【心の目で見ること – 第3話】


Sさんは、かつての僕だった ~愛で包むまなざし~

Sさんのことを、ふと考えていた。

表面的なやり取りだけを見れば、正直、冷たいと思うこともある。
あいまいな返答。距離を取るような対応。
優しくしても、感謝も言葉も返ってこない。
ときには、嫌味にも感じる一言が返ってくることもあった。

でも、心の目で見たとき、僕には分かる気がしたんです。


Sさんは、不安や恐れを抱えている人

きっと、Sさんは不安や恐れを抱えながら生きている。
その空気感が、言葉や態度の端々ににじみ出ている。

そして僕は気づいた。

それはまるで、二次障害に苦しんでいた頃の自分と、同じ心の状態なんじゃないかと。


あの頃の僕と、今のSさん

僕もかつて、心に余裕なんてなかった。

高次脳機能障害で、脳も心もパンクしていた。
一つのことに集中するだけで精一杯で、
パニックになり、大声を出したり、思わぬ態度をとってしまったこともある。

人に優しくする余裕なんてなかった。
それどころか、心を守るために、他人を遠ざけたり、時には傷つけるような言動をとってしまっていた。

今思えば、それもすべて、自分を守るためだった。


だから、責めたくない

Sさんの態度にモヤモヤした日もあったけれど、
今、こうして心の目で見てみると、僕は責めたいとは思わない。

Sさんも、きっと何かを抱えながら、生きてきたんだろう。
冷たく見える態度の奥には、人生経験や環境、過去の痛み、恐れが積み重なっている。

そして、今はまだ心に余裕がないだけなんだ。


僕ができることは「愛を送ること」

だから、僕はSさんに言葉をかけないまでも、
心の中で「愛の波動」を送りたい。

「Sさんが幸せになりますように」
「あなたは、良い人間なんです」
「不安や恐れがなくなれば、きっと誰よりも優しくなれる人なんです」

声に出さなくても、波動は伝わる。

言霊も、想念も、見えないけれど、確実に届く。


愛で包む。それが僕にできること

冷たくされた時、無視された時、
過去ならきっと、僕も冷たい態度で返していた。

でも今は違う。

愛で包もう。
愛の器を、もっと大きくしよう。
全てを肯定する眼差しで、Sさんを見よう。

そうすれば、僕の中で何かが癒され、
Sさんの中でも、何かが少しずつ変わっていくかもしれない。


人はみんな、学んでいる最中

冷たい態度をとってしまうのも、
不親切にしてしまうのも、
余裕がないから。心が疲れているから。

それを、誰かに気づかせてもらって、
少しずつ優しさを思い出していく。

人は、そうやって「学んでいる最中」なんだと思う。


きっと、Sさんはもっと良くなる

僕は、Sさんを信じたい。

「あなたは、もっと良くなる」
「嫌味を言わず、たくさんの人に感謝される人になる」
「不安や恐れがなくなれば、あなたの中の“愛”が自然にあふれ出す」

そう信じて、祈ることにした。

今までの関係がどうであっても、
これからは「笑って過ごせる関係」に変わっていく気がしている。


心の目で見ると、人はみんな優しい。
きっと、Sさんもその一人。
だから今日も、僕は愛で返す。

Sさんに、そしてかつての僕自身に。
ありがとう。