ジャン=ルイ・トランティニャンに想う | 黄昏オヤジの暴発日記

黄昏オヤジの暴発日記

退職後の第二の人生を手探りで進むオヤジのモデルガン+独り言。黄昏に染まりながら気まぐれに発火しつつ、この世の由無し事に毒を吐く(令和4年5月20日・タイトル一部修正)

 今月17日にジャン=ルイ・トランティニャンが亡くなった。

 今の若い人にすれば「トランティニャン、何それ?流行りの猫漫画の登場人(猫)物?」などといわれそうだ。

 往年の映画ファンならご承知だろうが、フランスの俳優さんである。出演作の中で最も有名なのは1966年(昭和41年)公開の恋愛映画「男と女」。こんな古い恋愛映画に興味なくとも、「ダバダバダ♪ダバダバダ♪」という印象的なスキャットが流れる主題歌を聴いたことがある人は多いだろう。

*下が公開時のポスター。当時、世界中で話題になり、たくさんの賞を取りました。

 さて、私も特別にこの方のファンではないし、「男と女」に思い入れがあるわけでもない。ただ、この方の出演した映画の中に、とても印象的なものがある。

 

 一つは「殺しが静かにやって来る」。

 深夜枠の映画番組で観たのだが、主人公がモーゼルミリタリーを使っていることにびっくりした。その主人公を演じていたのがジャン=ルイ・トランティニャン。この映画、西部劇(マカロニだけどね)なのにモーゼルミリタリーが登場することでも知られているが、それ以上に有名なのはストーリーの結末、終り方。いわゆるバッドエンディング映画であるということ。

*主人公「サイレント(喉を切られ声が出ないという役柄)」が手にするのは、モーゼルミリタリー

 ガンにまつわる映画のイラストが得意だった故イラコバさんだったと思うが、目一杯「最悪!こんな終わり方はない!」といっておられた。確かに私もラストを観たとき、「エッ!これで終わり?」と声が出た。

 現在、視聴が可能か知らないが、もし機会を得たならばご覧になるのもいいかも。カタルシスが得られるかは分からないが…。

*残虐描写のため上映禁止にした国もあるとか。しかし、凄いキャッチですなぁ「凄い奴が静かに殺す!気狂い野郎が笑って殺す!」なんて今では許されないかも。そもそもの邦題名も相当なもんですが、原題は「大いなる静けさ」です。乖離激しい!

 なお、ウイキペディアには、クリント・イーストウッドの「シノーラ」は、当初この作品のリメイクとして計画されていたという話が載っている。個人的には、西部劇は西部劇だがストーリーの違いもさることながら作調があまりに違うのでどうかなと思う。

*これが「シノーラ」。

*奪い取ったモーゼルを使用するシーン

 ただし、不思議なことに「シノーラ」でもモーゼルミリタリーが使用されている。たしか、イーストウッドふんする主人公が、頭と性格の悪そうなギャングから奪い取ったという設定だったはず。

 私、モーゼルミリタリーが登場する西武劇はこの二本しか知らないが、その二本が不確かなリメイク話でつながっているというのは面白い。

 

 もう一本印象に残っているのは「フリック・ストーリー」という1975年公開のフランス映画。1940年代から50年代にかけてフランスで公共の敵ナンバー1とされた実在する犯罪者エミール・ビュイソンを逮捕するまでを描いた犯罪映画。主人公の刑事ロジェ・ボルニッシュをアラン・ドロンが演じ、追われる犯罪者ビュイソンをジャン=ルイ・トランティニャンが演じている。

*当時のポスター。これは面白い映画でした。

*暴れているのがトランティニャン演ずるビュイソン、羽交い絞めしているのがドロン演ずるボルニッシュ刑事。身に付けた手榴弾を諸共爆発させようとするシーン。

 実話ベースであることを意識してか色調の押さえられたドキュメンタリー的な映像だったと記憶している。アラン・ドロンも相変わらず恰好良かったのだが、それ以上に静かにキレるトランティニャンの怖さが凄かった。

 実際にこのビュイソンという人物は、30件以上の殺人と100件以上の強盗事件に関与していたというからとんでもない。逮捕後、死刑判決を受け、1956年にギロチン!で処刑されている。

 ちなみに、フランスで死刑が正式に廃止されたのは1981年9月。最後にギロチンによる死刑が執行されたのは1977年9月10日という。

 ちなみにちなみに、アラン・ドロンは、「暗黒街の二人」という1973年のフランス映画で、銀行強盗を犯し刑務所に服役後、ジャン・ギャバン演ずる保護司により早期出所を果たした前科者を演じている。劇中、ドロン演ずる主人公は出所後も彼を執拗につきまわす刑事に業を煮やし殺害、死刑判決を受けラストシーンでギロチンにより処刑される。そこで映画はエンディング。

*原題は「街の二人の男」。「暗黒街」ではありません。

*これがラストのギロチンシーン。ドロン演ずる主人公の視線の先にはギロチンの刃がある。本当に一瞬でしたが、刃が落ちてきて首が切断されるようなシーンがありました。それがエンディングです。

 「暗黒街の二人」という邦題名と、アラン・ドロンとジャン・ギャバンというフランス映画界の誇る二大スターの共演に、当時中学坊主の私は、フランス暗黒街映画「フィルムノワール」感こってりのサスペンス映画を期待したが、結果は大いに肩透かしを食らった。が、今となると印象深い一本である。

 ・・・あれ、トランティニャンの話、どこ行ったっけ。

 

 最後に一つ

 エド・マクベインの87分署シリーズ「10+1」を題材にした「刑事キャレラ 10+1の追撃」。トランティニャン演ずる主人公キャレラ刑事の片腕を伸ばした射撃スタイル。これがとても格好良くて印象に残っている。

*白状します、私、ドミニク・サンダのファンでした。

 

*S&Wのように見えます。シャキーンと片腕を伸ばし、片方の眼を眇めての古典的射撃スタイル。素敵です。

 

  トランティニャンさん、いい映画をありがとうございました。

たくさんは観ていませんが、拝見した映画はどれも印象的でした。

お疲れさまでした。おやすみなさい。