【過去の癒し 02】


チャンスって言ってみたら、心が笑った。


一番最近、「ピンチだ」と思ったのは──

苗が全滅したとき。


「今年は農業の収入、厳しいなぁ…」

「機械代で利益が吹き飛ぶかもな…」

胸のあたりが重くて、心も揺れて、ちょっと震えた。


でもね、不思議と心のどこかでこう思ったんです。

「あ、これはチャンスかも」

農業は体力勝負の重労働。

のんびりできる時間が生まれることに、少しだけラッキーとすら感じていた。



そういえば、もっと大きなピンチもあったな。

高校時代は勉強も運動も得意だったのに、

高次脳機能障害になって、3年浪人しても大学に入れなかった。

あの時、心はボロボロで、自信は砕け散った。


でも、誰にも助けを求めず、自分で立ち上がった。

行動した。

夢に向かって、体が動いていた。


今の僕が、あの時の自分に声をかけるとしたら──


「とりあえず、チャンスって言ってみな」って言いたい。


笑えなくても言ってみてほしい。

そうすると、なぜか心が笑いだす。

泣きたいようなことでも、ふっと笑えてしまう。



逆に、チャンスと思えなかった時。

ただ不幸に飲まれて、心が沈んでいった。

落ちていく時って、視界も狭くなって、全てが灰色に見える。


でも、「チャンス」って言葉には、光がある。

その光が、心にスイッチを入れてくれる。



そして今、あの頃を思い出してみる。

あの経験があったから、今の僕がいる。

辛いけど、毎日を必死に生き抜いてきた。

誰にも見えない努力と涙が、僕を育ててくれた。


もし、あのまま何もなかったら…

きっともっと“楽”だったかもしれない。

でも、今ほど“深み”のある人生は歩んでいなかった。


心の奥から言える。

あれはギフトだった。



あの頃の僕へ、今の僕から手紙を書こう。


「大変だったね。でも、それは全部チャンスだったよ。

今は見えないかもしれないけど、

あなたは本当にすごい人間になります。

明るい未来が待ってるよ。

転んでも、ちゃんと立ち上がれる魂になるから大丈夫。

一つひとつ、丁寧に生きていこうね」



僕の魂は、チャンスの中で強くなった。

苦しみの中でやさしくなれた。

悲しみの中で、他人の痛みに気づけるようになった。


そして、今こうして言える。


「すべての出来事は、チャンスだった」