんだ。

これは“甘えてる”わけじゃなくて、“合理的配慮”。
だけど――

「もっとできるでしょ?」という無言の圧力

正直言うと、そういう視線を感じることがある。
周りの人は優しい。誰も悪気はない。
それでも、
「そのくらいだったらもっとできるんじゃない?」
「昨日できてたし、今日もいけるでしょ?」
そんな空気が、じわじわと僕を追い詰めてくる。

でも、僕の脳は昨日と今日では違うんだ。
脳の疲労が溜まってくると、思考はスローモーションになり、
作業のスピードも質も、ガタっと落ちてしまう。
何かやってるようで、実は“脳の空回り”になっているときもある。

それでも、できるふりをしてしまう自分がいる。
「任せてください!」なんて元気に答えてしまう。
だって、みんなの期待に応えたくて、
嫌な顔をされたくなくて、
なにより、役に立ちたいから。
そして朝早く6時くらいから仕事をする。

本当は怒りが湧いてくる

時々、限界を超えるときがある。
「僕は高次脳機能障害なんだから、あれこれできないよ!!!」
と叫びたくなる。

誰も僕のキャパシティの“目盛り”を知らない。
「これくらい、いけるよね?」って無邪気に言われても、
それが、僕にとっては「フルパワー+α」なんだよ。

なのに、うまくできていなかったら、「できてませんでしたよ」とサラリと言われる。
その一言が、ぐさりと刺さる。
「高次脳なのに…高次脳機能障害なのに…脳の障害なのに…それ言うか。」
と心の中でつぶやいて、
心の中で物をガンッと投げつけている。
見えない怒りと悔しさが、静かに爆発している。

優しさが、傷を深くすることもある

でも、いざその相手を前にすると――
笑顔で接してくるから、文句なんて言えない。
僕も、笑顔で「大丈夫ですよー」って言ってしまう。
優しさって、時に、自分の痛みを“なかったこと”にしてしまう。

「まあ、みんなも大変だし…」
「自分がやった方が早いし…」
「任された方が、自分の成長になるかもしれないし…」

そんなふうに、自分の気持ちに折り合いをつけながら、自分を押し殺してしまう。

透明になっていく感覚

人の心がポキっと折れるときって、
“疲れ”じゃなくて、“無視される痛み”だと思う。

頑張ってるのに、感謝されない。
「やって当然」と扱われてしまう。
まるで、自分の存在が透明になっていくような、そんな感覚。

僕が、どれだけのエネルギーをかけて、その仕事をこなしているか。
どれだけ、見えないところで工夫し、集中し、調整しているか。
それが誰にも気づかれず、軽く扱われたとき――
心の奥が、ギュッと締めつけられるんだ。

僕が望むのは、「できる・できない」の話じゃない

もっとできるようになりたい。
もっと効率よく働けるようになりたい。
そんな願いはある。

でも本当に望んでいるのは――
「僕の存在が、ちゃんと見えていて、尊重されていること」
それだけで、僕はまた笑って働ける。

僕にしか分からない「すごさ」

僕は、自分軸で判断するようにしています。
無理をして、壊れてしまわないように。
でも、時々思うんです。

僕は、能力を遥かに超える仕事を、今まさにやっている。
高次脳機能障害という脳のハンデを抱えながら、
それでも、時に健常者以上の成果を出している部分がある。
これは――本当に、すごいことだと、自分でも思う。

重度の記憶障害を抱えている。
それでも、こうして仕事をこなし、人と関わり、現場に立っている。
それは、どんな健常者にもわからない、僕にしか分からない尊さ。

「すごいな、自分」
って、心から思いたい。
そして――
自分に感謝したい。
「ここまで、よくやってきたね」って。

小さな敬意が、世界を変える

周りを見れば、ちゃんと気づいてくれてる人もいます。
「小川さん頑張ってるね、無理しないでね」って声をかけてくれる人。
余裕のある人、心が調っている人。
そして、僕の見えないところで動いてくれている部長の姿にも、
感謝の気持ちが湧いてきます。

誰かが少しでも「見てるよ」「ありがとう」って伝えてくれるだけで、
人はまた一歩、優しくなれる。
僕も、そういう存在でありたいと思う。


だから、僕は今日も、できることを、ひとつひとつ。
自分のペースで、心を込めてやっていきたいと思う。

そして、誰かがそっとこう言ってくれたら嬉しい。
「あなたに頼んでよかったよ」って。


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
あなたの心の中にも、きっと“がんばり屋さん”がいるはず。
その存在に、今日少しだけ、優しくしてあげてくださいね。

そして、なによりも――
自分自身に「ありがとう」と言える今日でありますように。

— 小川 伸一