昨夜フットサルの帰り。
チームメイトの一人から「うちで晩御飯食べて行かない?」とお誘いを受け、「いいですねぇ。ぜひ」とお邪魔することになりました。
そのチームメイトは元僧ですが、今は還俗して教員となり、奥様も子どももいます。肉も食べるし酒も飲む。
とはいえ、まわりからは一目置かれる存在で、学校の仏教行事や行事装飾は彼が仕切っています。
僕から見ても、彼は悟りの境地に至ったからこそ、あえて俗世間に戻って来たに違いないと内心思っています。それだけ高いエネルギーを彼から感じています。
なので、一体家の中はどうなっているんだろうという好奇心もありながら、内心ワクワクしながら家へと向かいました。
「今日は妻も仕事で夜遅く、子どもたちも田舎へ行っているから、僕が作る質素な食事になるけどいいかな」
「もちろんですよ。ご馳走になるだけで有難いですよ」
ブータンでは客人を迎えるとなると、家族や親戚が大勢集まって、テーブルや床狭しとたくさんの料理やお酒が並びます。
でも、今日はそうじゃないよという意味で彼は質素な食事と言う言葉を使ったのでしょう。
そんなこんなで、ついにお宅にお邪魔しました。
しかし中に入ると、想像していたのとはまったく違い、いたってシンプル。
国王一家の肖像、チベット仏具がある他は、一般的な部屋と同じ。ちょっと拍子抜けした感じです。
そんな中、身籠った一匹の三毛猫がソファーで寛いでいます。
ただ、何と言うか言葉にするのが難しいのですが、
心地よさが半端ないんです。
絶対的安心感に包まれたというか。
その心地よい感覚を感じながら、まずは「チャンケ」という伝統酒が出てきました。赤米を発酵させたものにバターや卵を混ぜた自家製の温かいお酒です。彼がキッチンでササッと手早く作ったものですが、これが夜の試合で冷えた身体に染み渡る。
彼と他愛ない話をしながら飲み干すと、彼はまたキッチンに戻っていきました。
リビングで三毛猫と寛いでいると、彼の友達という人物が一人やってきました。その人は現役の僧で、大学で仏教を教えているとのこと。日本にもチベット文化を伝える活動で行ったことがあると言っていました。
彼と日本の文化や料理の話をしていると、「パクシャパ」という豚肉を茹でて炒めたものがやってきました。豚肉の脂が濃いのですが、ご飯や野菜と一緒に食べると脂がほどよく染みてしつこさが消え、脂と旨味がちょうどよいバランスとなります。
きっと、僧時代の料理番で行き着いた味加減なんでしょう。
三人でパクシャパをいただきながら、これまた他愛ない話、おかわりいかが?なんて話をしながら、完食させていただきました。
最後は、「アラ」という米やトウモロコシを原料とする蒸留酒。日本の焼酎のようなお酒です。
喉に流し込むと、やや脂の残った胃の中がサッパリします。
そしてお開きとなったんですが、家にお邪魔してから、時間の感覚がまったく失くなっていました。それだけ心地よい時間、魂が喜ぶ時間を味わっていたのでしょう。
ただ出てきた料理をいただく。他愛ない話をする。
それだけの行為。
しかしその裏には、主人である元僧が極めたシンプルな料理、お酒、おもてなし。
僕はそれらの総合芸術を短い時間で堪能できたんだと思いました。
たくさんの料理を大勢で食べるのも大好きですが、
主人と少ない客人とで、シンプルな料理を、主人の醸し出す絶対的安心感、心理的安全性の中で心から味わうのも、これまた豊かなことだと感じました😊