「生きているだけで100点満点」


〜命を重ね煮するように生きる〜

Wara船越さんの教え


【第1話】

“できないこと”が教えてくれた「生きてる意味」


「何もできなかった日」があったとしても、
その日、僕が得ていたものはきっとたくさんある。

成果が見えなくても、一瞬一瞬、
僕は本気で、真摯にいろんなことに向き合っていたと思います。

頭ではうまく整理できていなかったかもしれない。
覚えていないこともたくさんある。
でも、心と体はちゃんと「命」を動かしていた。

そうやって、丁寧に刻んできた日々の断片が、
見えない階段になって、
気づけば僕を遠くまで運んでくれていた。

重度の記憶障害という、
毎日がゼロからのスタートになるこの世界で、
それでも僕がここまで来られたのは、
「今この瞬間」に真剣に向き合い続けてきたからだと思うのです。


もちろん、できない自分を責めた日もあります。
「なんでまた忘れたんだ」「また失敗した」
そんなふうに自分に怒ったり、落ち込んだりもしました。

でも、そんな日でも
どこかでいつも、小さな「温かさ」は残っていたんです。

それは――
「それでも、今日一日だけ頑張ろう」
と思える自分がいたこと。

ボロボロでも、泣きながらでも、
ちゃんと今日を生きようとしていた自分の魂は、
今思えば、とても誇らしいものだったと思います。

誰にも評価されなくても、
僕は生きようとしていた――それだけで、十分だったんです。


「生きてるだけでいいんだ」と思えた瞬間。
それはきっと、少しずつ、じわじわと、
日々の中にしみ込むように訪れてきた気がします。

昔は、健常者だった頃の価値観に縛られていました。
できるかできないか、結果を出せるかどうか、
誰かに認められるかどうか――そればかりを気にしていた。

でも今は、
**“生きてるだけで、素晴らしい”**という感覚が、
少しずつ心と脳をやわらかくしてくれている。


僕のように高次脳機能障害があっても、
毎日をこうして静かに生きていけることは、
本当にすごいことだと思う。

ストレスを手放して、
自分の存在をそのまま認めること。

それが、脳にとっても
心にとっても、
何よりの“命の重ね煮”になるんです。


今日、生きていた。
それだけで、100点満点。