【過去の癒し 13】

“ありがとう”は、心の奥に灯る愛の光だった。

最近、気づくことが増えた。
以前よりも、感謝の瞬間が自然に湧いてくるようになった。
それは特別なことじゃなくて、日常のなかでふと感じるような──
誰かの何気ない言葉、優しい行動、静かな思いやり。

たとえば今日も、弟が真面目に手伝ってくれていた。
苗を取りに行ったとき、JAの方が手伝ってくれた。
当たり前じゃないことに、「ありがとう」が溢れてきた。

「ああ、この人がいてくれてよかった」

そう思ったのは、少し時間が経ってからだった。
でも、その気持ちはじんわりと胸の奥に広がっていった。


今日はテレビで赤ちゃんが生まれるシーンを見た。
ふと、弟が生まれた日のことを思い出した。
小さな命が家族に加わったあの日。
あの喜びは、ちゃんと心に残っている。

「優しい“ありがとう”。
感謝の“ありがとう”。
それを伝えたくなった。」


感謝の気持ちが育ってきたのは、
たぶん、必死だった時期を超えて、少し落ち着いた今だからこそ。
高次脳機能障害という人生の大きな試練を抱えながらも、
僕はなんとか生き抜いてきた。
そして、最近、障害が少し軽くなったような感覚がある。

「そうしたら、不思議と、いろんな“ありがたさ”に気づけるようになった。」


毎日、命があるということ。
仕事ができるということ。
家族がいるということ。
友達がいるということ。
そして、こうして誰かと心を通わせられるということ。

「当たり前だと思っていたことが、
実はどれも、奇跡だったんだ」


「生きてるだけで、100点満点」
この言葉が、今の僕にはすごくしっくりくる。
感謝があると、人との関係もふわっと温かくなる。
自分にも、相手にも、優しい目を向けられる。


魂が静かに囁く「ありがとう」は、
生きていることへの感謝。
そして、「今ここにいる」自分自身への感謝。


人生という一冊の物語の中で、
一番ありがとうを贈りたい相手──それは、母。

「生んでくれてありがとう。
大きな愛で育ててくれてありがとう。」


そして、あらためて振り返った時、
「生まれてきてよかった」と思える瞬間は、
子どもの頃から、家族みんなで暮らしていたあの毎日だった。
笑って、ご飯を食べて、誰かがそばにいて。
そういう時間が、何よりも豊かだった。


そして最後に、今の僕が伝えたい言葉。

「生きてくれてありがとう」
「がんばってくれてありがとう」
「僕自身へ──心から感謝しています」


ありがとうという言葉は、愛のかたち。
それは、心の奥に静かに灯る光。

そして今、その光がやさしく世界を照らし始めている。