久し振りの金属長物。今はなきハドソン製のトンプソンM1A1。以前に、ヤフオクで入手したものである。一緒に付いていたオリジナルの箱の内側に、販売店のスタンプと「昭和55年1月購入」というメモが残されていた。おそらく最初のオーナーによるものだろう。この購入時期から見ておそらく販売開始直後の最初期のモデル。当時のものなので発火方式はオープンデトの紙火薬仕様。マガジンは20連で真ちゅうの丸棒をくりぬいたような太くて重いカートが10発付いている。そのほか、布製のスリングも標準仕様。今から41年前、昭和55年(1980年)時の価格で31,000円というから高価なモデルだ。念のため申し上げるが当然のごとくSMG規格。
*40年以上も前のオリジナルの箱とともに。
*マガジンは20連、標準でスリングまで付いている。箱の裏側に販売店のスタンプと購入日が記載されている。最初のオーナーはきっと待ちわびていたのだろう。うれしかっただろうね。
なお、トンプソンに関しては、実銃についてもモデルガンについてもたくさんの方が語っており情報も豊富、まさしく人口に膾炙するといっていい。だからここで私がくどくど述べるようなことはしない。
個人的には、HP開設時、福岡出身の愉快なマニアの方からクロームメッキのモデルをお預かりし随分楽しませていただいた。余談であるが、この方は「全日本BLK化計画」の発起人兼幹事としても有名な人物。今でもお元気でご活躍されていることと思う。
あと、思い出すのは、古い「Gun誌」に「ジャック天野」氏による発火テストの様子が掲載されていたこと。若い女性をモデルに、カート1発に紙火薬を11発か12発!入れどこか屋外で発火していた。発火の瞬間の轟音に顔をしかめた女性の写真が掲載されていたような…。
別の企画では、あのタークタカノ氏が作動させようとしてうまくいかず、業を煮やしていたような記憶がある。これらの記事のために「ハドソンはアカン」という意識が刷り込まれたかもしれない…
さて、入手した目的は当然発火。以前お借りしたクロームメッキモデルの際にも、デトネーターを工夫してCPカートで発火した。今回も同様な手段でCP化し楽しもうという魂胆である。
まずはデトネーター。当然、モデルは紙火薬仕様なのでデトネーターは使えない、…というかこのモデルには入手時からデトネーターが付いていなかった。前の所有者が外してそのままになったのだろう。まっ、別に使わないので問題はない。
このモデルはチャンバーの奥にネジ穴が開いており、そこにデトをねじ込んで固定する仕組みとなっている。そこでCP用のデトもネジで代用する計画。ただし、問題はネジの規格。今はどうか知らないが、この頃のモデルガンにはよく旧JIS規格のネジが使われていた。このトンプソンのネジ穴も旧規格で、現在一般に使用されているJIS規格では合わない。ネジのサイズはM5というものだがネジのピッチは0.8。一方、旧規格だと同じM5でもピッチは0.9となる。無理に入れれば当然ネジ穴がつぶれる。ただ、今でもちょっと大きいホームセンターへ行けば旧規格のネジは普通に購入できる。私の住む地方都市でも簡単に購入することができた。4本(ナット、ワッシャー付き)で140円ばかり。安いもんである。以前はこんなことも知らず、無駄に金を使ったり、時間を費やしたりと散々に失敗を重ねたもんだ…。
*これがホームセンターで購入した旧JIS規格のM5ネジ。フレームに乗っているのが作業途中の自作デト。
*ほぼ完成した自作デト。フィーディングを考えテーパーを付けて磨いてある。また、前後にはマイナスドライバーを使って回し込めるように細めの金ノコで溝を切ってある。付属のナットには、固定用に、ドリルで穴を開けタップで溝を切りイモネジがねじ込めるようにしてある。
小さいパーツであるが、肝となるパーツである。これができればあとは楽勝。
ただし、チャンバーに固定するには工夫がいる。まず、長さを合わせる必要がある。また、固定するにも単にネジだけをねじ込むだけでは、ブローバックの衝撃で固定が甘くなる。いずれは修復不能なまでチャンバー(のネジ穴)を痛めることになる。
そこでまず使用する予定のCPカートにインナー類をセットし、ネジを差し込む。そうして発火に適した概ねの長さを見極め、不要な部分を金ノコでカット(ただし、少し余裕を見ておくこと)。その上でデト用のネジにナットを回し入れていく。なお、ナットの側面には電動ドリルで穴を開けてタップを切り、イモネジがねじ込めるようにしておく。また、デトの両端にはマイナスドライバーが使えるように細めの金ノコで溝を切る。そうやって、長さを調整しナットを回し入れた代用デトをチャンバーにねじ込んでいく。あとはインナーをセットしたカートを差し込んで最適な発火ポイントが得られるよう現物合わせで調整する。幸いチャンバーのネジ穴は貫通しており、長すぎて余った部分は突き出すので印を付けカットする。適正位置になったところナットのイモネジをねじ込み動かないようにする。その状態で固定すれば、ネジだけでなくナットでも衝撃を受け止めるので緩む心配もないし、ネジ穴を痛めることもない。固定する際も両端にマイナスドライバー用の切れ込みを入れてあるので、前後からしっかりとドライバーで固定できるし、メンテナンスもしやすい。
*固定の様子。左側がチャンバーに固定した状態。ネジだけでなくナットでも衝撃を受け止めるので耐久性も高く、緩むこともない。右はチャンバーを取り外して裏側(バレル基部に接する部分)から見たところ。真ん中にツライチでデトのお尻が見える。こちら側にもマイナスドライバー用の溝を切ってある。
作業時間は大体2時間半ほどだっただろうか。空調の無い2階の部屋で作業したので汗だくになってしまった。だが、思いの外しっかりしたものができうれしい。
使用するカートはリアルサイズ45CPであるが、MGCではなくエランのDuoカートをシングルキャップで使用することにした。重さを比べるとケースがアルミ製のエランカートは約8グラムに対し、全真鍮製のMGCは約17グラムと倍以上重い。ちなみにほぼ真鍮のかたまりであるハドソンオリジナルのオープンカートはなんと21グラムもある。軽い方がモデルに与えるストレスも少なくて済むはず。ただ、万が一ジャムった際、重い金属ボルトにはさまれると再使用できなくなる可能性がある。高額なカートなのでそうなると泣くことになるが…。ないことを祈ろう。
*カート三種。向かって左がMGC系のリアル45CP重さ17グラム、真ん中がハドソンオリジナルのオープンカート重さ21グラム、右がエランのDuoカート重さ8グラム。サイズはほぼ一緒。ということは、ハドソンカートはリアルサイズカートの先駆か!すごいぞ、ハドソン!
試しに5発カートを用意して発火するときれいに4連射したが、最後の残り1発を残してボルトがコッキングポジションで止まったままとなった。「?」と思ったが、そのままトリガーを引けばきれいに発火する。何となく釈然としない気持ちはあったが、一方できれいに発火できたことがうれしい。
そこで改めて15発ほど用意して発火すると…、最初はフルで連射はするが、途中トリガーを戻していないにも関わらずボルトがコッキングポジションで止まってしまう。ブローバックの衝撃で内部のディスコネクターかシアが誤作動して、セミになってしまったのだろうか。手元には分解図等もないので分解には躊躇する。結局これは最後まで確かな理由が分からなかった。ただ、どうやら、トリガーを強く引き絞るとセミになりやすいように思えた。必要以上にトリガーを引くと、ディスコネやシアに干渉しているようだった。差し当たりは、その点に気を付けて発火することでごまかした。対処療法だがトリガーストップ的なものを付ければいいのだろうが、それは今後の課題(ずっとそのままだったりして…)。
ハドソントンプソンに関しては、アッパーフレームとロアフレームの上下の隙間と左右のずれが欠点といわれている。これが経年でさらに大きくなり作動にも影響しているのかもしれない。そもそも実銃がそのような構造なのだから仕方がない。モデルガンの場合、金型や素材の関係から実銃同様の構造だと無理が生ずることが多々ある。MGCのトンプソンではこれを嫌いアッパーとロアを実銃にはないネジで固定している。
*アッパーとロアフレームの隙間。フレームの間に一本の光の線が見える。モデルガンでは、金型や素材の圧入に限界があるのでどうしてもこうなるとのこと。ちなみにこの隙間はハドソンの金型を引き継いだ再販モデルでもあるらしい。
*エキストの状態。鉄製であるが焼き入れがされていないのか、弓なりに反ってしまっている。ここまで反っても作動に影響はないが、これ以上になると問題が発生しそう。一度曲がったものは叩いてもすぐ曲がってしまう。カスタム品があればいいのだが・・・。
あと、エキストラクターも変形しやすいという評判であった。確かに弓なりに反ってしまっている。今のところは作動に影響ない。まぁ、何かあっても補修パーツもないので、どうしようもないがね。
さて、そんなハドソントンプの発火動画である。
最初の銃口アップの動画は、調整し始めた頃のもの。フルがすぐに止まってオタオタしている。その次は18連射に挑戦したものだが、途中一度止まってしまっている。そして最後は13連射。エジェクトされるシルバーのカートがきれい。
なお、エランカートは全弾無事だった。よかった(*^ ^*)
そんな動画は↓
銃口からのガス抜けは意外といい。発火音はまぁこんなものだろう。ご近所を気にすることなく発火できるから都合がよい。発射速度は案外早いような気がするが、軽いカートの影響かな。カートがきれいに一列にエジェクトされているから、バランスはいいようだ。本体が重いので反動といったものはそれほど強くない。とにかく重いので発火するにもメンテナンスするにも気合がいる。
たまにセミになるなど、少々消化不良の感があることは否めない。ただ、40年以上も前に作られたモデルガン相手では、こんなものだろう、ということで今回はご勘弁。
いつも思うことだが、紙火薬時代まともに動かなかったモデルも閉鎖系カートでは驚くほどスムーズな動きを見せることが多い。このモデルもそんな一つ。すごいぞハドソン!。
以前、ハドソンの金型を引き継いだCAWからMULEのブランドで再販されていた。ネットで快調な発火動画がいくつもみられるが、元のハドソンの設計がいいからだろう。ただ、仕上げは比べ物にならない程素晴らしく、メンテナンス性も向上しているらしい。かなり高額だったようだが、希少な金属長物だからぜひ再販願いたいところである。
さて、サンダース軍曹とはここまでにして今度はヘンリー少尉とお付き合い、なんちゃってね。
ではでは