「記憶障害の花嫁」── 同じような人生の人は、どこにもいない
2018年、初めて同じ高次脳機能障害の当事者に出会った。
2020年、本格的に自分を曝け出し、障害のことを発信し始めた。
そのとき、僕の心にはひとつの想いがあった。
「自分と同じような人はいるのだろうか?」
そう思って、SNSやネットを通じて、同じ境遇の人を探した。
SNSの世界にいる「高次脳機能障害」の人たち
SNSで発信している人たちの多くは、
「高次脳機能障害だった人」「身体障害が残る人」「高次脳の後遺症があまりない人」など、さまざまだった。
彼らの投稿を見ると、正直、「僕ほどの後遺症がある人はいないのでは?」 と思った。
実際に会いに行った人もいた。
すごい人だと思っていたけど、話してみると後遺症はほぼなかった。
ネットでは「高次脳機能障害」と言っていても、実際にはどの程度の後遺症があるのか分からない。
気がつかない人と、すぐに気がついた僕
高次脳機能障害の当事者の中には、
「自分が障害者だと気づかない人」も多い。
日常生活はなんとかできる。
でも、「なぜか上手くいかない」 ことが増える。
仕事が続かない、約束を守れない、人間関係がぎくしゃくする。
だけど、その原因が**「脳の損傷によるもの」**とは気づかない。
そういう人が、意外と多くいた。
でも、僕は違った。
視線を変えただけで、記憶が消える。
これは明らかに「普通じゃない」。
だから、僕はすぐに自分の障害を認識した。
そして、何十年経っても、記憶が跡形もなく消える症状は変わらなかった。
びまん性軸索損傷── 僕の記憶障害の正体
ある日、当事者の友達から紹介された動画を見た。
そこに映っていた人の症状が、僕とまったく同じだった。
その時、僕はようやく確信した。
「これは、びまん性軸索損傷の症状だ。」
びまん性軸索損傷(DAI)とは?
交通事故や転落などで強い衝撃を受けると、
脳の神経線維(軸索)が損傷してしまう。
これが「びまん性軸索損傷(DAI)」だ。
特徴的なのは、CT検査では異常が見られないのに、重度の意識障害が出ること。
僕の場合、器械体操の吊り輪の演技で、
後方二回宙返りの途中、高い位置から回転しながら頭を床に強打。
この衝撃が、びまん性軸索損傷を引き起こす条件に完全に合っていた。
そして、僕の記憶障害のメカニズムも分かった。
「新しい記憶が入ると、前の記憶が海馬に到達する前に消えてしまう。」
記憶が跡形もなく消える理由に、ようやく納得できた。
「記憶障害の花嫁」──
つかささんの人生に涙した
そんな時、ある人の存在を知った。
彼女の名前は、つかささん。
高次脳機能障害を抱えながらも、懸命に生きた女性だった。
彼女は結婚し、子どもも産んだ。
幸せな家庭を築こうとしていた。
だけど、運命はあまりにも残酷だった。
出産後、急性の病気で亡くなってしまったのだ。
新しい命と引き換えに…。
そのことを知った時、僕は涙が止まらなかった。
「どれほど家族の幸せを願ったことだろう…」
つかささんと、僕を繋げてくれた友達
僕の症状を教えてくれた友達も、出産の時に高次脳機能障害になった。
僕以上に、きっと心を痛めただろう。
この友達と、つかささんには感謝しかない。
もし彼らがいなかったら、僕は今でも自分の障害を完全には理解できていなかったかもしれない。
「自分と同じような人生の人は、どこにもいない」
いくら探しても、
僕とまったく同じ人生を歩んできた人は見つからない。
どこにもいない。
脳科学の視点:「人は皆、違う脳を持っている」
脳の構造は「指紋と同じくらい、一人ひとり違う」と言われている。
だから、「同じ障害」でも、症状の出方が異なるのは当然だ。
僕のように「視線を変えた瞬間に記憶が消える」人がほぼいないのも、
僕の脳の損傷の仕方が**「唯一無二のもの」**だからだろう。
スピリチュアルの視点:「唯一無二の人生を生きる」
スピリチュアル的に見ると、
「魂は、それぞれに違う課題を持って生まれてくる」 と言われている。
つまり、僕が僕の人生を歩んでいるのは、偶然ではない。
僕と同じ人生を歩んだ人がいないのは、
僕だけに与えられた特別な道がある からなのかもしれない。
精神的な視点:「それでも、つながれる」
僕と全く同じ人生の人はいない。
だけど、僕の体験に共感してくれる人はいる。
僕の発信に勇気をもらう人がいる。
それだけで、十分なんじゃないかと思う。
「僕は僕の人生を生きる」
同じ人生の人はいない。
でも、僕には僕の役割がある。
それを見つけるために、僕は生きている。
このブログを読んでくれているあなたも、きっとそうだ。
「あなたの人生を生きてください。」
「誰とも比べなくていい。あなたは、あなたのままでいい。」
僕も、僕のままで生きていく。
そして、またどこかで、誰かとつながれることを信じて。
感謝を込めて。
